【生徒会長SS】生徒会長「……男君」    男「かしこまりー」

2: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:10:46.22 ID:1uOHTV/Lo
男「この資料を処理しとけばいいんですよね?」

生徒会長「うん、お願い」

男「はーい」

生徒会長「…………」

男「……ん? 会長、どうかしましたか。じっと見たりして……僕の顔に何かついてます?」

生徒会長「目と口がついてる」

男「やべぇ、鼻がどっかいってる」

生徒会長「鼻も」

男「それはよかった。じゃ、もらった案件片づけちゃいますね」

生徒会長「…………」

男「…………」

生徒会長「…………」

男「…………」

生徒会長「…………」

男「…………」

生徒会長「…………」

男「…………」

生徒会長「男君」

男「なんでしょ」

生徒会長「額の肉の字は……趣味?」

男「それ最初に教えてくださいよ!?」

3: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:13:05.46 ID:1uOHTV/Lo
男「くそぅ、まさかの油性。どうせ友だろうから、明日きつく言っておかないと……」

生徒会長「いつも仲良し」

男「いつも僕は困らされてますけどね。これ、いつ書かれたんだろう……どうりで今日は周りで不自然なくらい笑顔が溢れてたわけだよ……。会長がいつも通りだから気づかなかった……」

生徒会長「そのまま?」

男「まさか。でも、顔を洗ってきても落ちないし、前髪で隠すしかないかなぁ」

生徒会長「……男君」

男「なんでしょ……ってそれは櫛ですか? そういう昔のお姫様が使うようなやつ、僕初めて見ました。とてもお高そう」

生徒会長「私の」

男「素人目に学生が持ってる代物じゃなさそうですが、会長のものだと知ると不思議と違和感がなくなります」

生徒会長「宝物」

男「珍しくドヤ顔。……ところで会長、ここでそれを取り出したということは」

生徒会長「前髪、この櫛を使えばいい」

男「やっぱりそうですか。いいですよ、汚くなっちゃいますから」

生徒会長「……!」

男「えぇ!? どうしてここで傷ついた顔を!? なぜぇ!?」

生徒会長「…………私が使った櫛なんて、ばっちいよね。ごめん、さない」

男「えぅあちょま、違います! 汚いのは僕の方です! ほら、今日体育あったし! 走り高跳びで顔面から砂場に突っ込んだんですよ! それはもう砂被りですよ! それに引き換え、会長の髪ときたら烏の濡羽色と言うべき綺麗な髪でして! もうあれだよね、会長の髪に顔埋めたいよねと言いますか! だから……」

生徒会長「じゃあ、はい」

男「この人、打って変わっていつもの無表情だよ。僕の緊張と焦りはなんだったのか」

生徒会長「女はみんな女優」

男「って、女先輩が昨日言ってましたね。身を以って知りましたよ。くそぅ」

4: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:14:17.55 ID:1uOHTV/Lo
男「はぁ……まぁ、ご好意自体はありがたいので、素直にお借りし……」

生徒会長「…………」

男「お借りしま……」

生徒会長「…………」

男「……会長、僕が砂を被ったことを聞いて、貸すのが嫌になりましたか?」

生徒会長「そんなことない」

男「では、どうしてお櫛様は私めの手からお逃げになるのでしょうか」

生徒会長「男君」

男「はい」

生徒会長「ここ」

男「ニーソックスとスカートからなる、会長の絶対領域がどうかなさいましたか?」

生徒会長「ぜったいりょういき……?」

男「なんでもございませぬ。お忘れくだされ」

生徒会長「口調が変」

男「おっと……それで、膝がどうかしましたか?」

生徒会長「座って」

男「はい? 『僕』が『会長』の膝の上にですか?」

生徒会長「うん」

男「……また不思議なことを言い出した」

生徒会長「早く」

男「いやいや、体格差を考えて下さいよ。僕は一年生男子の平均くらいですが、会長は二年生女子の平均より……えっと、小柄じゃないですか」

生徒会長「だから?」

男「学年成績トップとは思えない切り替えしだぜ。普通に考えて、会長が潰れちゃいますよ」

生徒会長「やってみなくちゃ分からない」

男「そのチャレンジ精神は素直に好感を覚えますけどね」

6: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:16:30.05 ID:1uOHTV/Lo
男「百歩譲って、仮に会長が僕の重みに耐えられるとしても、僕の方に心理的抵抗があるんですが」

生徒会長「……嫌なの?」

男「女の子の上に乗るのが好きだぜぇ、いぇーい! っていう男もどうかと」

生徒会長「そう……」

男「残念そうな顔をしてもだめです。まだ逆ならともかく……」

生徒会長「逆?」

男「はい。会長が僕の膝の上に来るなら……あ」

生徒会長「なら、そうする」

男「ちょま、前言撤回……来るのはぇええ! って、待って、本当に待って! ストップ! フリーズ!」

生徒会長「……なに?」

男「この吐息が顔にかかるような状況に、どうして疑問を抱かない!? 膝の上って、椅子代わりにする感じじゃなかったの!? どうして向かい合ってるの? なぜぇ!?」

生徒会長「男君、そんなに大きな声で言わなくても聞こえる」

男「そりゃこんだけ近ければね! 会長、マジ、本当、真剣に、それ以上こっちに、密着しないで下さいね? というか、すぐに降りてください! 僕の理性が保たれている内に!」

生徒会長「理性……? 男君、顔赤い。大丈夫?」

男「おでことおでこを合わせようとしてますが、絶対にやらないで下さいね? やったら僕、来世分を上乗せしてでも悪魔に魂を売り渡します」

生徒会長「変な男君。……ふふっ」

男「あれ、天使? 僕の目の前にいるの天使?」

生徒会長「何を言ってるの?」

男「あ、会長だった。貴重な会長スマイルがあまりにも破壊力ありすぎて、天使かと思っちゃいましたよ」

生徒会長「男君がいつも以上に変なことを言っている」

男「えぇ、会長が僕の膝の上にいる、こんなことでも言ってないと、女の子ってやわらかい、とても理性が保てそうに、やべぇ良い匂いがする、ないんですよ」

生徒会長「支離滅裂」

男「限界間近のようです……」

7: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:21:42.23 ID:1uOHTV/Lo
_ _ _ _ _

男「はぁっ……はぁっ……あと十秒でも降りるのが遅かったら、僕は明日退学になっていたかも知れない……」

生徒会長「よく分からない」

男「会長って奇跡的なくらい純粋ですよね。……もしかして、今回も女先輩からまた変な指令を与えられてたりしますか?」

生徒会長「違う」

男「ならば完全なる天然攻撃だったのか。会長、恐ろしい人……! じゃあ、どうして膝の上に?」

生徒会長「……髪」

男「かみ……って、髪ですか。そういえば前髪……それと櫛の話をしてましたね。辛くて幸せな時間のせいで、すっかり忘れてました。それがさっきの状況とどう繋がるんです?」

生徒会長「櫛で梳く」

男「あ、はい。ですから貸していただけるなら……」

生徒会長「貸さない。これはとても大切なもの」

男「宝物、って言ってましたもんね。じゃあ、やっぱり手でなんとか頑張りますよ」

生徒会長「私の櫛、やっぱり使いたくない? ばっちい?」

男「えー……。会長、もはや互いが違う言語で話しているかのように、会話がかみ合ってないんですが」

生徒会長「嘘をつく人は嫌い」

男「冤罪ってこういう風に成り立つんだろうな。一つ賢くなった」

生徒会長「……代案。ここ、座って」

男「椅子を並べてるところを見ると、つまりは向かい合っていればいいんですか?」

生徒会長「結果的には」

男「なら、最初からそうしましょうよ……」

生徒会長「…………」

男(椅子に座ってお互いに向かい合う。櫛を使うけど貸してはくれない)

生徒会長「…………」

男(その答えがこれか)

生徒会長「…………ふふっ」

男(ははっ、人の髪を弄ってるだけなのに楽しそう。やっぱり会長は変な人だな)

☆☆その一 終わり☆☆

8: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:23:34.74 ID:1uOHTV/Lo

■■その二■■

生徒会長「間違えてる」

男「え? あぁ、昨日集められたやつですね。……確かに、これとこれはちょっと違いますね。明日にでも返して、再提出をお願いしておきますよ」

生徒会長「私が……」

男「いいですよ。ちょっと用事があるので、ついでに渡しておきます」

生徒会長「そう……」

男「はい。では、こっちはパソコンで作業してるので」

生徒会長「…………」

男「…………」

生徒会長「…………」

男「…………」

生徒会長「男君」

男「なんですかー?」

生徒会長「パソコン、便利?」

男「もう便利という次元を超えてます。今じゃなんでもパソコンの時代ですからね。会長、そろそろ機械音痴を克服しますか? 教えますよー」

生徒会長「……また今度」

男「わかりましたー」

生徒会長「…………」

男「…………」

生徒会長「男君」

男「なんですかー?」

生徒会長「ほっぺの三本髭はファッション?」

男「それ二時間前に会った際に教えてくださいよ!?」

9: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:24:47.53 ID:1uOHTV/Lo

男「友のやつ、懲りずに二度もやりおって……許さん、絶対に許さんぞ……」

生徒会長「どうして気づかないの?」

男「え?」

生徒会長「書かれてること」

男「あぁ、えっと、その……多分、寝ている間にやられてるからかと」

生徒会長「寝ている間?」

男「うへぇ、会長のその『どうして学校で寝ている瞬間があるのか』という心底不思議そうな表情が、怒られるよりも辛いものがありますね」

生徒会長「学校で寝てる暇なんて……」

男「授業中に寝落ちしている学生なんていませんよね、ええ。退屈な授業でも学生なら真面目に取り組むものですよね!」

生徒会長「…………?」

男「そんなの当たり前って顔されたー!」

生徒会長「変な男君……」

男(きっと会長の目には机に突っ伏している生徒は、体調が悪いか、そういう勉強スタイルなのだと映ってるんだろうな……)

生徒会長「お髭、猫さんみたい」

男「はい?」

生徒会長「にゃー、にゃー」

男「……なんて、こった。ただでさえ女の子がにゃーって言うのは可愛いのに、狙いのない不意打ちだと……!?」

生徒会長「男君、次はこれ……」

男「にゃー」

生徒会長「……? 男君、次はこれにゃー」

男「はい、喜んで!」

生徒会長「?」

■■その二 終わり■■

11: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:27:56.39 ID:1uOHTV/Lo

_ _ _ _ _

■■その三■■

体育教師「おー、生徒会長。昼前の四限だったのに、ナイスな走りだったぞー」

生徒会長「……ご用ですか?」

体育教師「よく分かったな」

生徒会長「大体、そうなので」

体育教師「はははっ、お前は他の先生達からも頼りにされているからな」

生徒会長「…………」

体育教師「おっとそうだ、用件用件。実はだな、体育倉庫の備品調査を頼みたいんだが」

生徒会長「……体育委員の管轄では?」

体育教師「あいつらは身体を使う仕事ならともかく、頭を使う仕事は向いてないのばかりなんだよ」

生徒会長「……分かりました」

体育教師「おお、そうか! いやぁ、やっぱり生徒会長は仕事を頼みやすくて助かるよ。じゃ、今日はもう体育の授業ないし、この鍵を預けておく。放課後にでもやっておいてくれ」

生徒会長「……はい」

体育教師「それじゃ、頼んだからな~」

生徒会長「…………ふぅ」

12: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:30:29.04 ID:1uOHTV/Lo
_ _ _ _ _

生徒会長(体育倉庫。重い物あるだろうし、一人ですぐに終わるかな……。他の仕事もあるのに……)

男「あっ、会長お疲れ様ですって、うひょー! ジャージに着替えた上に、髪を後ろで縛ってる会長だぁあ! 学年違うからこそ、貴重度が鰻登りだぜぇ!」

生徒会長「…………男、君?」

男「はい、僕ですよー。まったく、こういう仕事を女の子一人にさせるとかありえんですよね」

生徒会長「なんでいるの?」

男「なんで、って備品調査があると聞いたからですよ」

生徒会長「私、今日は仕事ないから帰っていいと、昼休みに教室へ行って友君に伝言頼んだ。男君、いなかったから」

男「はい、ちゃんと友から聞きましたよ。すみません、あの時は空けていて。というか、携帯持ってるんですから、いい加減メール機能使いましょうよ。携帯が泣いちゃいますよ? 今度教えます」

生徒会長「聞いているなら、なんで……?」

男「……嘘が下手なんですよ、会長は。いつも忙しそうにしてるのに今日だけ何もないなんて、おかしいと思いに決まってるじゃないですか。ちなみにおかしいと思って調べた結果、ここにいるという訳です」

生徒会長「…………うぅ」

男「それで、どうして嘘が嫌いな会長が、あるものをないと言ったんですか?」

生徒会長「……最近、男君に頼りっぱなしだから一人でやろうと思って。それに、私に任された仕事だし」

男「……そういうことでしたか」

生徒会長「うん、だから今日はもう帰ってゆっくり……」

男「会長」

生徒会長「なに?」

男「お馬鹿さん!」

生徒会長「え……?」

男「会長の気持ち、僕、嬉しいです。感動しています。けど、喜べないです。言い方は大げさかもしれませんが、会長の自己犠牲の上で成り立つ労いなんて、僕は欲しくないです」

生徒会長「……」

男「生意気なことは分かってます。自分勝手なのも承知の上です。でも、やっぱり僕は嫌なんですよ。会長が一人で仕事をするのは」

13: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:32:00.08 ID:1uOHTV/Lo

生徒会長「けど、私は――」

男「始めてあったあの日にした約束、忘れましたか?」

生徒会長「!」

男「僕を嘘つきにしないでください。じゃないと、僕は嘘が嫌いな人に嫌われてしまいます」

生徒会長「男君……」

男「それに休めということなら、会長の傍にいることが僕にとっての安らぎになりみゃふゅ」

生徒会長「……みゃふゅ」

男「ちくしょぉおおお! いいところで噛んだぁ!」

生徒会長「似合わない言い方をしようとするから」

男「ですよねー。キザ路線は自分でもあってないと思いました」

生徒会長「…………ふふっ」

男「あー、もう。とにかく、会長は変に遠慮なんかしないで下さい。むしろ、された方が逆にこっちは気にしますので」

生徒会長「……分かった。嘘ついてごめんなさい」

男「いいですよ。僕に気を使って下さっただけのようですし。さて、ちゃっちゃっと備品調査終わらせてしまいましょう。それで、お茶でも飲みましょう」

生徒会長「……はい。お手伝い、よろしくお願いします」

男「かしこまりー」

■■その三 終わり■■

14: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:33:59.59 ID:1uOHTV/Lo
■■その四■■

生徒会長「男君」

男「お? あ、会長だ。こんにちは」

生徒会長「……髪はボサボサ、制服もぐちゃぐちゃ」

男「いやぁ、うちの購買って漫画みたいに混み合うじゃないですか。スタートダッシュを決めて一番で買えたんですが、あとから来た学生の波にぶつかりましてね……」

生徒会長「……今度改善案を考える。手、いっぱい」

男「約千円と三百円分ですからね。入手難易度最高値のカツサンドを始め、いろいろありますよ」

生徒会長「……普段から千円以上も買ってるの?」

男「そんなリッチな生活には憧れますが、小市民の僕には縁遠い話です。違いますよ、今日は事情ありです」

生徒会長「事情……?」

男「えーっと、あー……」

生徒会長「……言いづらいこと?」

男「あわわ、深刻なことじゃないんで、気まずそうな顔しないで下さい。……実は、友のやつと時間があれば学校で将棋をしておりまして」

生徒会長「将棋?」

男「はい。それでですね、その、なんと言いますか。勝負事として互いの力を引き出すために、負けた側には罰が定められておりまして」

15: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:35:04.06 ID:1uOHTV/Lo
生徒会長「罰……」

男「そうです。内容というのが、負けたほうが買った方のご飯を奢るというもので――――はい、そうですよね。学生が賭け事とかしてはいけませんよね。会長の半眼は可愛らしいですが、堪えるものがありますのでどうか勘弁して下さい……」

生徒会長「千円も賭けて……いつも?」

男「あ、いえ、今回は合計百五十戦目ということで、千円は今回のみの限定価格となっております」

生徒会長「ふぅん……」

男「勝率は僕のが圧倒的に高いのに、友はここぞという時に強かったりするんですよね。いやぁ、参った参った」

生徒会長「男君」

男「は、はい、なんでしょう?」

生徒会長「つまり、最低でも百五十回は賭け事を?」

男「やべぇ、墓穴を掘った」

生徒会長「だめ」

男「腕を掴まれると戦利品がっ! 始めてみる怒った顔の会長が、こんな状況になるとは……」

16: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:36:45.79 ID:1uOHTV/Lo

生徒会長「男君?」

男「……ごめんなさい、もうしません」

生徒会長「ん」

男「…………」

生徒会長「…………」

男「……あの、会長」

生徒会長「?」

男「そろそろ手を離していただけませんか?」

生徒会長「だめ」

男「なぜぇ!? 反省してますから、どうかお許しを」

生徒会長「こっち」

男「これが強制連行ってやつか。我が人生に体験の時がくるとは、な……」

生徒会長「ちゃんと歩く」

男「あ、はい、ごめんなさい」

男(人気のない裏庭に連れてこられた時は、てっきり場所を変えて叱られるのかと思ったけど)

生徒会長「…………ふふっ」

男(会長はだらしなく乱れた僕の制服を正し、ネクタイを締めてくれた。乱れる前よりもきっちりしているくらいだ。そして、今は僕をベンチに座らせると前に立ち、いつぞやの櫛を取り出して髪を梳いてくれている)

生徒会長「~~~~」

男(どうしてご機嫌なのか、いつも櫛を持ちあるいているのか、と疑問は尽きないけれど)

生徒会長「~~~~」

男(空気に溶けてしまいそうなメロディだけの小さな歌。そして、楽しそうな会長の姿に不思議と居心地の良さを覚えて、僕は黙ってこの時間に身を委ねるのだった)

男「というわけで、そのまま自然な成り行きで会長とお昼してきた。これ残りね」

友「ざっけんな! もう五限始まるわ! ていうか、せめてカツサンド残しとけよ!」

■■その四 おわり■■

17: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:38:52.10 ID:1uOHTV/Lo
■■その五■■

生徒会長「戻りました」

男「おかえりなさい。科学の先生でしたっけ、呼び出しがあったの」

生徒会長「うん、カマキリ先生」

男「また変なあだ名を……どうせ女先輩発祥なんでしょうね。んで、用件はなんだったのかお聞きしても?」

生徒会長「実験室の道具を大切にしない生徒が多いので、何かしらの対策をとって欲しい」

男「って、言ってたんですか。……それって生徒会の仕事なんですかね? カマキリ先生自身が呼びかければいいと思うんですが」

生徒会長「生徒会は、学校と生徒の架け橋だから……」

男「そうは言っても、わざわざ呼び出した結果が雑用の上乗せですよ? いくらなんでも限度があります。カマキリ先生は気の弱い方ですら、体よく注意を会長にやらせようとしているだけとしか思えません」

生徒会長「男君、でも……」

男「……引き受けちゃったんですよね。言っても仕方ないか。会長、あんまり何でもかんでも頷くのはよくないですよ」

生徒会長「……うん」

男「……まぁ、この件にもう関してはいいです。処理してしまいましょう。生徒会からの対策としてはポスターの張り出しと、月一の朝会で話すということでいいですか?」

生徒会長「それで、お願いします」

男「ポスターに関しては美術部の方に依頼しておきます。簡単なものなら、多分引き受けてもらえるので」

生徒会長「大丈夫、なの?」

男「実はこういう時のために、前々から部長さんとお話してありまして。簡単なものでよければ一年生部員の練習になるので、むしろ進んで依頼を受けてくださるそうです」

18: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:40:14.27 ID:1uOHTV/Lo
生徒会長「いつの間に……」

男「こうやって生徒会の仕事に携わるようになって、やっぱり人脈作りって大事だなと思う日々ですよ」

生徒会長「男君、凄い」

男「うへへ、会長からの尊敬の眼差しで、鼻がぐんぐん伸びていく気がします。それで、間接的には学校からの依頼とはいえ、生徒会からお願いをするわけじゃないですか。だから、ちゃんとお礼を言おうと思うんですよ」

生徒会長「大事」

男「ですです。そこでやっぱり会長からお礼を伝えるべきだと思うんですよね」

生徒会長「でも、知り合いなら男君からのお礼がいいんじゃ……?」

男「いえいえ、やっぱりここは長たる会長の方がいいですって。便箋を用意しますので、書いていただけませんか?」

生徒会長「お礼なら、直接言った方が……」

男「それはだめです。あっちがもたないので」

生徒会長「?」

男「こっちの話です。相手の方も忙しいと思いますので、手紙の方が都合がいいんですよ」

生徒会長「そう……。なら、私、頑張って書く」

男「はい、その意気です。これが便箋です」

生徒会長「うん」

男(…………これで契約完了ですね、美術部部長さん。なんでもいいから会長の直筆の手紙が欲しいとは、マニアックな交換条件だ)

男「あ、会長。もっと他人行儀な感じでいいですよ。お礼状なんですから、殿とかでいいです」

生徒会長「うん、わかった」

男(まぁ、気持ちはわかっちゃうんですけど)

■■その五 終わり■■

19: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:42:07.77 ID:1uOHTV/Lo
■■その六■■

男「会長、例のグランドの話……運動部が争っている問題に対して、解決策の草案を作ってきました。後で目を通しておいてもらっていいですか?」

生徒会長「うん」

男「それと、吹奏楽部の方から上がってきていた話ですが……」

生徒会長「できてる」

男「流石ですね――――はい、確認しました。吹奏楽部の部長さんには、月曜日に僕から渡しておきます」

生徒会長「任せた」

男「かしこまりー」

生徒会長「狐先生の……」

男「狐? ……あぁ、教頭先生からの依頼のことですか。そっちは各委員会の方へ通達済みです」

生徒会長「何か問題、あった……?」

男「特には。根回しをしっかりやっといたので」

生徒会長「ん……」

男「…………」

生徒会長「…………」

男「……会長」

生徒会長「…………なに?」

男「今、十五時なのを知ってます?」

20: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:43:15.13 ID:1uOHTV/Lo
生徒会長「知ってる」

男「十二時頃に僕がご飯食べておくように言ったの覚えてます?」

生徒会長「…………」

男「会長、人と話をする時は目を合わせましょう」

生徒会長「…………ちゃんと食べた」

男「目がめちゃくちゃ泳いでますが。では、何を食べました?」

生徒会長「……サンドウィッチ」

男「何処のです?」

生徒会長「え?」

男「ですから、何処で買ったものですか?」

生徒会長「こ、購買……」

男「普段行かないから知らないみたいですね。今日、土曜日は授業が昼までなので、購買はやっていませんよ?」

生徒会長「…………あぅ」

男「……昨日、僕は散々言いましたよね? 明日残って生徒会の仕事をするなら、お昼を持ってこなきゃだめですよって」

生徒会長「あぅあぅ……」

男「約束もしましたよね? お昼を食べなきゃ仕事をしちゃいけないって」

生徒会長「そ、そうだった、け?」

男「指きりまでしたの会長じゃないですか」

生徒会長「男君、何故か顔が真っ赤になってた。可愛かった」

男「なんでそんなことは覚えてるのに、肝心の内容は覚えてないんですか! それとその件は忘れてくださいお願いします!」

21: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:44:22.82 ID:1uOHTV/Lo
生徒会長「でも、仕事……」

男「ご飯が先。なんなら、今日は帰ってもらってもいいんですよ? あとは僕が残ってやっておくので」

生徒会長「それは、できない」

男「……まぁ、そうでしょうね。はぁ、こうなると思ってましたよ。はい、これ」

生徒会長「……これは?」

男「コンビニのですが、パンです」

生徒会長「買っておいて、くれたの?」

男「念のためにです。仮に会長がちゃんと持ってきていた場合、自分のおやつにすれば良いだけですから」

生徒会長「……いいの?」

男「針を千本飲ませるなんて、鬼畜なことしたくないので。食べるまで仕事はなしですからね?」

生徒会長「はい。あっ……お金」

男「いいですよ、それくらい……と言っても会長は引き下がらないと思うので、ここは素直に受け取っておきます。袋の中の好きなやつとって、その分のお金をそこに置いといてください」

生徒会長「分かった」

男「……僕はまたパソコンでやる作業を進めておくんで」

生徒会長「…………」

男「…………」

生徒会長「…………」

男「…………」

生徒会長「…………」

男「…………」

生徒会長「……ごめんなさい」

男「…………」

生徒会長「……男君、怒ってる」

男「そうですね、否定はしません」

生徒会長「…………ごめんなさい」

男「僕が怒ってる理由、わかってますか?」

生徒会長「……わかってる」

男「なら、いいです」

生徒会長「……男君」

男「はい」

生徒会長「ありがとう」

男「……はい」

■■その六 終わり■■

22: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:47:27.12 ID:1uOHTV/Lo
■■その七■■

男「ただいま戻りましたー」

?「ほう、おのれがわしの愛しい会長ちゃんにまとわりつく、男ってやつか」

男「ん?」

?「ええ度胸じゃないか。あぁ!? 二人の逢引を邪魔しようっていうのに、そないな気の抜けた態度で登場とはのぉこら」

男「あ、二学年成績二位だ。方言がめちゃくちゃですよ、女先輩」

女先輩「今日の男はノリが悪いな」

男「今日、というか今は仕事中なので」

女先輩「ふん、そんなこと言って。会長ちゃんが何かした時はノリノリになるくせに」

男「会長は別にふざけてるわけじゃないですからね。女先輩と違って」

女先輩「実は失礼だよな、君」

男「……会長はいらっしゃらないんですね。目を通しておいてもらいたい書類を預かってきたんですが」

女先輩「スルーか……ま、いいが。狐が来て連れていってしまったんだ。そう、私と会長ちゃんは無理やり引き離され、悲哀を味わっているんだよ……」

男「女先輩は会長待ちですか……ん? 狐って教頭先生ですよね? もしかして荷物運びっぽいこととか言ってましたか? あの先生、自分が面倒な話をすぐ持ち込んでくるんですよ」

女先輩「いや、文化祭実行委員達が揉めてるらしく、収拾つけるためにリーダー的な存在が欲しいようだった」

男「場合によっては荷物運びより厄介な案件か。……この学校は会長を便利屋か何かと勘違いしている人が多すぎる」

女先輩「ははっ、実際、会長ちゃんはなんでもやれてしまってるからね。容姿端麗、成績優秀、文武両道、品行方正。冗談みたいに絵に描いたような優等生だ。みんなが頼るし、みんながあの子に任せれば、万事解決だと思ってる」

23: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:48:55.60 ID:1uOHTV/Lo

男「そうですね。僕もそう思いますよ」

女先輩「……本気でそう思っているかい?」

男「まさか。そんな訳がない」

女先輩「だろうな。君はそうだろうさ」

男「わざわざ聞くまでもないというやつですよ」

女先輩「愚問だったね、忘れてくれ。……しかし、私達ってこうしてちゃんと話すのは初めてじゃないか?」

男「そうでしたっけ? ……いや、そうですね。お互い会長を通して顔は知っていましたが、まともに話したのはこれが初めてですね」

女先輩「私は会長ちゃんの後輩という覚え方」

男「僕は会長のお友達って覚え方です」

女先輩「あとは廊下ですれ違う時にやる、さっきみたいな三文芝居くらいだね」

男「やめてくださいよ、あれ。やってるの友人に見られる度、からかわれてるんですから。顔見知り程度の相手にやることじゃないですって」

女先輩「その割には、毎回ノリノリに見えたけど?」

男「そう見えるだけですよ。小心者なので注目が集まるのは恥ずかしい限りです。……っと、そろそろ会長のフォローに行ってきます」

女先輩「あいよ。留守番は任せておきなさい」

男「お願いします。用のある人が来たら、今日の生徒会は店じまいなので、急ぎの用がある人は扉の番号へ連絡するように伝えてください」

女先輩「店じまいって、もう戻ってこないってこと?」

男「いやいや、会長連れて戻ってきたら、今日はすぐに解散するってことですよ」

女先輩「なるほどね。ちなみに扉の番号って?」

男「僕の携帯の番号です。では、よろしくお願いします」

女先輩(……くく、注目が集まるのは恥ずかしい限り、ね。よく言うよ男君)

■■その七 終わり■■

24: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:50:55.19 ID:1uOHTV/Lo
■■その八■■

友『お、見ろよ、男』

男『そうやって視線を逸らさせた後に、銀と角の位置を変えるつもりなのはお見通しだよ』

友『お前って、もしやエスパー?』

男『冗談だったんだけど……』

友『誘導尋問だ! ちっ、いいさいいさ、今日のところは俺の負けでよぅ』

男『これで五戦四勝目、だっけ。将棋が得意って言って、持ってきたの友の方なのに……』

友『うっせ! それよりいいから、あれ見とけって』

男『なに? 将棋はもう終わったよ?』

友『そうじゃないから。ほら、あそこにいるだろ?』

男『あそこって……あっ』

友『うちの高校の生徒会長にして、全学年で一番可愛いって評判の会長さん! 聞いた限りだと、なんでもできるんだと』

男『なんでも?』

友『そそ、勉強も運動は当然。生徒にやらせるレベルだろうけど仕事もできるし、人をまとめるのも上手いらしい。なんでも超人だよな』

男『なんでも超人……』

友『天は二物を与えずって言葉は、彼女の存在で否定されるよな。なんでもできるって、どんな感じなんだろう。やっぱり人生が楽なんかね、羨ましい』

男『そうかな……』

友『そうだろ。楽に決まってるさ』

男(それは違うんじゃないだろうか。根拠もなければ、証拠もないけど。――――だけど、違う、そんなことはないだろうと何故か確信していた)

友『仏頂面っちゃあそうだけど、容姿のせいかクールって印象が強いよな。あーあ、お近づきになりたいもんだね。一人でいることが多いって聞くし、高嶺の花ってやつなのかなー」

男(だって、無感動に世界を見つめる彼女の姿が、あまりに辛そうだったから。――――どうしようもないくらい、僕の胸を締め付けたから)

■■その八 終わり■■

25: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:53:34.62 ID:1uOHTV/Lo

_ _ _ _ _

■■その九■■

男「こんにちはー」

生徒会長「こんにちは。……男君、髪ぐしゃぐしゃ」

男「ん? あー、そうなんですよ。昼休み前の時間帯、風が強かったじゃないですか。その時ちょうど体育で外にいたんですよね」

生徒会長「今もぼさぼさな理由になってない」

男「体育終わった直後は、どうせまた帰るときになったら髪乱れるだろうから、別に直さなくていいかと思ったんですよ。結局、風は止みましたけどね」

生徒会長「じゃあ、直せばいい」

男「ぶっちゃけ、誰かが困るわけじゃないからいいかな、と」

生徒会長「……男君はしっかり者なのに、自分に対してはしっかりしてない」

男「無精者なんですよ、実は」

生徒会長「ん」

男「会長、櫛を持って膝を叩くその仕草はなんでしょう?」

生徒会長「乗って」

男「これ前にやったやり取りですよね!?」

生徒会長「早く」

男「まっ、待ってください! タイム! ストップ! 冷静になってください! ぬぉおお、なんだこの膂力は! 腕を掴まれたと思ったら間接が極められていた! 体格的にも性別的にも僕の方に分があるはずなのに!?」

生徒会長「大丈夫、身を委ねて……」

男「優しくしてくださぃいい!」

26: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:56:32.63 ID:1uOHTV/Lo

女先輩「たのもー」

男(結局押し切られたものの、最後の抵抗で椅子に座って向かい合う形に……」

生徒会長「……ふふっ」

女先輩「お、なんだか面白そうなことしてるね」

男「女先輩、こんにちは」

女先輩「なんだ、男。女装でもするのか?」

男「どうしてこの状況を見て、そこまで発想が飛躍するかなぁ。違いますよ、髪を整えてもらってるだけです」

女先輩「なんだつまらん。……いっそ路線変更して、このまま本当に試してみないかい?」

男「言いながら化粧道具取り出すあたり、マジっぽさが伝わってきます。もちろん、やりませんよ。校内に変質者を生み出すわけにはいきませんから」

女先輩「そうかな? 男は中性的な顔立ちだから、いい線いくと思うんだけど」

男「無理です。絶対に却下です」

女先輩「ちっ、もったいない。…………あ」

生徒会長「…………」

男「どうかしましたか? 女先輩」

女先輩「いや、なんでもないよ。櫛を使って髪をすいてるなって」

男「見たままの状況じゃないですか。……会長これ始めると集中しちゃって、声が届かなくなるですよね」

女先輩「才女の異名は伊達ではないということさ。並外れた人間の特異さは、こういうところで出てくるんだよ。……まぁ、会長ちゃんが楽しそうで何よりだ」

男「はぁ、そうですか。でも、会長って本当に変わってますよね。人の髪を弄るのって、そんな没頭するほど楽しいかなぁ。というか、もうよくないですかこれ?」

28: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 21:58:26.97 ID:1uOHTV/Lo
生徒会長「まだ、だめ」

男「そこは拾うんですね……。本当、適当でいいんですから。これ毎回気恥ずかしさがやばいです」

生徒会長「だめ、ちゃんとやる」

男「……今日も時間がかかりそうだ」

女先輩「いつもやってもらってるのかい?」

男「え? ええ、そうですね……いつもというほどではありませんが、会長の気まぐれでやってくれます。女先輩もやってもらってるんですか?」

女先輩「……私はないよ。自分でさっさと済ませてしまうからね」

男「その手があったか。僕も適当に櫛を買おうかな。でも、男が櫛を持ち歩くのもなぁ……」

女先輩「止めておくといい」

男「ですよね。なんかナルシストくさいか」

女先輩「そういう意味じゃないが……ま、そのうちわかる日が来るだろうさ」

男「なんですか、その無駄に意味深な発言」

女先輩「ミステリアスな女は魅力的だろう?」

男「はいはい、またいつものとりあえずそれっぽいこと言ってみたですか」

女先輩「ははっ、好きにとってくれ。……会長ちゃんが楽しそうで、本当に何よりだ」

生徒会長「…………」

■■その九 おわり■■

29: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:01:28.91 ID:1uOHTV/Lo
■■その十■■

女先輩「――もしもし」

男「――はい。……その声はもしかして、女先輩ですか?」

女先輩「――正解。驚かないんだね、番号を交換していない相手から電話がかかってきても」

男「――そりゃ、自分で自分の個人情報を公開してるんですから」

女先輩「――それもそうか」

男「――それで、何かご用ですか?」

女先輩「――君の声が聞きたかった。それじゃ、だめかな……?」

男「――うわ、この先輩面倒くせぇ」

女先輩「――そういうのは思っても言わないものだよ。偉大な先輩から後輩に助言だ」

男「――では、卑小な後輩から先輩に忠言です。夜中の四時に電話は普通に迷惑」

女先輩「――それより、相談があるんだ」

男「――スルーですか。もしやいつかの仕返しか……何でしょう」

女先輩「――ちゃんと聞くところはお姉さん的に高ポイント。実はだね……」

30: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:03:06.36 ID:1uOHTV/Lo

女先輩「という訳で、デートに行こう!」

男「はい、今日はよろしくお願いします」

生徒会長「……えっ?」

女先輩「ちゃんと約束通り、生徒会室にいたな。褒めてつかわそう」

男「ははっ、有難き幸せ」

生徒会長「え、え、え?」

男「どうかしましたか? 会長」

生徒会長「……二人って、そこまで仲良かった、の?」

女先輩「はっはっは。そうだな、意外と相性はいいのかも知れない」

男「そうですね、一緒に何処かへって考えは一致してますし」

生徒会長「そう、なんだ……」

女先輩「というわけで会長ちゃん。念のため聞いておきたいのだが、今日の仕事は一人でも大丈夫だろうか?」

生徒会長「それは……」

男「大丈夫ですよね?」

生徒会長「……うん、大丈夫。一人でも、大丈夫」

男「よかったぁ、これで心置きなく行けますね。女先輩!」

生徒会長「ぁ……」

女先輩「会長ちゃん、どうかしたかい?」

生徒会長「……ううん、なんでもない」

女先輩「そうか? まぁ、いいさ。さぁ、行こう! 手なんか繋いじゃったりしてな!」

生徒会長「…………」

男「はい! じゃあ、会長! ――――いってらっしゃい!」

生徒会長「……うん、いってきます。…………あれ?」

女先輩「それ、時間は有限で、止めることのできない厄介なものだ。行くぞ行くぞ!」

生徒会長「ちょっ、と待っ、え? 女ちゃ」

男(まるで誘拐の現場を目撃した気分なのは何故だろう)

男「……さて、お仕事を頑張りますかね」

31: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:04:30.61 ID:1uOHTV/Lo

女先輩「それそれー」

生徒会長「女ちゃん……」

女先輩「下駄箱に到着。はいこれ君の鞄」

生徒会長「いつの間に、って、そうじゃなくて……」

女先輩「ささっ、靴に履き替えて。放課後デートというめくるめく世界にご案内しよう」

生徒会長「……どういうこと?」

女先輩「言った通りだよ。君と私がデートをする。生徒会室での話を覚えてるだろう?」

生徒会長「あれは、そういう……でも、私には仕事が……」

女先輩「そんなもの、全部男が引き受けてくれてるじゃないか。一人でできる量だって、会長ちゃん自分で言ってたよね? くく、言質は取ってるよ」

生徒会長「それは、残るの私だと、思ったからで……」

女先輩「本当はたくさんあるんだろう? 大丈夫、それを知った上で男は送り出してくれているよ」

生徒会長「でも、男君だけじゃ……」

女先輩「そう、本当は彼に君の代わりをやる資格はない」

生徒会長「…………っ! けど、男君は……!」

女先輩「分かってる。彼を蔑ろにするつもりは毛頭もない。事実を言っただけだが、それが一つの側面でしかないことをしっかり理解しているとも。彼はよくやっている」

生徒会長「…………」

女先輩「今回のことはもちろん男が協力してくれている。つまり、彼は大変だと分かりながら、君を送り出してくれたんだ。その心意気を無駄にはしてはいけないよ」

生徒会長「…………」

女先輩「納得はしてないだろうけど、とりあえず付き合ってくれればいいさ」

生徒会長「……わかった」

32: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:05:43.83 ID:1uOHTV/Lo

女先輩「そういえば、初めてだね。会長ちゃんと放課後遊ぶというのは」

生徒会長「……うん」

女先輩「君はいつも忙しそうにしてるからね」

生徒会長「……うん」

女先輩「特に、生徒会長になってからしばらくの時が酷かった。私が何を言っても君は大丈夫としか答えなかったし」

生徒会長「……うん」

女先輩「何処か行きたいところはあるかい?」

生徒会長「……うん」

女先輩「……そんな上の空だったら何処に行ってもだめそうだね。散歩でもしようか」

生徒会長「……うん」

女先輩「……ていっ」

生徒会長「あぅ……デコぴん?」

女先輩「全く、こうでもしないと会話ができないなんて。壊れかけのテレビじゃないんだよ?」

生徒会長「女ちゃん、今の時代に叩いて直ると思うのはちょっと……」

女先輩「……機会音痴の君にそう諭されるとは」

生徒会長「男君が、そう言ってた」

女先輩「……そうか。彼は不思議な人だよね」

生徒会長「うん、男君って変。……ふふっ」

女先輩(君がそういう風に笑えるんだと気づいた時、彼が君の傍にいた)

生徒会長「あのね、この前もね……」

女先輩(私は君に癒されるけど、君を癒す相手は私ではなかった)

生徒会長「それでね……」

女先輩「少し、妬けるかな」

生徒会長「……女ちゃん、聞いてる?」

女先輩「聞いているよ。予定変更だ。今日は花の女子高生らしく、喫茶店でだらだらと長話をしよう」

33: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:06:58.12 ID:1uOHTV/Lo

生徒会長「…………」

女先輩「お待たせ、はいこれ紅茶。銘柄とかはよく分からないから、ダージリンにしたよ」

生徒会長「ありがとう。女ちゃんは?」

女先輩「カプチーノ。来る度にメニューの上から順番に頼んでるから、好みとかじゃないんだけどね」

生徒会長「へぇ……」

女先輩「こだわりがないんだよ。……そんなことより、道すがら話しながら来たここまでで、何処で話が止まっていたかな?」

生徒会長「男君が生徒会室で三点倒立してた話」

女先輩「ああ、それか。意味が分からないよな。それで?」

生徒会長「私が近づいたら、何故か顔を真っ赤にしてた」

女先輩「ほぅ……」

生徒会長「その後に何故か、生まれて始めての土下座をされた」

女先輩「見えたんだろうな。黙っとけばいいものを律儀な少年だ」

生徒会長「?」

女先輩「いや、気づいていないならいいさ。会長ちゃん、スカートの中を見られないように気をつけようね」

生徒会長「そんなの、当たり前。……スカートと言えば、この間男君が」

34: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:08:45.16 ID:1uOHTV/Lo

女先輩「……ふふっ」

生徒会長「……なに?」

女先輩「いやね、君の話題は彼のことばかりだなって」

生徒会長「……だって、男君は変だから。面白い」

女先輩「変で面白い、か。他のことに無関心だった君が変わったものだ」

生徒会長「変わった……?」

女先輩「うん。そうだね、例えば先日の文化祭実行委員会の話。以前の君だったら教師に言われるまま、文化祭が終わるまでのまとめ役を引き受けていたに違いない。けど、断った。どうしてだい?」

生徒会長「……男君に怒られるから」

女先輩「そう、君はそういう風に考えるようになった。彼の存在が君を変えた」

生徒会長「……うん、そうかも知れない」

女先輩「簡単に認めるんだね」

生徒会長「最近、思うようになってたから。男君と出会って、毎日が楽しいって」

女先輩「……そっか。そうだろうね。推測が含まれるけど、君は彼と出会ってから輝くようになった」

生徒会長「輝く?」

女先輩「前の君はいつも仏頂面で、可愛いのに可愛くない女だった」

35: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:10:34.24 ID:1uOHTV/Lo

生徒会長「…………」

女先輩「何かをしていても、何もしていなくても。誰かといるときも、一人でいるときも。君はいつも同じ表情で、淡々と物事を進めていた。まるで、ロボットが与えられた指令をただこなすだけであるかのように」

生徒会長「そう、だったのかも知れない。男君と会うまで、私は誰かに言われるままに動いていた」

女先輩「……ふふっ」

生徒会長「急に笑ってる」

女先輩「いや、ね。普通、こういうことは簡単に話せることじゃないのに、君はどんどん言えるんだなって」

生徒会長「……そうかな?」

女先輩「そうだよ。……きっと、会長ちゃんは今の自分が好きなんだね。自信を持てているんだね。だから、昔の自分を真っ直ぐ見つめることができて、しっかりと対比することができる。全部が、男のおかげだ」

女先輩(……同姓に恋慕の情を抱くつもりはないが、しかし、やっぱり、なんというか……嫉妬してしまうよ、男。君の功績に」

生徒会長「……多分、女ちゃんの言うとおりなんだと思う。だけど、それだけじゃ、ない」

女先輩「だけじゃない? 他に何があるというんだ」

生徒会長「女ちゃんも、私を変えてくれた」

36: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:11:56.10 ID:1uOHTV/Lo
女先輩「私が……?」

生徒会長「男君、よく言ってる。昔の会長はそんな変なこと言わなかったって。女先輩が会長に変なこと教えたんだって。……私、女ちゃんから教えてもらったことで変になって、変わってるんだよ」

女先輩「…………」

生徒会長「私は、今の私が好き。だから、ありがとう女ちゃん。私を変えてくれて」

女先輩「……ふぅー」

生徒会長「女ちゃん?」

女先輩「敵わないな、君には」

生徒会長「試験の順位、私の方が上だしね」

女先輩「お、言ってくれるじゃないか。あれはノー勉だったからであって、本気を出せば私のほうが凄いんだよ」

生徒会長「言い訳は見苦しい」

女先輩「言ってくれる」

生徒会長「……ふふっ」

女先輩(会長ちゃんを連れ出した理由。男は私が言ったことを鵜呑みにして、仕事してばかりの会長ちゃんを遊ばせるためだと思っているだろうが……)

生徒会長「あ、紅茶冷めちゃった」

女先輩(本当は、たまには会長ちゃんに私だけ見て欲しいという、私の小さな独占欲と嫉妬心だった)

生徒会長「女ちゃん?」

女先輩(――――男が変と言うから、私も一役買ってる、か。間接的ではあるけれど、今はそれで満足しておこうかな)

生徒会長「女ちゃんってば」

女先輩「聞いているよ。……今日はぎりぎりまで帰さないからね。女子トークを楽しもうじゃないか」

生徒会長「うん!」

■■その十 おわり■■

37: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:13:14.35 ID:1uOHTV/Lo

■■その十一■■

「おじゃまー。おう、今日は副会長だけか。ちょっと頼みたいことがあるんだけど……」

男「はい、なんでしょう。…………ええ、そうですね。その件は生徒会で対応します」

「失礼します。美化委員の者ですが、先日の件で来ました」

男「ああ、先日はどうも。頼まれていたものはこちらに用意してありますよ。ご自由にお持ち……お一人ですか。なら、持って行くのは無理そうですね。お手伝いしますよ」

「便利屋さんいるー? ちょっとお願いがあってきたんだけどー、って副会長だけだー」

男「生徒会は便利屋じゃありませんよー。張り倒しますよー。…………話を伺ってみれば、意外に重要なことでしたね。すみません。先生方と検討して早急に解決します」

「おう、柔道部だが、観念して部費を上げる気になったか?」

男「また来たんですか? 何度も言ってますが無い袖は振れませんって、土下座だと!? 大きな身体をそんなに丸めて!? くっ、土下座は卑怯だ! でも出しません」

「やぁ、気さくな教頭先生が来ましたよ。生徒会長はいますか?」

男「きつ……教頭先生、また雑用の押しつけですか? 今日は残念ながら甘い会長はいないので、引き受けませ……舌打ちしました? 今、いい大人が舌打ちしましたか?」

38: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:14:31.73 ID:1uOHTV/Lo
「生徒会! 野球部とサッカー部がグランドの使用の件で揉めてるぞ!」

男「この間、曜日割り決めたばかりなのにあの人たちは……。知らせてくださってありがとうございます。至急現場に向かいますので、場所を教えてください」

「せ、生徒会長は、お、おられるだろうか!」

男「今日はいませんよー。あ、美術部の部長さんこんにちは。その大きなやつは絵ですか? 会長を描いた? 無許可で? …………多分、会長嫌がりますよ、それ。はい、出直して会長に直接お願いして、描かせてもらって下さい。自分じゃ頼めない? 知りませんよ」

「副会長、この前言われたやつ持ってきたんだけど」

男「え? あぁ、あれですね。わざわざありがとうございます。えっと――――はい、問題ありません。確かに受け取りました」

「すみません、ボランティア部なんですが……」

男「はい、どうかしましたか? 次の地域規模でやるボランティアの募集をかけたい、ですか。いえ、無理ではありませんよ。立派な活動ですし、生徒会でも協力させていただきます。具体的には朝会での呼びかけ、それとビラ配りを認可します。あと放送部の方にも依頼して、昼の放送で宣伝してもらうようにします。あ、掲示板の使用は、生徒会の認可印がないといけないので気をつけてください。もちろん、他に何かありましたらいつでも来てください。はい、それでは」

39: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:16:26.00 ID:1uOHTV/Lo

男(……ふぅ、もう日も沈みそうだ)

友「副会長ぉー、明日の英語の宿題写させてー」

男「お帰りはあちらになります」

友「冷たっ! 礼儀正しくて話の分かる副会長って評判が嘘みたい!」

男「友、会長とけしからんことしたいって意見箱に入れたの友でしょ? あれ焼却炉にぶち込んどいたから」

友「どうしてばれた。やっぱりお前、第六感とかの持ち主なのか?」

男「高校生にもなってこんな幼稚なことをするのは……いや、よそうこの話は」

友「その凄い哀れんだ目をやめてくれませんか? なんか虚しくなる。……あれ、会長さんいないのか?」

男「今日はいないよ。体調不良とかじゃないけど」

友「なに!? 副会長のお前を置いて会長さんがいないだと!? 野郎か!」

男「どちらかというと女郎かな」

友「女朗!? って、女先輩のことか。だったら大丈夫……でもないのか? あの人、女の子が好きだって噂だし、その上、美人だし! やばいじゃん、男! 会長盗られちゃう!」

男「それ、完全に噂だよ。女先輩は女性なのにかっこよくて、よく後輩の女の子とかに告白されるって言ってたけど……。別に同姓と恋愛がしたいわけじゃないって、自分で言ってたもん。友は噂に流されすぎ。よくないよ。あと、別に会長は物じゃない」

友「へいへい、どーもすいやせんで……ごめんなさい、切実に」

男「…………」

友「ほ、本気、本気で気をつけるから! 分かったから!」

男「……そう」

友「お前って怒ると本当に怖いよな。静かなのに何故か怒鳴られるより、数倍怖い気がする」

42: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:18:29.82 ID:1uOHTV/Lo

友「お前って怒ると本当に怖いよな。静かなのに何故か怒鳴られるより、数倍怖い気がする」

男「はぁ。それで、今日はどうしたの? 友が生徒会室に来るなんて珍しいじゃん。まさか冗談抜きで宿題の話をしにきたわけじゃないでしょ」

友「んにゃ、宿題はあわよくば見せてもらえないかと思ってる」

男「だめ」

友「だよな、お前は変なところで真面目だから。誰かさんの影響を受けたばっかりに」

男「前置きが長い。二十文字以内にまとめてください」

友「部活でいつもより遅くなったから一緒に帰ろ」

男「なんか女の子みたいになった。……いつもは友の方が早く終わるもんね」

友「一緒に帰ろ、友君! とか言われてみてぇー。んで、どうなんだ?」

男「ちょっと待ってくれるなら、喜んで。今、手をつけてるやつに一段落つける」

友「おー、んじゃ座って待たせてもらうわ」

男「悪いね」

友「いいってことよ」

男「…………」

友「……男」

男「我慢の限界早過ぎやしませんか。なに?」

友「お前、会長さんに告らねぇの?」

男「……思わず手が止まること言うのやめてもらえませんか」

友「しねぇの?」

43: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:22:37.94 ID:1uOHTV/Lo
男「なんだろ、分からない」

友「分からないって、お前。これだけ尽くしといて……」

男「そう言われてもね。尽くしてるって意識もないし。別にそういうつもりで、ここにいるわけでもないし」

友「じゃあ、どういうつもりなんだ? だってお前……」

男「うーん、実際のところ、僕は自分で自分の感情がなんなのか、分からないんだよね」

友「分からない?」

男「うん。会長に向けているのが、果たして恋愛感情なのか。それとも憧れだとか、友情なのか。もしかしたら、もっと違うものなのかも知れない」

友「なんだそりゃ」

男「恋だとか愛だとか、経験したことないからね。どうもよく分からない。変に思い込んで会長を傷つけることはしたくない」

友「……はぁ、このチェリーボーイが」

男「なんでしょうか、チェリーボーイさん」

友「……ま、まぁ、そもそも俺が口を挟むようなことでもないか、うん」

男「引き際が見事ですね、チェリーボーイさん」

友「俺が悪かったからやめろぉ! …………とにかく、あれだ。しっかりしろよ、副会長! ってことだ!」

男「激励されてしまった。だけど、そう言われもなぁ」

友「そこは素直に応と答えるところだろう」

男「でも僕、副会長じゃないし。みんなが勝手にそう呼んでるだけで」

友「……あ、そうだった」

■■その十一 終わり■■

44: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:25:02.14 ID:1uOHTV/Lo
■■その十二■■

生徒会長「お待たせ」

女先輩「いやいや、お風呂にしては早いから」

生徒会長「待たせたら悪いと思って」

女先輩「だから私は後でいいと言ったのに」

生徒会長「女ちゃんはお客さんなんだから当然」

女先輩「妙なところで頑固だよね、君は。……しかし、初めて遊んだからだとはいえ、勢いに任せて家まで押しかけてすまないね」

生徒会長「大丈夫……どうせ、家には他に誰もいないし」

女先輩「……家に上がった時から思っていたんだが、親御さんは? もちろん、事情があって言いたくないなら、別に言わなくていい」

生徒会長「……家族はお父さんだけ。お父さんは仕事の関係で海外にいることが多い。お母さんは三年前に…………女ちゃん、どうして急に抱きつくの?」

女先輩「言わなくていい。すまない、不躾な質問だった。君の顔を見れば分かるよ……」

生徒会長「……ううん、女ちゃんが謝ることじゃない。私が知っておいてもらおうと思って、話そうとしたことだから」

女先輩「そう、か。このことを男は?」

生徒会長「知ってる。周りにいる人で知ってるのは男君だけかな」

女先輩(……やはり、男はいつだって私の一歩先にいるんだな)

45: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:26:54.80 ID:1uOHTV/Lo

生徒会長「それと、今から女ちゃんも」

女先輩「…………くははっ、やっぱり君には敵わないよ。私が男子だったら、ドロドロの三角関係を作っていたかも知れないな」

生徒会長「なにそれ」

女先輩「分からないなら気にしなくていいよ。しかし、いきなり泊まるだなんて、すまなかったね」

生徒会長「女ちゃん、同じようなこと言うの、来たときも含めてそれで三回目」

女先輩「おっと、そうだったかな。むむ、自分で言うのもなんだけど、珍しく緊張しているらしい」

生徒会長「あの女ちゃんが?」

女先輩「失礼な。これでも私だってうら若き乙女であることに変わりないんだ。慣れない環境というのに、少なからず反応してしまうものだよ」

生徒会長「そう……ふふっ」

女先輩「くっ……まぁ、いいさ。ここからは形勢逆転させてもらうしね」

生徒会長「?」

女先輩「ずばり、男とどこまで行ってるんだい?」

生徒会長「……男君とお出かけしたことはないよ?」

女先輩「そういう意味じゃ……なに? デートもしたことないって言うのか?」

生徒会長「デートって、男君とはそういう関係じゃないから」

女先輩「男め……行動力はあるくせに意外と奥手だな。いや、この場合はへたれと言うべきか」

46: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:29:41.02 ID:1uOHTV/Lo

生徒会長「いきなりこんなこと言い出してどうしたの?」

女先輩「ふふっ、女子が泊りがけで遊ぶときたら、こういう話をするものなんだよ」

生徒会長「よくわからない」

女先輩「私は楽しいよ。……それで、男から告白されたこともないのか?」

生徒会長「どうして男君が私を好きという前提で、話が進んでいるのかが分からない」

女先輩「だって、男は生徒会の仕事をする資格のない……役員に所属していない、ただの一般生徒なんだぞ? それなのに毎日生徒会室に入り浸り、面倒な仕事をこなしている」

生徒会長「うん。男君は凄く助けてくれてる」

女先輩「それは分かるよ。男は傍目から見てよくやっている。……じゃなくて、本来は生徒会とは一切関わりを持たないはずの男が、何故仕事を手伝っているのか考えないのか、って話だ」

生徒会長「……つまり、私のことを好きだから、男君は手伝いをしてるって女ちゃんは言いたいの?」

女先輩「学校の皆がそうだと認識していると思うぞ。なにせ、君はかわゆいからな。今は彼の活躍があって大きな声で言われることもなくなったが、当初は君の容姿に釣られ、好かれようと躍起になっている軟派な奴だ、と言われていたくらいだよ。今でもそう思っている者も少なからずいるだろうしね」

生徒会長「そう、だったんだ……。私、噂に疎いから……」」

女先輩(私は会長ちゃんが嫌に思うと考えて伝えなかった。男は……わざわざ自分で言うような奴じゃないか。……しまった、迂闊だったか)

生徒会長「男君、私のせいで酷いこと言われてたんだ……」

女先輩「すまない、言うべきではなかった。……会長ちゃんのせいではないよ。男は言われていることを理解している上で、君を手伝っているんだ。……どうして男が仕事を手伝うのか、疑問に思ったことは?」

生徒会長「ない」

女先輩「それはそれで凄いな……もしかして、彼の手伝う理由を把握しているのかい?」

47: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:31:47.97 ID:1uOHTV/Lo

生徒会長「うん」

女先輩「……そういうことか」

生徒会長「男君はね、約束してくれたの」

女先輩「約束? ……それは私が聞いてもいいことなのかな?」

生徒会長「むしろ、男君がいろいろ言われてるって知った今、女ちゃんには知っておいて欲しい。男君が生徒会を……私を手伝ってくれる本当の理由。男君が私としてくれた約束を」

女先輩「……分かった、聞かせてもらうよ」

生徒会長「……ありがとう」

女先輩「礼を言われるようなことじゃないさ。私自身、気になっていたことだしね……。なに、時間はたっぷりあるんだ。存分に話してくれ」

生徒会長「うん。……話は、そう。私が生徒会で一人ぼっちになったところからかな」

女先輩「……君が他の生徒会役員達が予算を横領していることを知り、それを学校に伝えた時のことか」

生徒会長「そう。学生に任せる程度の金額だったとはいえ、それでも額が多かったから話は大きくなった。その結果、私以外の役員は全員停学になって……」

女先輩「そしてそのまま転校やら自主退学となった。あれは結構な騒ぎになったから、よく覚えているよ。それで臨時の処置として、君は会計から繰り上がる形で生徒会長となった」

生徒会長「……先生達はすぐに新しい人を入れるって言っていた。けど、事件があった後だから引き受けてくれる人もいなくて、私は一人で仕事をしていた」

48: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:33:20.14 ID:1uOHTV/Lo

女先輩「それがずるずると続いて、現在も生徒会役員は会長ちゃん一人、か。よくよく考えればあり得ない話だよね。……やめようとは思わなかったのかい?」

生徒会長「……負い目があったから」

女先輩「負い目?」

生徒会長「……私がしたことは正しかったのか。他の役員達を退学に追い込んでまで、する必要があったのかって。――――だから、他の人をやめさせた私だけは、やめるわけにはいかないと思ったの」

女先輩「…………」

生徒会長「あの時の私は何に対してでも必死だった。…………お母さんが死んでしまったことから立ち直れてなくて、がむしゃらに何かをしていなければ、立ち止まってしまうと思っていたから」

女先輩「……慰めの言葉は、受け取ってくれないんだろうね。君は賢いから」

生徒会長「…………」

女先輩「――――でも、それでも私は言うよ。会長ちゃん、君は正しかった。私は君の行いを全力で支持するよ」

生徒会長「……ありがとう、女ちゃん」

女先輩「いいさ。…………生徒会を一人で動かす。普通なら無理なことを君はできた。できてしまったからこそ、仕事は増えていったというわけだ」

生徒会長「うん。どんどん仕事は舞い込んできて、私はなりふり構わずに仕事へ向かっていった。そして多分それは、限界を迎えようとしていた……そんな時だった、男君が始めて生徒会室の扉を開いたのは」

49: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:34:59.37 ID:1uOHTV/Lo

男『失礼しますー』

生徒会長『…………どうぞ』

男『クラス委員の代行でアンケート結果を持ってきたんですが』

生徒会長『…………はい』

男『……生徒会長、大丈夫ですか? なんだか顔色が悪いような……。足元もふらついてるように見えますけど」

生徒会長『……だい、じょうぶです。私は、大丈夫』

男『……今にも倒れそうな人が大丈夫なわけないでしょ』

生徒会長『え……?』

男『もう今日は帰った方がいいですよ』

生徒会長『でも、仕事が……』

男『休まないとだめですって」

生徒会長『でも……』

男『…………』

生徒会長『…………』

男『……わかりました、僕が仕事を手伝います』

生徒会長『……え?』

男『本当は代わりに全部やるって言いたいところですけど、何も知らない僕にはそれができません。だから、手伝います。生徒会長が早く休めるように』

生徒会長(彼はとても強引だった。けれど、そこには私に対する心配と労りが強く感じられて、私は彼を拒絶することができなかった)

50: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:36:37.21 ID:1uOHTV/Lo

男『これで終わりですか?』

生徒会長『そう、です。……凄い、夜になる前に終わった』

男『いつも夜まで残ってたんですか……』

生徒会長『あなた、とても手際がいい』

男『僕も自分がこんなにデスクワークが向いてるとは知りませんでした。……それで、生徒会長。帰ったらちゃんと晩御飯食べてくださいね?』

生徒会長『…………うぅ』

男『仕事しながら聞いた時は驚きましたよ。まさか、持病があるとか深刻なことかと思いきや、ここのところまともに食べていないから、なんてのが理由だとは思いませんでした』

生徒会長『……お腹の音』

男『ええ、ばっちり聞こえましたし、無表情のまま顔が赤くなっていく様もしっかり記憶しました』

生徒会長『……忘れて』

男『ははっ、前向きに検討した後、善処できるように努力します』

生徒会長『……嘘っぽい』

男『でも、ご飯食べないのはまずいですよ。もしかして、毎回さっき食べてたクッキーみたいの食べてるんですか?』

生徒会長『食べてる』

男『……それがどれくらい続いてるんですか?』

生徒会長『二週間、くらい?』

男『……家でも?』

生徒会長『家でも』

男『……これはこれで、結構深刻なことだったか』

52: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:38:48.51 ID:1uOHTV/Lo

生徒会長『……今日は付き合わせてごめんなさい』

男『いえ、僕が勝手にやったことですから、謝られることじゃありませんよ。それより、お聞きしたいんですが、生徒会っていつもこんなに仕事を抱えてるんですか?』

生徒会長『今日は少ない方』

男『マジですか……』

生徒会長『マジです』

男『……人手が増える予定ないんですよね?』

生徒会長『……いろいろ、あったから』

男『例のこと、ですか』

生徒会長『……うん』

男『……生徒会長、一つ僕と約束してくれませんか?』

生徒会長『約束?』

男『はい、生徒会長が僕に約束するんです。ご飯をちゃんと食べること、しっかりと休憩を取ること……自分を大事にすること』

生徒会長『それは……』

男『――――その代わりといってはなんですが、僕も約束します』

生徒会長『あなたが約束?』

男『はい、僕が生徒会長に約束です。僕は生徒会……いや、生徒会長の仕事を手伝います。忙しくてご飯を食べる暇がないと言うなら、その時間を僕が作ります。それが、約束です』

生徒会長『……それは、あなたに得がない』

男『んーまぁ、倒れそうになりながら働いている人がいると知って、放っておけるわけがないって話ですよ』

生徒会長『でも……』

男『それに生徒会長のお腹の音が、学校中に響き渡ったら大変ですしね』

生徒会長『……私のお腹、そんな大きな音しない』

男『さて、どうでしょうかね』

53: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:42:47.53 ID:1uOHTV/Lo
生徒会長「今思えば、あの時は誰かに助けて欲しかったのかも知れない、のかな。だから結局、私は男君の話を受けた」

女先輩「……それが、男と会長ちゃんの約束?」

生徒会長「うん、それからずっとお互いがお互いの約束を守ってる。……話してみて思ったけど、ちょっと間の抜けた話だったかも」

女先輩(この上なく嬉しそうに語っておいてよく言う)

生徒会長「やっぱり、変だよね男君。私がご飯を食べる代わりに仕事を手伝うなんて」

女先輩「君は何回彼を変と言うのか。……しかし、彼が変なことは事実か」

生徒会長「うん、男君は変。ふふっ」

女先輩「……気づけば長々と話していたね。もうこんな時間だ」

生徒会長「本当だ……。明日も学校、そろそろ寝よう」

女先輩「うん、おやすみ会長ちゃん。話してくれてありがとう。とても有意義な時間だった」

生徒会長「こちらこそ、話を聞いてくれありがとう。おやすみ」

女先輩(今の会長ちゃんがあるのは、男のおかげだったんだな。これは、彼には感謝しないといけないか。……もちろん、それを表に出そうとは思えないけれど)

女先輩「くははっ」

生徒会長「女ちゃん?」

女先輩「おっと、なんでもないよ。……ねぇ、会長ちゃん。電気は消したままでいいから、寝つくまでいろいろお話しないかい? どうやら私はまだ話したりないみたいだ」

生徒会長「……いいよ」

女先輩「ありがとう。それじゃ、自分のことを交互に話していくということで。私から話そう。そうだね、まずは――」

■■その十二 終わり■■

54: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:46:49.51 ID:1uOHTV/Lo
■■その十三■■

女先輩「やぁ、男」

男「あれ、女先輩だ。こんにちは、一年生フロアである二階にいるなんて珍しいですね。へへっ、ここは我らの縄張りだ、通行料をいただこうか!」

女先輩「ふん、使わなくなった土地を貸してやってるんだ。そちらこそ、いい加減地代を払ったらどうだ?」

男「いつだって大家と地主には勝てないのか……」

女先輩「ま、珍しいのは確かだよ。二年になって以来、初めて来るからね」

男「それはそれは、貴重な瞬間に立ち会えて光栄ですよ。昨日の会長とのデートはどうでした?」

女先輩「うむ、我が人生の内、上位三位に入る素晴らしい時間だったよ。という訳でついてきてもらおうか」

男「どういう訳なのか分かりませんが、かしこまりです。ただ、生徒会に行かないといけないので、あまり長くお付き合いできません」

女先輩「なに、すぐに終わるさ」

55: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:49:50.27 ID:1uOHTV/Lo

男「裏庭って人気がない割りに結構使われる気がする」

女先輩「人気がないからこそ、使うこともあるだろうさ。例えば、告白をするとか」

男「なるほど。……はっ! まさか、女先輩がここにつれてきた理由って!」

女先輩「……うん、そうなんだ。君に聞いてもらいたいことがあって」

男「あの女先輩が頬を染めてもじもじだと……。いつのまに好感度を上がったんだ。全然記憶にないぜ」

女先輩「実は、ね……」

男「ごくり」

女先輩「先週、男が買ったパン食べちゃったの……私、なんだ。ごめん」

男「告白は告白でも、そういう告白かーい」

女先輩「棒読みでの返事ありがとう」

男「まぁ、生徒会室に置いておいてなくなったわけですから、ある程度犯人の目星はついてましたけどね。会長が勝手に食べるわけないし」

女先輩「随分な信頼だ。……それで、お詫びとしていいことを教えようと思う」

男「なんですか? 僕、そろそろ生徒会に行きたいんですけど」

56: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:54:07.53 ID:1uOHTV/Lo
女先輩「会長ちゃんが持ってる櫛。あれはお母様の形見で、他人が触れるのも嫌がるくらい会長ちゃんは大切にしている代物だよ」

男「…………」

女先輩「そして会長ちゃんはその櫛で、よくお母様に髪を梳いてもらっていたらしい。それが一番の思い出だと昨日言っていたよ。……会長ちゃんはそういうものを君に使っている。この意味、考えてみるといい」

男「それは……」

女先輩「これ以上は聞かれても答えるつもりはないよ」

男「……いけずな人だ」

女先輩「なんとでも言いたまえ。これ以上は君の問題だ」

女先輩(そして、彼女との、な……)

男「……そうですか。お話は以上で?」

女先輩「おしまいだよ。もう行っていい」

男「わかりました。お話、ありがとうございました」

女先輩「感謝の言葉はいらないよ。これはお詫びであって――――むしろ、こちらからのお礼でもあるからさ」

男「お礼?」

女先輩「なんでもないよ。さっさと行かないか、会長ちゃんが待ってるよ」

男「暴君のような言動ですね……。失礼します」

女先輩(後押しになるのかな、これは。昨日まで嫉妬していたくせに、我ながら自分が理解できないね。…………認めているということなのかな、彼のことを。……男め、会長ちゃんを泣かせるようなことがあったら、承知しないからな)

■■その十三 終わり■■

57: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:57:24.60 ID:1uOHTV/Lo
■■その十四■■

友『お前、会長さんに告らねぇの?』

男(友の言葉が頭にちらつく。さっきまで、そんなことなかったのに……」

女先輩『……会長ちゃんはそういうものを君に使っている。この意味、考えてみるといい』

男(女先輩、急に呼び出したかと思えば、とんでもないことを……)

生徒会長『男君』

男(友の言葉、女先輩が教えてくれたこと、そして会長の姿が順番に巡っては繰り返す。……ああ、これはまずい。非常にまずい)

男『うん。会長に向けているのが、果たして恋愛感情なのか。それとも憧れだとか、友情なのか。もしかしたら、もっと違うものなのかも知れない』

友『なんだそりゃ』

男『恋だとか愛だとか、経験したことないからね。どうもよく分からない。変に思い込んで会長を傷つけることはしたくない』

男(僕は自分が会長に向ける感情が何なのかはっきりしないくせに、何かを思い込もうとしてしまっている。だめだ、それはいけないことだ。会長を傷つけてしまうことだ。…………このまま生徒会室へ行くのはやめておいた方がよさそうだな)

友「あ、男じゃん。どうしてこんなとこいんの? 生徒会関係?」

男「友……」

友「……でもなさそうだな。そんな弱った顔しやがって……。何かあったのか?」

男「……相談に乗って欲しい」

59: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 22:59:21.17 ID:1uOHTV/Lo

男「友、なんで僕達は将棋をしてるの?」

友「ばっか、男同士の相談といったらキャッチボールしたりとか、何かしながらってのが定番だろ。グローブとボールを野球部が貸してくれるかわからないし、俺とお前っていたらやっぱりこれっしょ」

男「……なんか友、楽しんでない?」

友「楽しいというか嬉しいかな。お前、滅多に相談とかする奴じゃないから。そんなお前が俺を頼ってくれたのが嬉しいわけよ」

男「……友ってさらっとそういうことが言えるのに、どうしてモテないんだろうね」

友「な、俺も自分で謎だわ。……それで、昨日の話の続きになるのか? 感情がわからなくて、生徒会室に行けないっていうのは」

男「そう、なるのかな? ちょっとあることがあって、疑問が迷いになちゃったみたいなんだ」

友「そのあることっていうのは?」

男「…………」

友「そこでお前が黙るってことは、他の人が関係してくることか。なら、いいや。どうせお前は口を割らない」

男「……相談に乗ってもらってるのに、ごめん」

友「いーよ。って、謝りながらもえぐい手を打つよな、お前」

男「桂馬はもらうよ。……人生観を変えるとか、爆弾みたいなことじゃないんだ。けど、それは少なからず僕に衝撃を与えて……なんと言えばいいのかな。水面に石が投げられたというか、穏やかだったものが形を変えようとしているみたいで……なにを言ってるか、自分でもわからないや。ははっ……」

60: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 23:05:00.89 ID:1uOHTV/Lo
友「男」

男「なに?」

友「お前忙しいから極たまにだけどさ、勉強を教えてくれるじゃん? そうすると俺って授業を受けてるより頭に入るんだよ。別段、お前は成績が特別良い訳じゃないなのにな」

男「いきなりどうしたの?」

友「勉強を教えるのが上手いってさ、説明が上手であることと一緒だと思うんだよな。それはお前が生徒会の仕事でいろんな人を相手にしても、嫌われない理由の一つだと俺は思ってる。もう一度言う、お前は説明が上手いんだ」

男「……何が言いたいの?」

友「つまりだ、本当は説明が上手いはずのお前が、ぐちゃぐちゃの説明をしている。それって、おかしいと思わないか?」

男「変だなんて……そもそも、説明が上手とか自覚したことないし……」

友「……俺が言いたいのはさ、お前、ちゃんとした説明を放棄してるんじゃないかってことだよ」

男「そんなこと! ……こうしてわざわざ友に聞いてもらってるのに」

友「じゃあ、多分無意識なんだろ。お前はこの問題が解決することを避けてる」

男「!」

友「手が止まったな。お前はいつも時間を置かずに次の手を打つのに。……男、お前は本質的な解決じゃなくて、誤魔化すための理由探しをしているだけじゃないのか?」

男「誤魔化すための理由……」

友「お前が探してるのは会長さんを絶対に傷つけない選択だけだ。……それじゃ、解決はできないんだよ。お前のその悩みは傷つくことを恐れていれば、一生消えることなく残るんだよ」

男「友……」

友「お前が絶対に傷つけないと思った選択で、傷つく人がいるかも知れないんだぜ? 結局、人は誰かを傷つけないで生きるってことはできないんだ。だったら、せめて選んで傷つけた方がましじゃないか? 少なくとも俺はそう思う」

61: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 23:06:04.68 ID:1uOHTV/Lo

男「でも、僕は……」

友「……ま、今までやっていたことを否定しろってんだ。そう簡単には決められないよな。――――そこでだ、賭けをしよう」

男「賭け?」

友「おう。お前が会長さんに止められてるのは知ってる。だから、これが最後だ。百五十一回目の賭け。俺が勝ったら、お前は今から生徒会室に行く。別に告れとは言わないさ。行って、自分の感情と向き合えばそれでいい」

男「僕が勝ったら?」

友「そしたら今日は会長さんに適当な理由を伝えて帰ればいい。それで頭を切り替えて、明日からまたいつも通りに過ごせばいいさ」

男「……でも、この時点で友の飛車も角も僕が取ってるんだよ?」

友「なに、無理を吹っかけてるんだ。劣勢ぐらい受け入れるさ」

男「……わかった。友がそう言うなら」

友「なら、始めよう。……ここからは全力で行く。じゃないとお前には勝てないからな。会話も待ったもなしだ」

男「うん」

友「…………」

男「…………」

友「――――」

男「――――!」

■■その十四 終わり■■

62: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 23:07:47.01 ID:1uOHTV/Lo
■■その十五■■

女先輩「夕暮れに染まる生徒会室。なんともロマンチックじゃないか」

生徒会長「女ちゃん、窓枠に座ったら危ない」

女先輩「大丈夫、ちゃんと気をつけてるよ」

生徒会長「そういうことじゃなくて」

女先輩「わかっているさ。それより、男なかなか来ないね」

生徒会長「うん……用があるから遅くなるって、さっきメールがきたっきり」

女先輩「おや、メールの使い方わかるようになったんだ」

生徒会長「メールだけなら、なんとか。男君が教えてくれた」

女先輩「なるほど、男が教えてくれたから覚えたと」

生徒会長「うん」

女先輩「……そこは恥ずかしがったりするところなんだけどね」

生徒会長「なに?」

女先輩「いいや、なんでも。……会長ちゃんは二言目には彼の名を口にする感じだよね」

生徒会長「そうかな?」

女先輩「そうだよ」

生徒会長「……そう」

63: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 23:09:01.68 ID:1uOHTV/Lo

女先輩「……ねぇ、会長ちゃん。君は、ある日ここに男が来なくなったらどうする?」

生徒会長「……え?」

女先輩「彼はいつも当たり前のようにここへやってくるけど、それは全然当たり前のことじゃないんだよ。小さなきっかけがあれば、簡単に消えてしまうようなことなんだ」

生徒会長「どういうこと?」

女先輩「茜色に染まるこの生徒会室はとても美しい。だけど、それは誰かが傍にいてこそだと思うんだ。私はここに一人きりでいたら、きっと寂寥感に苛まされて逃げ出してしまうと思う」

生徒会長「女、ちゃん?」

女先輩「君は、この生徒会室をどういう場所だと捉えているのかな?」

生徒会長「どこ行くの?」

女先輩「一応心配してここにいたけど、どうやらその必要はなくなったみたいだからね。今日はもう帰るよ」

生徒会長「……待って」

女先輩「待たない。今日の私はとてもお節介焼きで――――ちょっぴり意地悪なんだ」

生徒会長「…………」

生徒会長(橙色の光が差し込む生徒会室。私にとって、ここは……なに?)

■■その十五 終わり■■

64: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 23:10:27.86 ID:1uOHTV/Lo
■■その十六■■

男「はぁ……はぁ……」

生徒会長「男君?」

男「はい……こんにちは、会長」

生徒会長「どうしたの? 息を切らして」

男「何ででしょうね。今日は走りたい気分だったんです」

生徒会長「廊下は走らない」

男「気をつけます」

生徒会長「……今日は、遅かったね」

男「はい、ちょっと道草を。それと、友の奴がとんでもなく粘って。あいつ、本当にここぞという時に強いんですよ」

生徒会長「……今日は男君もよくわからないことを言う」

男「え? ……あー、女先輩いたんですよね? 向かいの棟の廊下から、窓のところに立ってるの見えましたよ。目が合ったと思って手を振ったんですが、何も返してくれなかったので気になってるんですが……もうお帰りになったみたいですね」

生徒会長「うん、よくわからないことを言って帰った」

男「そうですか」

生徒会長「……ねぇ、男君」

65: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 23:11:53.01 ID:1uOHTV/Lo

男「はい」

生徒会長「男君にとって、この生徒会室ってどんな場所?」

男「……どんな場所、ですか」

生徒会長「女ちゃんが帰り際、私にそう言ったの」

男「……質問に質問で返してすみません。会長は、どう思いますか?」

生徒会長「私もさっきまで考えてた。それで、ついさっき答えを見つけた。ここは安心できる場所だって」

男「安心、ですか」

生徒会長「うん。仕事はたくさんあって、いろんな人が来て慌しい場所だけど。でも、ここに私の居場所がある気がする」

男「そう、ですか。居場所……そうか、居場所か」

生徒会長「男君?」

男「……僕も、同じでみたいです。ここには、僕の居場所があるような気がします」

生徒会長「本当? ……男君と一緒で嬉しい」

男「……僕もです」

生徒会長「…………」

男「…………」

66: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 23:13:02.25 ID:1uOHTV/Lo

生徒会長「……仕事、しようか」

男「はい、そうですね」

生徒会長「電気は、まだつけないままでいい? ちょっと暗いけど、夕日が綺麗だから」

男「問題なしです」

生徒会長「ありがとう。……これとこれ、お願い」

男「わかりました」

生徒会長「…………」

男「…………」

生徒会長「…………」

男「…………」

生徒会長「文化祭関係の書類、増えてきた」

男「そうですね。そろそろ学校全体が文化祭に向かっていこうとする時期ですから」

生徒会長「やること、増える」

男「学校生活で三本指に入るイベントですからね」

生徒会長「でも、二人ならできる」

男「……はい」

67: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 23:13:44.86 ID:1uOHTV/Lo

生徒会長「…………」

男「…………」

生徒会長「…………」

男「……会長」

生徒会長「なに?」

男「文化祭、一緒に回りませんか?」

生徒会長「……忙しいと思うけど」

男「その時間、僕が作りますから」

生徒会長「私で、いいの?」

男「是非、会長が」

生徒会長「なら、よろしくお願いします」

男「はい」

生徒会長「約束?」

男「約束です」

生徒会長「……ふふっ」

68: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 23:14:13.00 ID:1uOHTV/Lo

男「…………」

生徒会長「…………」

男「…………」

生徒会長「…………」

男「…………」

生徒会長「…………」

男「……会長」

生徒会長「なに?」

男「…………」

生徒会長「…………」

男「……好きです」

69: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 23:15:20.73 ID:1uOHTV/Lo
生徒会長「…………」

男「……ご存知かどうかはわかりませんが、僕は会長のお手伝いをすることでいろいろと言われていました。会長の気を引くためだって。もちろん、そんな下心で今までやってきたつもりはありません。困っている人がいるから助けていただけです」

生徒会長「…………」

男「……でも、最近はその言葉を否定できない自分がいるんです。会長の役に立ちたい、会長の傍にいたい、――――会長の気を引きたい。そんな不純な気持ちが混ざってきているんです」

生徒会長「…………」

男「会長、僕はあなたのことを敬愛や友情ではなく、一人の女の子として好きになってしまいました」

生徒会長「……そう、なんだ」

70: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 23:16:32.69 ID:1uOHTV/Lo
男「僕はこの気持ちからずっと目を逸らしてきました。けれど、今日は見つめてしまいました。我慢ができなくなってしまいました。……抑えることなく、感情をぶつける身勝手を許してください。あなたを好きになってしまった僕を、どうか……受け入れて、もらえないでしょう……か」

生徒会長「…………」

男「…………」

生徒会長「…………」

男「…………」

生徒会長「…………」

男「…………今なら生徒会も昔の事件の色が薄まり、役員の募集も可能だと思います。もし、僕を受け入れられなくても……遠ざけたくなっても、生徒会を動かしていくことは可能です」

生徒会長「……そうだね。役員の募集、明日からすぐにかけます」

男「……っ! そう、ですか……。わかりました、準備しておきます」

生徒会長「お願い」

71: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 23:17:17.31 ID:1uOHTV/Lo

男「…………」

生徒会長「…………」

男「…………」

生徒会長「…………」

男「…………」

生徒会長「……男君が来る前」

男「え?」

生徒会長「男君が来る前、女ちゃんに言われたの。男君が生徒会室に来なくなったらどうするって」

男「…………」

生徒会長「私、考えてみた」

男「……はい」

生徒会長「考えてみて、考えてみて。わからなかった」

男「わからなかった?」

生徒会長「うん。私、男君がいない生徒会、想像もできなかった」

72: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 23:18:40.31 ID:1uOHTV/Lo

男「…………へ?」

生徒会長「昨日、女ちゃんとデートしたの楽しかった。それで、デートしてる時、何度も思ってた。ここに男君がいたらもっと楽しいだろうな、次は男君と来てみたいなって」

男「それって……」

生徒会長「今のままじゃ、お仕事多すぎてお出かけできない。文化祭もちょっとしか回れない」

男「え、あれ、ちょ、え……? 頭が追いつかな、え、つまり……?」

生徒会長「男君、私も好きです。こんな私でよければずっと一緒にいてくれますか?」

男「――――」

生徒会長「…………」

男「――――」

生徒会長「……男君?」

男「――――ゃ」

生徒会長「え?」

男「――っしゃぁあああああああ!」

73: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 23:20:33.75 ID:1uOHTV/Lo

女先輩「おーおー、吠えてる吠えてる」

友「うわ、あいつ告ったのか」

女先輩「焚きつけたくせによく言うよ」

友「俺は自分の感情と向き合えとしか言ってませんよ」

女先輩「よく言う。誰がどうみても彼が会長ちゃんを好きなのは、まるわかりだった。それで感情と向き合わせれば、この結果は必然に決まってるじゃないか」

友「へへっ、まぁ、会長さんだって、どう見ても男のやつしか見てませんでしたからね。多分、学校中の奴らがとっとと付き合っちまえって思ってましたよ。あ、美術部の部長さんだけ分かってないんだっけか」

女先輩「ふん。……さて、ハッピーエンドになったようだし、私は帰るかな」

友「あれ、ここは突撃して祝福しつつからかうところでは?」

女先輩「馬鹿を言え、よく言うだろ? 人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られてしまうんだよ」

友「つまり……?」

女先輩「この先の時間は彼と彼女だけのものであって、部外者の我々は退場するべきということさ」

■■その十六 終わり■■

74: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 23:21:11.45 ID:1uOHTV/Lo

男「会長、約束します。僕はあなたとずっと一緒にいます」

生徒会長「男君、約束します。私はあなたとずっと一緒にいます」

男「僕は」

生徒会長「私は」

男・生徒会長「ずっと約束を守っていきます」

生徒会長「……男君」

男「はい」

生徒会長「よろしくお願いします」

男「かしこまりー!」

75: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 23:21:51.90 ID:1uOHTV/Lo

生徒会長「……男君」 男「かしこまりー」

お終い

86: ◆U5RjLhlixE 2013/05/16(木) 23:35:55.77 ID:1uOHTV/Lo

■■おまけ■■

男(僕が会長に告白して早三日)

生徒会長「…………」

男(僕達は恋人になったわけだけど……)

生徒会長「…………」

男(特に何も変わらない!)

生徒会長「…………」

男(いや、わかっていたことだ。付き合いだした途端、きゃぴきゃぴし始める会長とか想像できないし、急に態度を変えられてもついていけるかわからない)

生徒会長「……? 男君」

男(けど、ちょっとくらい期待した自分はおかしくないはずだ。例えば、座る場所が少し近くなってるとか、時折目とか合うようになって、意味もなくお互いにニヤニヤしちゃったりするとか!)

生徒会長「おーい、男君」

男(というか、とっても気になるんですが、恋人のステップってどういう段階で進んで行けばいいんだろう……)

生徒会長「……むぅ」

男(まずはやっぱり手を繋ぐところだよな。腕を組むのは……まだ早いな、うん。こういうのってやっぱり男から切り出すべきなのだろうか。いつだ? 帰り道とかか? ……ちきしょう、会長と僕、帰り道別々じゃないか!)

生徒会長「……男君」

男(あ、でもあれか。帰り道をちょっと遠まわりするのも青春っぽいのかな? ……いいかも知れない。今日、仕事が片づいたら会長に提案してみ――――」

生徒会長「えい」

男「…………」

生徒会長「…………」

男「…………」

生徒会長「…………」

男「会長」

生徒会長「なに?」

男「今、僕の頬に触れたやわらかな感触の詳細を教えていただけないでしょうか」

生徒会長「唇」

男「唇、ですか」

生徒会長「うん」

男「つまり、ほっぺにちゅーですか」

生徒会長「うん」

男「そうですか。なるほどなるほど、そうですか……」

男(うぉおおおおお!? 不意打ち過ぎて全然感触覚えてないんですが!? 時間巻き戻れっ! 切実に! 神様お願い返して! 僕のファーストほっぺにちゅー!)

生徒会長「……今はまだ、新しい役員さん来ないから忙しいけど」

男「うぅぅ……ふぁい?」

生徒会長「人が増えて、お仕事に余裕が出てきたら、デートしようね」

男「…………」

生徒会長「それまで二人で頑張ろうね……副会長さん」

男「……かしこまりー!」

蛇足。
今度こそ本当に終わりです。
皆様、ありがとうございました!

111: ◆U5RjLhlixE 2013/06/17(月) 21:55:46.09 ID:gN7EYzxpo

アフターストーリー・文化祭

113: ◆U5RjLhlixE 2013/06/17(月) 21:59:19.52 ID:gN7EYzxpo

はじめに

本スレ内容 生徒会長「……男君」 男「かりこまりー」 の続きとなっております。

ジャンル :男女のテンプレもの 先輩後輩のテンプレもの

形式   :台本・地文なし
投稿   :書き溜め + 手直し(まだ書き途中の意)
文字数  :約70,000字
・読了時間約140分。(500文字/分として)
→書き途中なので文字数と読了時間に変更があると思いますが、ご了承いただければと思います。

114: ◆U5RjLhlixE 2013/06/17(月) 22:01:13.05 ID:gN7EYzxpo

「すみません、文化祭の準備でお願いがあるのですが!」

男「どうしました? …………もっとベニヤ板とペンキが欲しい、ですか。それならなんとかなりますよ。東棟の階段下の物置にまとめてあるので、こちらに必要な枚数と個数を記入した後に持っていって下さい」

「今日も渋くてかっこいい教頭先生が来ましたよー。おっと、副会長君、何故道を塞ぐのかな?」

男「きつ……教頭先生は会長にすぐ仕事を押しつけるじゃないですか。先に僕が話を伺いますので……面倒な奴って言いました? 今、小声で面倒な奴って言いましたよね?」

「こんにちはー。あ、副会長だ。ねね、予算ってあげられない!?」

男「えっと、現段階では予算の相談は受け付けないことになっています。全体の要望が集まってから再度検討することになります。ごめんなさい」

「これー、頼まれて持ってきたんですけどー」

男「どうもありがとうございますー。……これ誰からですか? 教頭先生? あの人は……いえ、こちらの話なので気にしないで下さい」

「生徒会! また野球部とサッカー部が揉めてるぞ! 今度は文化祭の出店のことで!」

男「あの人達これで今月六度目だよ……。場所を教えて下さい、すぐに行きます」

生徒会長「……男君」

男「あー、と会長、聞いての通りなので行って来ます! ご用でしたら戻り次第聞きますので!」

生徒会長「……」

115: ◆U5RjLhlixE 2013/06/17(月) 22:03:52.35 ID:gN7EYzxpo
女先輩「行っちゃったね。ずいぶんと忙しそう……いや、これは余裕がなさそうと表現するべきかな?」

生徒会長「……うん」

女先輩「文化祭が近いとはいえ、男は少し気を張りすぎだな」

友「付き合いだしてから男に対する甘さが、右肩上がりの会長さんがフォローしないってよっぽどですよね」

女先輩「恋人である会長ちゃんの目から見てもそうだということさ。友人である君の目から見てどうなんだい?」

友「まぁ、ちょっとやばいかもしれないですね」

生徒会長「やばい?」

友「ええ、それこそ今日のことなんですが、数学の授業でこんなことがありまして」

116: ◆U5RjLhlixE 2013/06/17(月) 22:04:56.97 ID:gN7EYzxpo

数学教師『つまり、この問題はこうなります。そうですね……この問題の応用が教科書の百三十四ページの問題になります。今日は五日だから、男さん一問目を解いてみて下さい」

男『…………』

数学教師『男さん?』

男『え? あ、文化祭関係の書類は一度文化祭実行委員会の方へ……』

数学教師『……はい?』

118: ◆U5RjLhlixE 2013/06/17(月) 22:10:27.60 ID:gN7EYzxpo

_ _ _ _ _

友「なんてことがありまして」

女先輩「それは……かなりきてるな」

生徒会長「男君……」

友「数学の先生はご存知の通り穏やかな人なので、呆れるだけで怒られることはなかったんですけど……。普通、こういうのって周りは笑うじゃないですか。でも、俺も含めてクラスメイトの誰も笑わなかったんですよね。というか、笑えなかったんですよ」

女先輩「男はそれなりに立ち回りが上手いから、そもそも心配されることがないやつだと思っていたが……それだけ重症ということか」

友「まぁ、そう思って俺と女先輩がこうして生徒会の仕事を手伝ってるわけですが」

女先輩「正直、こんな山積み状態だとは思っていなかったよ。新しい役員はまだ見つからないのかい?」

生徒会長「うん……」

女先輩「募集をかけて一ヶ月だっけ。もう十月に入ったというのに、誰一人も来ないとはね。やはり、微妙な時期だからか」

友「あー、それが大きな理由みたいですね。実は俺が所属してる部活に、生徒会の仕事に興味があるってやつ何人かいるんですよ。けど、文化祭が迫ってるじゃないですか」

女先輩「うちの高校の文化祭は地域ぐるみで開催するからね。規模が大きいから仕事も多い。それで尻込みしてしまう、というわけか」

友「女先輩と会話してる話が早いなぁ。そうなんですよね、忙しいときに仕事を知らない人間が入ったら、かえって足を引っ張るだけなんじゃないかと思うらしくて」

女先輩「協調性があるからこそ、名乗り出られないというわけか。……正直、今の私達のように手伝いという形で参加してくれるだけでも、全然違うんだが」

友「俺もそう思って言ったんですけど、どうも決心がつかないみたいで。こういうのは強制できませんから、俺としてはお手上げです」

119: ◆U5RjLhlixE 2013/06/17(月) 22:12:49.26 ID:gN7EYzxpo

女先輩「文化祭を乗り越えれば役員になってくれそうな生徒がいる。それでよしと思っておくしかないんだろうね」

友「ですねー。しっかし、この生徒会はあれですか? 温泉みたいにどっかから仕事が沸いて出てきてるんですかね?」

生徒会長「この時期は、普段の仕事に合わせて文化祭の仕事もあるから……」

友「いやいや、文化祭の分を抜きにしても、通常の仕事の量が意味わかんないレベルですから。会長さんと男の二人でこなしてるみたいだから、多いって言っても限度があると思っていたんですけど……これはあり得ん」

女先輩「私は会長ちゃんの言うことを少しは疑うことを覚えるようにするよ。君、一人で生徒会をやってた時、私に一人でやれる量だと言っていたけど……どうせ、その時もさほど変わらない量だったんじゃないかい?」

生徒会長「そんなことない、流石に今のほうが多い」

女先輩「たくさんあったことは否定しないんだね」

生徒会長「……やられた」

女先輩「やられたじゃないよ、まったく…………はぁ」

友「……女先輩?」

女先輩「なんだい?」

友「……いえ、なんでもないです」

女先輩「……? 変な奴だな。……まぁいい会長ちゃん、男がああなっている理由に何か思い当たることはないのかい?」

生徒会長「実は――――」

□■□■□■□

120: ◆U5RjLhlixE 2013/06/17(月) 22:16:15.02 ID:gN7EYzxpo

友(会長さんが何とかするって言うから先に帰ったけど……男のやつ、大丈夫かね)

女先輩「……」

友(……あとは残った会長さんに任せるしかないか。それより今は――――)

女先輩「……はぁ」

友「珍しいですね。いつも自信満々な女先輩が溜息だなんて」

女先輩「自己嫌悪の真っ最中だ」

友(……軽口が返ってこないってことは、今は冗談も言わない方が良さそうだな)

友「理由を聞いても?」

女先輩「……会長ちゃんは一人で生徒会の仕事をしていた時期があった。その経緯、君は知っているかな?」

友「……ええ、俺達一年生の入学前のことですが、噂で聞いたことあります。大事だったらしいですね」

女先輩「あの時、私は聞いていたんだよ。会長ちゃんに生徒会のことを。大丈夫なのか、一人でやれるのかって」

友「対して、会長さんは一人でやれると答えたんですよね?」

女先輩「だけど本当はどうだったのかは今日の会話の通りだよ。……あの時、無理やりにでも状況を聞きだして、男のように強引であっても手伝えばよかった」

友「強引に干渉されることを嫌がるやつだって、世の中にはごまんといますよ。その時の女先輩が引き下がったのは、責められるようなことじゃないと思いますけどね」

女先輩「それは……分かっているさ」

121: ◆U5RjLhlixE 2013/06/17(月) 22:18:21.84 ID:gN7EYzxpo

友「結果が出た後に悔いが出てくるのは分かりますが、考えても仕方がないことですよ」

女先輩「けれど、それでも何気ない会話の一つとして片付けてしまったことを、考えないわけにはいかないよ」

友「まぁ、そう思ってしまうのが普通といえば普通かもですけど」

女先輩「会長ちゃんは嘘が嫌いなくせに、自分だけが大変ならいい、と変な価値観を持っているからね。ああいうタイプは周りが気をつけておかなければいけない」

友「……でも、その点は大丈夫なんじゃないですか?」

女先輩「どういうことだ?」

友「人に頼ることが苦手な会長さん。そんな人が頼ったやつが傍にいるじゃないですか」

女先輩「……あぁ、なるほど。確かに、そういう意味でも私は彼に期待するべきか」

友「あいのぱわーってやつでどうにかすればいいんですよ」

女先輩「でも、その彼も今はいっぱいいっぱいのようだけどね」

友「それも、あいのぱわーでどうにかすればいいんですよ。あいつの場合は理由が理由ですし」

女先輩「……くくっ、それに関しては頷けるな。無理をしている理由を言われた時は、思わず聞き返しそうになったよ」

友「同じだんすぃーとしては、気持ちは分からんでもないんですけどね。ですが批判はします。男め、青春しやがって!」

女先輩「君は本当に素直だな。彼のことは会長ちゃんが何とかすると言っていたし、彼らの問題だろう」

友「ですね。いちゃつきやがって!」

123: ◆U5RjLhlixE 2013/06/17(月) 22:20:03.49 ID:gN7EYzxpo

女先輩「…………友、おかげで少し落ち着けた。ありがとう」

友「はて、急にどうしました? 仰る意味がわかりませんが」

女先輩「私が落ち込んでるのを察してくれていたんだろう?」

友「え、そうだったんですか? びっくりです」

女先輩「……君は、おちゃらけているようで、なかなか気配りができるやつのようだ。見直したよ」

友「今まで一体どんな評価だったのか気になるところですが、聞くのは怖いのでやめておきます」

女先輩「くははっ……さて、私はここらで別れるとするよ。家もすぐそこだしね。……当然のようにここまで来たが、君の家もこっちなのか?」

友「へい、そんなところです。それでは、お供させていただきありがとうございました」

女先輩「いや、こちらこそいろいろな意味で助かったよ。それじゃ、また明日、生徒会の手伝いで」

友「はいはーい、また明日っすー」

友(……さて、駅まで戻りますかね。もうこんな時間か、あっちも帰った頃かな? 男と会長さん、上手くいってればいいけど……明日はどうなることやら)

□■□■□■□

124: ◆U5RjLhlixE 2013/06/17(月) 22:26:42.20 ID:gN7EYzxpo
男「ただいま戻りました」

生徒会長「おかえり」

男「友と女先輩は先に帰ったんですか?」

生徒会長「うん。二人はあくまでお手伝いだし、こんな時間だから」

男「こんな時間……? って、本当だ。うわ、もう夕日が見えてるし……。片づけておきたい書類とかあったのに、うわぁ、うわぁ……」

生徒会長「……男君」

男「はい、なんですか? あ、今日上がってきた問題はなんとか対処しきれましたよ。ようやく溜まっている仕事に手が出せます。文化祭当日までやっておきたいことは、まだまだありますからね。それで、明日は――」

生徒会長「男君」

男「っ! は、はい、どうしました? そんな眉根を寄せたりして」

生徒会長「……無理しないで」

男「無理なんて……」

生徒会長「してる。最近、目の下にうっすらと隈が出てる。あんまり、寝てないんじゃ?」

男「――それは」

生徒会長「無理しないで。お願い……」

男「でも会長……」

生徒会長「私達が付き合う直前にした約束――文化祭を一緒に回る、っていうのを男君が守ろうとしてるの、わかってる」

男「……」

生徒会長「でも、それで男君が倒れたら、意味ない」

男「……はい」

生徒会長「私のために頑張ってくれるのはとても嬉しい。けど、だからこそ私は男君に無理をしないで欲しい」

125: ◆U5RjLhlixE 2013/06/17(月) 22:29:57.87 ID:gN7EYzxpo

男「……」

生徒会長「男君?」

男「……心配かけたことは謝ります。ごめんなさい。だけど、一つだけ訂正させて下さい」

生徒会長「訂正?」

男「はい。指摘されたように、約束の件で少しがむしゃらになっていました。それは間違いないのですが……それは自分のためでもあるんです」

生徒会長「……自分のため?」

男「もちろん、会長との約束ですので会長のためでもあるんですが……」

生徒会長「……?」

男「要は僕も文化祭を会長と回りたくて仕方なくて、何が何でも当日に時間を作ろうと躍起になってまして……」

生徒会長「えっと……」

男「つまり、私利私欲でもあるわけです! むしろ、そっちの面が強かったりします!」

生徒会長「男君……」

男「あぁ、ちょっと呆れたような眼差しが痛い! だって会長、僕達まだまともなデートしたことないんですよ?

生徒会長「それは、そうだけど」

男「そりゃ、帰り道に少し寄り道するのも楽しいですけど、そもそも僕達帰るの遅いからあまり時間取れないし!」

生徒会長「……」

126: ◆U5RjLhlixE 2013/06/17(月) 22:32:00.89 ID:gN7EYzxpo

男「土日は土日で仕事をしに学校に来ることもあったし、何度かあった休日もお互いに外せない用事があったりで、ついぞ出かけられることはなかった! だから僕は文化祭に向けて情熱を注いでるんです!」

生徒会長「それが男君が無理をしてる理由?」

男「学生ならではの文化祭デート! 張り切るに決まってるじゃないですか!」

生徒会長「私も楽しみには、してるけど……」

男「ですよね!?」

生徒会長「でも無理はだめ」

男「そう言われても僕はやれることをやるだけです!」

生徒会長「なら私は男君を全力で休ませる」

男「今の僕を止めることは至難のことですよ。そう、いくら会長であってもです」

生徒会長「負けない」

男「やれるものならやってみて下さいですよ!」

□■□■□■□

128: ◆U5RjLhlixE 2013/06/17(月) 22:36:55.11 ID:gN7EYzxpo

友「その結果がこれかよ」

男「なんだ、友だったのか。起き上がって損した。じゃ、会長もう一回お願いします」

友「もう一回お願いしますじゃねぇよ。用があったから教室で別れて、後から生徒会室に来て見れば……」

男「友、僕はもう、抜け出せないかも知れない……」

友「状況を説明しろ、状況を」

男「ソファーで会長に膝枕してもらってるぅー」

友「そんなもん見ればわかるわ! 過程だよ、過程を求めてんだよ! お前、会長さんが阻止してくるかも知れないけど負けない、って昼休みに息巻いてたじゃん! なのに骨抜きじゃん! これ誰がどう見ても完敗だよ!」

生徒会長「また男君が仕事しに飛び出して行きそうだから誘った。そしたら勝った」

女先輩「な、言っただろう会長ちゃん。こう提案すれば男なんぞイチコロだと」

男「くそぅー、やっぱり女先輩の入れ知恵かー。会長と恋人らしいことをするため、って意気込んでる僕の心理をついた巧妙な絡め手でしたー。こんなの抗えるわけがないー」

友「昨日心配してた俺が馬鹿みたいじゃねぇか……。つか、お前ちょろすぎだろ……」

129: ◆U5RjLhlixE 2013/06/17(月) 22:42:26.18 ID:gN7EYzxpo
男「いやだって、友やばいんだってこれ。なんというか、硬すぎず軟らかすぎずで……」

友「いらねぇから、感想とか解説とか真にいらねぇでございますから」

男「膝枕を考えた人って純粋に凄いと思う」

友「お前は絶対に不純だけどな。あー、お前のだらしなく緩んだ顔に、熱湯をぶっかけたい」

男「僕は避けないよ。何故なら、僕が避けたら会長の膝にかかってしまうからね」

友「付き合いたての野郎らしく、順調にきもくなってるよなお前」

男「……」

友「……男?」

生徒会長「寝ちゃった」

友「気を失うように突然だな……。うがぁ、文句言いたりねぇ。鼻になんか突っ込んでやろうかな……」

女先輩「友、小学生みたいなことをするんじゃない」

友「女先輩も女先輩ですよ、なにこんなことやらせてんですか。これ完全に不純異性交遊ですよ。ワシントン条約に引っかかりますって」

女先輩「落ち着け、ワシントン条約は全くもって関係ないぞ。……この程度を不純だと言うつもりはないが、流石に私達以外の者に見られるわけにもいかない。この時期はここに人が頻繁に来るんだろうし、どうせ長くは続けられないさ」

友「ええー……だってこれ、ええー……羨ましい……」

130: ◆U5RjLhlixE 2013/06/17(月) 22:45:08.79 ID:gN7EYzxpo

女先輩「本音を隠さないやつだな。だけど、今くらいは見逃してやれ。……これを見ろ」

友「なんですか? ってこれ溜まってた仕事? かなりやってあるじゃないですか。女先輩、もうこんなにやったんですか?」

女先輩「男だよ、これをやったのは。昨日持って帰ってやってきたらしい」

友「これを、全部ですか!? だって、昨日俺達より遅く帰ったはずじゃ」

生徒会長「持って帰ってるの気づかなかった。迂闊……」

女先輩「男の目の下の隈、昨日より酷くなってるだろう?」

友「それは……はい、今朝会った時から気になってはいたんですが」

女先輩「それに免じて、ちょっとくらい君の言う不純異性交遊を許してやれ。というより、そうしないと会長ちゃんの罪悪感が減らない」

生徒会長「……これくらいは、させて欲しい」

友「……はぁ、わかりましたよ。この片づいた仕事を見た後にそれを聞いて、叩き起こす気はちょっとしかしません。文句は呑み込みますよ」

女先輩「ちょっとするのか」

友「だって、女の子の膝枕はだんすぃーの夢その一ですから。……さてと」

女先輩「残ってる仕事の一部を持ってどこ行くんだ?」

友「ここにいると胸焼けしそうなんで、生徒会室の前で仕事してます」

女先輩「……そうだね、そこで来た人間の対応をすれば、不純異性交遊の時間を稼げるだろう」

友「べ、べつにそんなんじゃないんだからね! 勘違いしないでよね! というわけで、俺じゃ対応できないことだったらノックします。扉を開けて大丈夫になったら声を返してください」

生徒会長「わかった。……ありがとう、友君」

131: ◆U5RjLhlixE 2013/06/17(月) 22:47:47.56 ID:gN7EYzxpo

友「たまには男にもご褒美があってもいいと思いますしね」

女先輩「……友、これを持って行け」

友「いつの間にか上がYシャツだけになってる女先輩の姿にドキッ! なんですか、ってカーディガン? やだ、女先輩の温もりが残ってる……」

女先輩「そのまま顔を埋めれば、その瞬間から君とは口を利かないからな」

友「……少し心の天秤が揺れましたが、無視されるのは嫌なのでわかりました。でも、折角貸してもらっても、体格差的にギリ着れないんですが……伸びちゃう……」

女先輩「膝にかけておくだけでも違うさ。そろそろ冷えてきたからな、廊下にいるなら何もないよりいいだろう」

友「なるほど、その辺のこと考えてませんでした。……ありがたいです、お借りします。んでは、そこにいるんで用があったら言って下さいね」

133: ◆U5RjLhlixE 2013/06/17(月) 22:50:19.66 ID:gN7EYzxpo

生徒会長「……友君、いい人」

女先輩「そうだね。軽薄なところがあるが、憎めないやつだ」

生徒会長「女ちゃんが私以外の人に親切なの始めて見た」

女先輩「人を基本的に冷血であるかのように言うのはやめてくれ。……その体勢でも書類のチェックくらいはできるだろう。それ系の仕事渡すよ。少しでも減らしたいだろう?」

生徒会長「うん、お願い」

女先輩「……もうすぐだね、文化祭」

生徒会長「うん」

女先輩「なんだか、去年より楽しみな気がするよ」

生徒会長「……私も、かな」

女先輩「去年はいろいろあったし、ね」

生徒会長「……うん」

女先輩「……」

生徒会長「……」

女先輩「……仕事をしようか」

生徒会長「うん……」

□■□■□■□

145: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 22:51:05.41 ID:1sWn3DSto

男「文化祭二日目!」

友「おわ、びっくりした。なんだよ急に」

男「今日は文化祭二日目なんだよ、最後の日なんだよ! 友、もうお昼だよ!?」

友「落ち着け。そんなもん、言われなくてもわかってるっての。俺だって昨日の学内者だけのやつに参加してるんだし」

男「まだ僕、会長とデートどころかまともに会話もできてないんだけど!」

友「え、マジで?」

男「当日になってからわかった問題が各所で発生してさ。その対応に追われる文化祭実行委員に巻き込まれて、昨日はてんてこ舞いだったんだよ!」

友「そんなデカイ声で言わなくても聞こえてるっての。それで会長さんと話せなかったのか?」

男「うん……」

146: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 22:53:15.23 ID:1sWn3DSto

友「それはまた……え、なに、それじゃあ今日もまずそうなのか?」

男「今日は多分大丈夫。昨日終わった後に文化祭実行委員達集めて、しっかりお説教しといたから」

友「ああ、あれ説教だったのか。一部始終見てたけどお前が半泣きだったからか、懇願にしか見えなかったわ」

男「それに当日発生した案件以外は事前準備のおかげで、問題なく対処できてるしね」

友「お前、問題が発生した時のために本格的なガイドライン作って、いろんなところに配ってたもんな。ごめん、あれは必死すぎて俺ちょっと笑った」

男「本来、うちの高校は文化祭時に、生徒会がそこまで忙しくなるものじゃないんだよ。それがやっと普通くらいになった。だから、今日はようやく時間ができてさ、会長ともこの後待ち合わせしてるんだよ」

友「おう、良かったじゃん」

147: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 22:54:18.45 ID:1sWn3DSto

男「……」

友「……」

男「友、僕をここに連れてくるとき、何て言ったけ?」

友「お前、生徒会の仕事にかまけて自分のクラスの出し物にあまり関わってないだろう。時間空いたなら顔出しに行こうぜ! だっけ」

男「うん。一秒でも早く会長の下へ行きたいけど、確かに少ししか手伝えなかったから、顔くらい出した方がいいと思ってた。だから、ついてきた」

友「まぁ、連れてきてなんだけどうちの高校は委員会とか部活で出し物やら仕事がある場合は、そっち優先でもいいみたいな雰囲気がある。だから、気にしなくてもいいんだけどな」

男「でも、やっぱり挨拶くらいはした方がいいと思ったんだよ」

友「おう、確かにそれも礼儀と言えば礼儀だわな」

男「……」

友「……」

男「友」

友「おう」

男「……なんで僕は教室に閉じ込められてるんでしょうか」

148: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 22:57:52.19 ID:1sWn3DSto

友「正確には教室の一角に作られた店の裏な」

「あの生徒会長と文化祭デートぉ? 行かせるわけねぇだろうが!」

「男もクラスの一員なんだから、思い出作りに仕事をしようぜ! ……それで、待ち合わせ場所はどこだ? 代わりに行ってきてやるよ」

「他人の不幸は……最高級の味だぁ!」

男「なんなのこれ。普段のみんなってこんな風ではなかったよね」

友「祭りのテンションってやつだろう。なんかうちのクラスの男子だけじゃなくて、他のクラスのやつもいるみたいだな。会長さん、ファン多かっただろうしなぁ」

男「こんな狭いところで取り囲まれるとどうしようもない……くそぅ」

友「ご丁寧に窓側までしっかり塞いでるしな」

男「会長が待ってるのに……」

友「……よし、男、俺に一計がある。本当は心情的にはあっち側だが、文化祭のためにお前がどれだけ身を粉にしてきたかわかってるつもりだからな。助けてやろう」

男「友……! やっぱりここぞというと時に頼りなるのは友だよ!」

友「よせやい照れるじゃねぇか」

149: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:00:26.30 ID:1sWn3DSto

「なんだ、友。男っちにつくのか?」

「奴が妬ましいと語り合った仲じゃないか!」

「……そう簡単に俺達が屈服すると思うなよ!」

友「まぁ、聞いてくれ。みんな知っての通り、最近の男はこの文化祭にかけてきた。そのせいで授業で指されてもおかしなことを言ってたし、寝てるんだか起きてるんだか判断し辛い状態を繰り返していた」

「それは……」

「知ってるけどさ……」

友「みんなも心当たりあるんだろう?」

「男のやつ、ちょっとやばかったよな。準備期間の最後ら辺はホラー映画の登場人物みたいになってたし」

「俺、教室から出ようとして扉にぶつかってる男を何度か目撃したわ……」

友「男は毎晩睡眠時間を削って、持ち帰った仕事をこなしていた。夜になるまで学校中を駆け巡っていたこともあった。――――そこまでしてようやく掴み取った時間なんだよ、男にとって今日の会長さんとのデートってのはさ」

「それを言われてしまうと……」

「俺達も男がしていた無理の片鱗を見てたからなぁ」

「おい、どうする……?」

男(凄い、集まってる男子達の間に動揺が広がり始めてる。これならなんとかなるか――――ん?)

150: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:02:43.08 ID:1sWn3DSto

友「そこでだ、俺からみんなに提案がある」

男「えっと、友、いつの間にウィッグなんて持ったの? というか、なんでそんなものがあるの?」

友「これはウィッグじゃなくてエクステンションだよ、男。被るんじゃなくて髪につけて長さ変えるやつ」

男「あ、そうなの。……いや、それはどっちでもいいよ。僕が聞きたいのはそれをここで取り出す意味であって」

友「みんな! ここは男の頑張りを評価して行かせよう! でも、それじゃあみんなの溜飲が下がらないと思う。そこでだ、男には仕事の一つを任せて、それで勘弁してやろうぜ!」

男「仕事……え? 何をするの? そういえば、僕、準備には少しは参加したものの、自分のクラスが何をするのか知らない……」

友「お前は生徒会の仕事のことばかり考えてたからな。ここ最近はそれ以外のことに関して、上の空だった。……その報いを受けるんだな」

男「え、報い?」

151: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:04:46.28 ID:1sWn3DSto

友「任せるのは宣伝だ。何、別に声高々に店のことを触れ回る必要はない。お前はただ、学校内を歩き回ればいい。……くくくっ」

男「すっごい邪悪な笑み浮かべてる!?」

「話は聞かせてもらったわ、友君!」

「あとは私達に任せてくれればいいよ」

「さぁー、男君。綺麗になろうねぇー」

男「え? え? 女子のみんないつから……それに綺麗になるってどういうって、なにそのヒラヒラした服!?」

友「男、選ぶんだな。一刻も早く会長さんの下へ行くために受け入れるか、それとも自分の尊厳を守るか、な」

男「友……まさか」

友「言っただろう? 俺は心情的にはあちら側だと」

男「もしかしてうちの出し物って……」

友「そう、――――だ」

□■□■□■□

152: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:06:46.07 ID:1sWn3DSto

生徒会長「……」

女先輩「そわそわしてるね、会長ちゃん」

生徒会長「……緊張してきた」

女先輩「私は体験したことないからわからないけど、やっぱりそういうものなんだね」

生徒会長「しっかり時間を取るって意味では、初デートになるから……。女ちゃん、私、変なところない?」

女先輩「大丈夫、ちゃんといつも通りのかわゆさだよ。いや、気合入れて身支度をしていた分、いつも以上かな」

生徒会長「……」

女先輩「本当だよ?」

生徒会長「……それは言われるとなんだか恥ずかしい」

女先輩「照れる君の姿はなかなか貴重だね」

生徒会長「もう。……ごめんね、女ちゃんも忙しいのにいてもらって」

女先輩「いいさ。本来なら恋人達の待ち合わせに、同位するのは野暮というものだけどね。今日は一般公開もしてるし、外部から人が来ているから」

生徒会長「男の人に誘われて、無難に断るのって難しい」

153: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:07:59.77 ID:1sWn3DSto

女先輩「君は親しい相手じゃないと、会話が端的だからね。まぁ、私も人のことを言えたものじゃないけれど。ナンパのあしらい方は会長ちゃんに比べれば、まだ心得ているかな」

生徒会長「もう五回も代わりに断ってくれた。ありがとう」

女先輩「いいさ。しかし、やっぱりと言うべきか会長ちゃんと一緒にいると、一人でいる時より来るのが多い気がするよ」

生徒会長「……あの人達は人を待ってますって言ったのに、なんで何度も話しかけてくるんだろう」

女先輩「私にもよくわからないけれど、それがナンパというものなんだろう。……会長ちゃんくらいかわゆければ、そういうのの断り方も自然と慣れてるものなんだけどね」

生徒会長「私、無愛想だし可愛くなんてない。外でいきなり話しかけれた経験あんまりないし」

女先輩「謙遜は美徳だけど、あんまりそういうこと言うと男が悲しむよ。あと、君がナンパされた経験が少ないのは、あんまり外に行かないからだと思うよ」

生徒会長「……」

女先輩「あー、ほらほら、難しい顔しない。これからデートなんだから、眉間に皺が残ったらどうするんだい」

生徒会長「……うん」

154: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:09:42.94 ID:1sWn3DSto

女先輩「変なこと言って悪かったよ。……それにしても、男のやつ遅いね」

生徒会長「待ち合わせの時間まであと十分ある」

女先輩「それでもあの張りきりようだったから、一時間前に来てもおかしくはないと思っていたんだけどね」

生徒会長「まさか、何かあったのかな……」

女先輩「普通の高校の文化祭で一体何が起こると言うんだ。ま、彼は顔が広いみたいだから、誰かしらに捕まってたりするんだろう」

生徒会長「それは、男君ならありえるかも知れない」

女先輩「だろう? ……そうだ、待ってる間にまたナンパが来たら、今度は会長ちゃんが対応してみようか。まずくなりそうだったら私が助けるからさ」

生徒会長「急になに?」

女先輩「ふとひらめいてね。これから会長ちゃん達は、外で待ち合わせをする機会が増えるだろう? その時に私はいないだろうから、今の内に練習しておけばいいと思ってね」

生徒会長「待ち合わせが増える?」

女先輩「文化祭が終わった後に上手いこと役員が入ったら、デートをする時間が取れるようになるだろう?」

生徒会長「あ……うん」

女先輩「男の性格を考えれば先にいるようにしてそうだが、慣れておくにこしたことはないだろう」

155: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:11:54.39 ID:1sWn3DSto

生徒会長「……でも、もう五回も断ったし、そうそう来ないんじゃ?」

女先輩「二度あることは三度あるんだ。五度あることは何度もある、だよ。さっきからこちらをじろじろ見てる輩もいるし、いつ来てもおかしくない状況だ。男心を弄ぶようであれだけど、こちらとしては迷惑ではあるんだからいいだろうさ」

生徒会長「そうかな……」

女先輩「誘いに対して返事をするだけだよ。悪いことをするわけではないんだから、気にすることはないさ」

生徒会長「……わかった」

?「……あの」

女先輩「さっそく来たね。さ、会長ちゃん……ん?」

生徒会長「……あれ?」

?「……」

女先輩「やぁ、どうしたのかな。会長ちゃんに用事かな? そういう格好をしてるということは、うちの生徒だよね。可愛いメイド服だ、とても似合ってるよ」

156: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:13:05.87 ID:1sWn3DSto

女子生徒「……ぅあ」

女先輩「どうしたのかな、耳まで真っ赤だけど。恥ずかしがり屋さんなのかな? 大丈夫、ちゃんと待つからゆっくりでいいよ」

生徒会長「……んー?」

女子生徒「えっと、その……」

女先輩「っと、周りが騒がしいから、もう少し声を出せるかな。その声量だと悪いけど聞こえないんだ」

生徒会長「……」

女先輩「ほら、会長ちゃん。あんまり見つめるとこの子も話し辛いだろう?」

生徒会長「……」

女子生徒「……ぇぁ」

女先輩「会長ちゃん、一体どうしたと――――」

生徒会長「男君?」

女先輩「どうしてここで男が出てくるんだ。彼の姿は何処にも見当たらないじゃ……うん?」

女子生徒(?)「……穴があったら入りたい」

女先輩「……んん!? その声は男……えっ……はぁ?」

生徒会長「可愛い」

男「あー、逃げ出したくなってきた……」

□■□■□■□

157: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:14:34.91 ID:1sWn3DSto

女先輩「男、はしゃいでいたとはいえ、初デートにその格好は……」

男「本気で引くのやめてください。望んだことじゃないですから、気合入れた結果じゃないですからこれ」

女先輩「黒の布地を基調として、白いレースのフリルで全体の印象をまとめているのか。ふんわりとしていて、女の子らしさを前面に出すメイド服だね。とても似合ってるよ」

男「笑顔で言うから褒められてるのかと思ったら、よく考えたら皮肉だった」

女先輩「くははっ、布地が多いのは少しでも体格を誤魔化すためか。なるほど、よく考えられてるね」

生徒会長「可愛い」

男「どうしてだろう。会長がぺたぺた触ってくるの普段なら超喜ぶのに、今は全然心が震えない」

女先輩「それは心も女の子になりかけてるということじゃないか?」

男「そん! ――――なことないって言い切れない自分が怖いです。もっと自分を保つようにしっかり意識がけよう……」

158: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:17:15.45 ID:1sWn3DSto

女先輩「いやはや素質はあると思っていたけど、まさかここまでのものになるとは。君は男にしては声も高い方だし、声音作って小さな声で喋ればすぐに性別は分からないだろうね」

男「合唱コンではテノール間違いなしって言われたことあります……」

女先輩「まつ毛はつけてるのかい?」

男「自前です。拷問器具みたいものを使われてこうなってます」

女先輩「君の目にはビューラーが拷問器具に映るのか。……ということはやっぱり素材が良いわけか。その道のトップを狙ってみるのもありなんじゃないかい?」

男「なしですから。生き方は人それぞれだと思ってますけど、少なくとも僕はそっちの道にいくつもりはありません」

生徒会長「可愛い」

男「会長、さっきからずっと褒めてくれてますね。でもそれは傷口に岩塩を塊で捻じ込むのと同じ行為です」

女先輩「ははっ、会長ちゃんはよっぽど気に入ったみたいだね。もうずっとその格好でいればいんじゃないかな」

男「この人、自分は関係ないと思って適当に……!」

生徒会長「……あり」

男「なしです!」

159: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:19:13.98 ID:1sWn3DSto

女先輩「ほらほら、そんなに大きな声を出したら、場所を移した意味がなくなるよ?」

男「はっ! 人目は……よし、何とか集まってないな」

女先輩「その姿でびくびくされると、こう……保護欲が沸いてくるね」

男「新しいおもちゃを見つけた子どもみたいな顔してよく言いますよ。……なんか、遊ばれてるような気がしてきました」

女先輩「そんなことないさ、男ちゃん」

男「思いっきりからかってるじゃないですか……」

生徒会長「どうしてその格好?」

男「最初から最後まで、全ては友のやつの策略だったんです。この格好に着替えて店の宣伝をするって言わないと、抜け出せないようになってまして……」

女先輩「ああ、やっぱり友の仕業か。それ全部彼が用意したのかい?」

男「ええ、クラスの女子達の助言を基にメイド服から始まり、エクステ、花の刺繍が入ったアームカバー、ストッキングにロングブーツ……。僕の髪色、体や足の大きさまで考慮した上で用意したそうですよ」

女先輩「徹底してるな……」

男「まぁ、男同士ですから、あんまりパーソナルなデータとか友に隠してませんしね」

160: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:20:56.62 ID:1sWn3DSto

生徒会長「男君、お人形さんみたい」

男「協力した女子達はある意味そういう感覚だったっぽいです。着せ替え人形というか……」

女先輩「元から中性的だったとはいえ、一応は一目で少年だと分かった君の顔立ち。それを完全に少女へと変貌させてるメイクは?」

男「クラスにそっち系の専門学校への進学を考えてる人がいまして」

女先輩「この完成度を見るとその子の本気度が窺えるね」

男「終わった後、最高傑作だと言った彼女の顔はやりきった職人のそれでしたよ……」

女先輩「実際凄くいい出来だしね。今の君は女の子にしか見えないよ」

男「誤解を恐れずに言えば、現代のお化粧の補正力ってやばいって思いましたもの」

女先輩「否定しきれないものがあるね。それが全てとは言わないけど」

生徒会長「男君…………可愛い」

男「じっくり見てから改めて言うのやめてください! というか、会長としては僕が……その、彼氏がこんな格好なのはどうなんですか?」

生徒会長「あり」

男「即答だった……」

161: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:22:20.17 ID:1sWn3DSto

女先輩「ギャップが楽しいんだろうさ。ところで男」

男「なんでしょうか」

女先輩「撮っていいかい?」

男「……どうぞ」

女先輩「お、嫌がらないんだね。やっぱり何だかんだ気に入ってる?」

男「すでに記者会見かってくらい、クラスメイト達に散々撮られてるので。どうせここで断っても友あたりから流れるでしょうし」

女先輩「なんだ、諦めの境地か。つまらん」

男「でも撮るんですね。何も面白みもないのに、って会長も撮るんですね……」

生徒会長「あとで待ち受け画面の設定方法を教えて欲しい」

男「機会音痴の克服に前向きなのはいいことですが、この流れでそれはとても気が進まない!」

女先輩「教えてあげなよ。彼氏の写メを待ち受けになんて、いじらしいじゃないか。さて……」

男「これが通常時の僕だったら顔面を弛緩させるんですけどね……。どうしました?」

女先輩「私の役目は終わったから、本来退散する頃合なんだけどね。これからどうするのかと思って」

男「……この格好ですからね。できれば人の目につかない場所で過ごしたいんですが」

生徒会長「……デート、なし?」

男「この寂しさと残念さをブレンドした表情を見て、中止を言えるような強い心を僕は持ってないです」

□■□■□■□

162: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:24:33.72 ID:1sWn3DSto

男「あー……」

生徒会長「男君?」

男「いやぁ、女先輩も自分のクラスに戻って、会長と二人っきりになったじゃないですか。ついにデートが始まったんだなぁと思いまして。……こんな恰好ですが」

生徒会長「緊張?」

男「こういうことを伝えてしまうのも変な話ですが、まさしくそうです。念願のデートらしいデートですからね」

生徒会長「本当に楽しみにしてくれてたんだ」

男「もちろんですとも。そのために今日まで学校中を駆けずり回っていたわけですし」

生徒会長「……無理してたのは困ったけど、頑張ってくれたのは嬉しい」

男「その会長のはにかんだ微笑が見れただけで、今までの全てが報われました!」

生徒会長「……もう」

男「ははっ、すみません。……さてと」

生徒会長「……? 急に落ち込んでどうしたの」

男「落ち込んでるっていうか、気が重いといいますか……。今はお店などがない棟の方にいるので、人が少ないじゃないですか」

生徒会長「うん」

163: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:26:30.19 ID:1sWn3DSto

男「でも、デートをするには当然ながら、人の多い店がある方に行かなきゃいけないわけで」

生徒会長「格好が気になるの?」

男「この状態を受け入れるには、まだまだ時間が必要そうです。……けど、デート中止も嫌だし、覚悟を決めるしかないんですよね」

生徒会長「どうしてその格好が気になるの?」

男「どうしてってそりゃ…………具体的に聞かれると困りますけど、えっと、例えばこんな格好をしてるって知り合いにばれたらから、かわれたりするだろうなぁ、とか」

生徒会長「大丈夫」

男「何がです?」

生徒会長「今の男君は女の子にしか見えない。だから、ばれない」

男「……握りこぶしつきの力説ありがとうございます。違う意味で落ち込みました。……はぁ、友やクラスメイト達には口止めしたけど、どうせ後日には知れ渡るだろうし、結局僕の気持ちの問題でしたかないのか」

生徒会長「無理なら、無理と言ってくれればいい」

164: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:27:28.10 ID:1sWn3DSto

男「……いえ、腹をくくりました。もう、うじうじしません。はやし立てられるのは面倒なので、今日は極力ばれないようにしながらデートします! 明日のことは明日考えます!」

生徒会長「明日から頑張る」

男「それはちょっと違いますが、もう今はデートを楽しむことだけを考えます! いきましょう!」

生徒会長「おー」

男「何処か行きたいところはありますか?」

生徒会長「お昼、食べた?」

男「まだですね。会長は食べましたか?」

生徒会長「私もまだ。なら、最初はご飯を食べよう」

男「賛成です。えっと、飲食関係は校庭に集められた屋台と、貸し出された教室で開いている模擬店などになりますね」

生徒会長「迷う」

男「折角ですからいろいろ食べられるように、屋台巡りはどうでしょうか?」

生徒会長「賛成」

男「じゃ、決定ですね。それでは校庭へ行きましょう!」

生徒会長「ごー」

□■□■□■□

165: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:29:22.41 ID:1sWn3DSto

「らっしゃいらっしゃい! 的当て一回百円! 豪華景品もありますよ!」

「あっちで焼きとうもろこしやってます! おいしーですよ!」

「手品同好会です! 十三時から野外ステージで手品ショーをやるんで、是非見に来てください!」

「移動販売でーす! 食後にクレープは何てどうですかー? 甘くて美味しいですよー?」

男「なんか、視線を感じるような……」

生徒会長「それは男君がその格好だから」

男「ですよねー。慣れるようにがんば……っていいんだろうか……。慣れていいのか?」

生徒会長「男君?」

男「や、なんでもないです。しっかし、野外ステージか。スケジュール組むの大変だったなぁ……」

生徒会長「みんな凄いやる気だった」

男「参加者がたくさんいるのはいいことなんですけどね。体育館の発表会場の方も希望者が多くて頭を悩ませましたよ」

生徒会長「体育館でやりたいって人、外でやりたいって人もいたもんね」

男「最終的にはうまく調整できて、本当に良かったです。さてと、何から食べましょうか」

生徒会長「食べ物屋さんを順番に回ってみたい」

男「気分で買えるのもお祭りの醍醐味ですもんね。そうしましょう」

166: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:31:33.92 ID:1sWn3DSto

生徒会長「一番近いのは……焼きとうもろこし屋さん」

男「こういう時、計画を立てる側だと何処に何があるか把握していて楽ですよね」

生徒会長「パンフレットいらず」

男「鞄とかないと結構かさ張りますからね。しっかし、お昼だからか流石に人がいますね。一般の方も来てることあって、凄い混雑してるようです」

生徒会長「……男君」

男「なん……」

生徒会長「どうして真顔になるの?」

男「……会長がいきなり手を繋いだからです」

生徒会長「だって、迷子になっちゃう」

男「確かにこれは非常に合理的ですね!」

生徒会長「……手を繋ぐのは嫌い?」

男「大好きです!」

生徒会長「じゃあなんで?」

男「……まだ慣れなくて」

生徒会長「もう何度も繋いでるのに」

男「手汗とか大丈夫かなとか、いろいろ考えてなんか緊張しちゃうんですよ……。会長はすっかり平常心ですね」

生徒会長「そんなことない。これでもドキドキしてる」

男「それにしてはさらっと手を繋ぎますよね」

167: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:32:36.17 ID:1sWn3DSto

生徒会長「緊張する以上に、手を繋ぐの好きだから」

男「……え?」

生徒会長「私、男君の手、好き。握ってると安心する」

男「……」

生徒会長「男君、なんで顔赤いの?」

男「……会長ってジゴロの才能ありますよ。いや、女性の場合はジゴレットだっけ」

生徒会長「よくわからないけど、これは男君が相手だから言えること」

男「……うわぁ」

生徒会長「どうしてそっぽ向くの?」

男「すみません、今最高に表情がだらしなくなってると思うので、しばらくこうさせてください」

生徒会長「?」

男「デート開始してすぐでこれかぁ。保てるかなぁ、僕の理性」

生徒会長「男君」

男「なんでしょ?」

生徒会長「腕組んでみたい」

男「理性がぶっ飛ぶんで、今だけは手を繋ぐでお願いします」

168: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:33:53.26 ID:1sWn3DSto

男(会長と手を繋いで歩く! 僕達は付き合っていることを隠しているわけではない。けど、わざわざ言いふらすことでもないし、二人で学校にいる時は生徒会室で仕事をしている場合が多い。よって、僕達の関係を知っている人は実の所少ない)

男(だから、今回のデートは二人の関係のお披露目となる機会でもあった。器の小さい考えかもだけど、そうすれば会長に寄って来る人もいなくなるとか思ってた)

男(それなのに周りの反応は――――)

「おい、見ろよあの子達」

「うわ、かわ……マジで可愛いな」

「お前どっち? 俺はあの制服着た天使がタイプ」

「俺はあっちのボーイッシュな子! メイド服とちょっとアンバランスな感じがたまらん!」

「女の子通しが手を繋ぐ……大変良いと思います」

男(どう聞いても仲の良い女の子が二人いるとしか思われてないっていう……)

169: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:35:29.46 ID:1sWn3DSto

生徒会長「男君、ぼっとーとしてる」

男「あ、すみません、何でもないです」

男(ここで周りの視線が気になるって言ったら、会長気にするだろうし黙っておこう)

生徒会長「周りの視線、気になる?」

男「……友、本当のエスパーはここにいたよ」

生徒会長「特別目立つことはしてないのにね」

男「非常に残念なことに僕がこの格好ですからね。日常じゃ見る機会が少ないものですし、自然と目を引くんじゃないでしょうか」

生徒会長「それは、そうかも知れない」

男「それに……」

生徒会長「それに?」

男「何よりも会長が可愛いからでひゅよ!」

生徒会長「……でひゅよ」

男「……やっぱり、キザ路線は自分に合わないみたいです」

生徒会長「無理するから。……ふふっ」

男(嬉しそう。でも、これこそキザっぽいセリフだけど、会長が可愛いから視線を集めてるのは事実なんだよなぁ)

170: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:36:55.52 ID:1sWn3DSto

生徒会長「見えた、あれが焼きとうもろこし屋さん」

男「あ、本当ですね。うはー、いい匂い」

生徒会長「買う?」

男「ちょうど他の客が途切れたところみたいですね。一番最初ですし、買っちゃいましょうか」

生徒会長「うん」

男「じゃあ、買いましょう。あーっと、会長すみません、お店の人に注文するのお願いしてもいいですか?」

生徒会長「いいけど、どうして?」

男「格好は……まぁともかく、声でばれる可能性があるので。誤魔化せるかもしれませんが、危ない橋は渡らない方がいいかと」

生徒会長「……なるほど、わかった」

男「不甲斐なくて申し訳ないです」

生徒会長「任せて」

男「お金はこれで」

生徒会長「これ、二本分の金額じゃ……」

男「初デートの最初の買い物くらい、格好つけさせて下さい。もっとも、金額的に見栄も張れませんが」

生徒会長「……ふふっ、男の子だね。それじゃあ、一回目だけはごちそうになります」

男「……あれ、凄い大人な対応をされた気がする。会長はきっちりしてるので、正直こういうの断るかと思ってたんですが」

生徒会長「お姉さんですから」

男(そう言ってドヤ顔をするところが子どもっぽい、と言ったら怒られるだろうか)

171: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:38:04.76 ID:1sWn3DSto

「いらっしゃーい! あれ、会長さんだ! ねね、元気してるー?」

生徒会長「元気してます。お店の調子はどうですか?」

「おかげさまで繁盛してますよん。え、なになに? 見回りか何か?」

生徒会長「今は仕事中ではないです。えっと……彼女と普通に文化祭を楽しんでるところです」

「彼女って……きゃー! 可愛い! え? え? その子、うちの生徒じゃないよね?」

生徒会長「よく、分かりましたね」

「だって、こんな可愛い子がうちにいたら学校中に知れ渡ってるよぉー」

男(あぁ、超複雑な気分)

生徒会長「……確かにそうかも」

男(なんでちょっと誇らしげなんですか……)

「あれ、でも、うちの生徒じゃなかったから、一般のお客さんだよね? なんでそんな格好してるの? 可愛いけどさ」

男(あ、そういうこと考えてなかった……まずい)

172: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:39:28.01 ID:1sWn3DSto

生徒会長「この子、男美ちゃんは私の中学の時の友達で、こういう格好をするのが好きなんです」

男「ちょっ」

生徒会長「それで機会があればこういう格好をするんです」

「あー、なるほど、コスプレ趣味ってやつかー。確かにお祭りとかじゃないと、そういう格好できないもんねー」

生徒会長「はい、だから今日は久々に会うついでに、日頃の鬱憤を爆発させています」

「あはははっ、納得納得! いいねー、男美ちゃんだっけ? とっても似合ってるよ!」

男「……うぅ」

「あれ、俯いちゃった」

生徒会長「この子はとても照れ屋の恥ずかしがり屋さんなので」

「コスプレが趣味なのに? へー、面白い子だね。って、ごめん、長々と話しちゃった。焼きとうもろこし買いに来てくれたんだよね?」

生徒会長「二本お願いします」

「はーい、ちょっと待っててねん。取ってくるから」

男「……会長」

生徒会長「なに?」

男「なんですか、コスプレ趣味って」

生徒会長「女ちゃんがいざという時はそう説明しろって」

男「あの人か……! いつの間に……」

173: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:41:08.11 ID:1sWn3DSto

生徒会長「これでばっちり」

男「確かに助かりましたけど…………いや、助かってないかも。むしろ、逆のような」

生徒会長「逆?」

男「後日には僕がこの格好してたと知られるのは明らかなわけですから、そこにコスプレが趣味という情報が入り込むと……」

生徒会長「……あ」

男「実はコスプレ、しかも女装も加えてが趣味らしい副会長の完成、ですよ」

生徒会長「……」

男「……」

生徒会長「男君」

男「はい」

生徒会長「明日のことは明日考える」

男「くそぅ、女先輩め、絶対分かってて会長に教えたに違いない!」

174: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:41:51.99 ID:1sWn3DSto

「お待たせしましたー! ごめんね、焼いてるところちょっと遠いからさ! って、どうかした?」

生徒会長「なんでもないです。お金これでいいですか?」

「……うーん、半分でいいよ」

生徒会長「え?」

「ここにいない副会長君もそうだけど、生徒会には予算の相談とかでお世話になったからね。サービスしちゃう!」

男「……」

生徒会長「……でも」

「いいのいいの! その代わりって言うのはなんだけど、また食べたくなったら買いに来てよ」

生徒会長「……分かりました。ご厚意感謝します。他の方にもできたら宣伝しておきますね」

「流石会長さん、分かってる! よろしく! 愛してるぜ!」

生徒会長「はい。それでは、男美ちゃん行きましょう」

男「……はい」

「毎度ありがとうございましたー!」

□■□■□■□

175: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:42:39.88 ID:1sWn3DSto

生徒会長「たこ焼き」

男「ですね。僕、久々に食べます」

生徒会長「……」

男「会長?」

生徒会長「これは、どう見ても……」

男「はい」

生徒会長「熱い」

男「なんでちょっと驚いてるんですか。当たり前じゃないですか」

生徒会長「食べられない……」

男「あー、会長は猫舌ですもんね」

生徒会長「男君、パス」

男「キャッチ。って、いらないんですか?」

生徒会長「残ってたら食べる」

男「取っておけばいいんですね……」

生徒会長「……」

男「あつつ、はふ……はふ……」

生徒会長「……」

男「おぉ、思っていたより美味しい」

生徒会長「……」

男「これは学生レベルだとも思って侮ってたなぁ」

176: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:43:40.40 ID:1sWn3DSto

生徒会長「そんなに美味しい?」

男「え?」

生徒会長「男君、凄く嬉しそうに食べてる」

男「そうでした? まぁでも、確かに美味しいです」

生徒会長「……一個」

男「食べます? けど、まだまだ熱々ですけど……無理しないほうがいいんじゃないですか?」

生徒会長「……」

男(雛鳥の如く口開けて待ってる……。飲み物もあるし、大丈夫かな?)

男「本当に無理しないで下さいね?」

生徒会長「……」

男(頷いてるし、いっか)

男「それじゃあ、ふー、ふー……はい、あーん」

生徒会長「ぁー…………っ!」

男「今びくりと身体が震えましたが大丈夫なんですか!?」

生徒会長「……らい、ひょう……ふ」

男「全然大丈夫そうにないんですが。早く飲み物を」

生徒会長「……んぐ」

男「いや、んぐって」

生徒会長「食べた」

男「どうしてそれでドヤ顔。どうでした?」

生徒会長「美味しかった」

男「それは作った人達も浮かばれますね。もう一個食べます?」

生徒会長「……後で」

男(やっぱり無理してたのか)

□■□■□■□

177: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:46:35.19 ID:1sWn3DSto

生徒会長「リンゴ飴」

男「こうやって切ってあると食べやすくていいですね。本場とは少し違ってしまうのかも知れませんが」

生徒会長「おいひい」

男「会長、咥えながら歩いたら危ないですよ」

生徒会長「……ごめんなさい」

男「串がついてますからね。転んだらどうなるか想像するだけで……」

生徒会長「……ぞっとする」

男「気をつけて下さいね?」

生徒会長「はーい」

男(……会長、いつもより子どもっぽいな。それだけ、はしゃいでるってことか)

生徒会長「あ、男君。射的屋さんがある」

男「おー、文化祭でこういうお店って珍しいですね。えーっと、番号の書いてある木の板を落として、その番号と同じ景品がもらえる仕組みらしいですね。景品の番号は分からないみたいですし、くじ引きの要素もあるみたいです」

生徒会長「取ってきた」

男「はやっ! お店の人が目を丸くしてこっちを見てるんですが!」

生徒会長「鉄砲の先を目標に真っ直ぐ向けるだけ。動かないのだから簡単」

男「なに貫禄のあるスナイパーみたいなことを言ってるんですか」

生徒会長「私の背後に立たないで」

男「漫画なんて読まないでしょうに。誰の影響を受けたんだか」

生徒会長「男君が前に言っていたことの真似」

男「……」

178: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:47:24.30 ID:1sWn3DSto

生徒会長「景品は……ブレスレット」

男「レザーのですね。質素ですけど、男女どちらでもつけられる感じでいいじゃないですか」

生徒会長「うん」

男「折角ですからつけてみたらどうですか?」

生徒会長「……」

男「会長?」

生徒会長「手を出して」

男「え? はいどうぞって、なんで僕につけるんですか?」

生徒会長「……てけてけてけ、てーん。男君は女の子度が二上がった」

男「アームガードの上からつけるのはありなんですかねこれ。というか、ゲームもやらないでしょうに」

生徒会長「男君の真似」

男「……」

□■□■□■□

179: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:48:22.00 ID:1sWn3DSto

生徒会長「わたあめ」

男「たこ焼き久々とか言ってましたけど、これこそ久々に食べます。小学校以来かなぁ」

生徒会長「嫌い?」

男「そんなことはないんですけどね。ただちょっと……」

生徒会長「ちょっと?」

男「食べ辛いじゃないですか。僕の食べ方が悪いだけかも知れませんが、どうしてもベタベタしてしまうので」

生徒会長「なるほど」

男「会長は上手な食べ方を知ってますか?」

生徒会長「任せて」

男「お、自信ありげ」

生徒会長「まず、手で千切ります」

男「はい」

生徒会長「食べます」

男「……以上ですか?」

生徒会長「以上です」

男「指先にわたあめがくっついてますが」

生徒会長「それは……舐めます」

男「行儀が悪くありませんか?」

生徒会長「……上品に舐めます」

男「どうして目を逸らしているんですか?」

生徒会長「……男君は意地悪だと思います」

男「ごめんなさい」

生徒会長「……なんで見てるの?」

男「いやなんか、指先舐めてる仕草が猫っぽいなーって」

生徒会長「……見ない」

男「あたっ」

□■□■□■□

180: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:50:17.28 ID:1sWn3DSto

男「食べましたねー」

生徒会長「焼きとうもろこし、たこ焼き、焼きそば、いか焼き、焼き鳥、ポテト、フランクフルト、リンゴ飴、わたあめ、たい焼き、チョコバナナ……」

男「あとはクレープでしたっけ。半分こにできるのは二人で分け合ったとはいえ、結構食べれましたね」

生徒会長「これで全部回りきってない」

男「教室で模擬店やりながら屋台も出してるクラスありますからね。しかも、うちは部活も盛んな上に同好会の参加も認めている関係上、かなりの数になりますから」

生徒会長「校庭の場所割を担当して、男君かなり大変そうだった」

男「ある意味、今回の文化祭準備の中で一番大変だったかも知れないですね。稼いだお金は部活や同好会の場合はそのまま部費に、クラスの場合は一定額の図書券になるシステムなせいか、意欲的なところばかりでしたから。場所に対しての苦情とか、仲の悪い部の近くは嫌だとかいろいろ話が来たりして」

生徒会長「走り回ってた理由の大部分になるんだっけ。……でも、今日回ってみた限りだと、上手くいってるみたい」

男「そうみたいですね。昨日は別件で忙しくて確認とれてなかったので、少し気がかりだったのですが……これで一安心です」

181: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:52:09.25 ID:1sWn3DSto

生徒会長「みんな、生徒会に……男君に感謝してた」

男「行く先々でサービスやらおまけしてもらいましたからね。みんながそんな風に思ってくれたなんて、ちょとびっくりしました」

生徒会長「男君のこと、みんなが褒めてた」

男「会長も褒められてたじゃないですか。……けど、まぁ、正直嬉しかったですね」

生徒会長「照れてる」

男「はははっ、これで男美についていろんな所で説明してしまった件がなければ、よかったよかったで終わるのになぁ……」

生徒会長「結局、女ちゃんが考えてくれた説明で通しちゃったね」

男「外部から来てる設定でこの格好をしている理由を考えると、実は妥当だったりしたのが真に悔しいです」

生徒会長「他の説明を考えてる暇なかった」

男「通りすがりに話しかけられたりしましたからね。次の店に行くまでに考えればいい、というのがそもそも甘かった……」

生徒会長「そのままずるずると同じ説明をして……」

男「最終的には……」

『可愛い会長さんが可愛い友達を連れて来てると聞いたので来ました!』

『食べさせ合いっこ……百合の花が咲いて見える……』

男「とかよく分からない輩が来たくらいですからね」

生徒会長「すっかり噂に」

182: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:54:10.03 ID:1sWn3DSto

男「今は何処でも気軽にネットに繋がれる時代ですからね。情報の伝達は早いってこと分かってたのに、どうして僕はそこをちゃんと考えなかったんだろう……」

生徒会長「そうなの?」

男「そうなんですよ。さっき少し見てみたら、文化祭実行委員会の名義で作ったとあるSNSのアカウントに囁いてありました」

生徒会長「囁く?」

男「あー、そっか会長は機械音痴だから知らないのか。えっと、ようはネット世界に誰でも好きに大小様々どんな情報でも張り出せる掲示板があるんですよ」

生徒会長「掲示板」

男「はい。それで、文化祭実行員会が文化祭の情報をリアルタイムで集められるように、専用のアカウントを作ったみたいなんです。学校非公式ですけど。そこに僕達のことが囁く……張り出されてるんですよ」

生徒会長「そうなんだ……」

183: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:56:06.02 ID:1sWn3DSto

男「中には写真も……これは多分撮っていいか聞かれて承諾したやつですけど、張り出されちゃってるみたいですね」

生徒会長「それは、聞いてない」

男「ですね、許可なくやってるようです。一応、文化祭参加者にしか見れないように工夫してあるみたいですが、心許ないので文化祭実行委員会の人に連絡して、こういうことはなくなるように対策をお願いしておきました」

生徒会長「……そう」

男「風紀の面から考えても不味い流れになりかねませんしね」

生徒会長「……」

男「まぁ、会長がそんな顔をしてしまうのは無理もないことです。ですが、こういうのは良い面も悪い面もあるので、勘弁しておきましょう。まだ、大きな被害にあったわけではありませんし」

生徒会長「今すぐにやめてもらうことは?」

男「下手に強い行動を起こすと、かえって面倒なことに繋がる可能性があるんです。利用している人数も結構いるみたいですので」

生徒会長「……難しいんだね」

男「情報を伝達させる手段としては優れたものなんですけどね。要は使いようです。文化祭が終わったら無許可で張った、特定の対象を映した写真などに関して対応するように、個人としても生徒会としても伝えておきます」

生徒会長「ん……」

184: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:57:43.89 ID:1sWn3DSto

男「……ちょと暗い話になっちゃいましたね。気を取り直して、文化祭を楽しみましょう! お腹も膨れたし、次は遊びましょう!」

生徒会長「……うん、そうしよう。次は何処に行く?」

男「屋台の遊ぶ系は食べる合間にやっちゃいましたからね。次は……ん?」

生徒会長「なに?」

男「いえ……」

男(なんか視線を感じるような……。やっぱり僕達二人のことが知れ渡ってるのかな? この格好だからしょうがない部分もあるけど、監視されてるみたいな嫌な感覚だ。けど、さっきの話が終わったばかりだし、今出す話題でもないかな。もう気にしないようにしよう……)

生徒会長「もしかして、お腹痛い?」

男「あ、いえいえ、大丈夫ですよ。ささ、次は校舎内を巡りましょう」

生徒会長「……? 校内に行くのは賛成」

男「では、行きましょう!」

生徒会長「おー」

□■□■□■□

185: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:58:24.89 ID:1sWn3DSto

男「迷路?」

生徒会長「うん、二年生がやってるところ」

男「嫌ってわけではないんですけど、そういうのって子ども向けだったりすんじゃないんですか?」

生徒会長「普通はそうだと思う。でも、女ちゃんが教えてくれたんだけど二人組向けがあるみたい」

男「迷路が二人組向け? それはなんだか気になりますね」

生徒会長「うん。場所は特別教室」

男「ああ、あの合同授業で使う二クラス入る教室ですか。確かに迷路なら広さが必要ですもんね。それじゃ、行ってみましょうか」

186: ◆U5RjLhlixE 2013/06/24(月) 23:59:58.56 ID:1sWn3DSto

「恋する男女には愛の試練! 熱い友情で結ばれた奴らは以心伝心だよね? 二人は障害を乗り越えて更に関係を強めていく! 絆の迷宮にようこそ!」

男「うわぁ……」

「こらこら、そんな低い声で唸らない。可愛いのが台無しだぞぅ?」

男(うっかり声音を誤魔化したり、小声で言うでもなく素で出てしまった……)

生徒会長「絆の迷宮?」

「あれ、生徒会長じゃない。ここに来たということはついに副会長の子とくっついたの?」

男「……っ!」

「って、彼の姿がないわね。代わりに女の子と手なんか繋いじゃって」

男(あ、ばれたのかと思ったけど違ったのか)

「……まさか、そういうことなの!?」

生徒会長「そういうこと?」

「良い、良いわ。非常に、良い。甘酸っぱい恋愛を続け、くっつくのも時間の問題な二人の間に現れた刺客……言わば恋の刺客! 分かる、分かるわ生徒会長。副会長と彼女との間で揺れる恋心。禁忌を理由に彼女を否定してしまうことが許せないのね? だからこそ、自分の気持ちを確かめるために今日という日に、彼ではなく彼女と共に行動している…………切ないわね」

男(辛うじて三角関係を言いたいことは分かるけど、その他は何を言ってるのかさっぱり分からない……!)

187: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 00:00:48.89 ID:Gz0DhWwFo

生徒会長「……私は、彼も彼女も蔑ろにするつもりはないです」

「……え?」

生徒会長「私にとって、どちらも同じですから」

「そんな、あなたは一緒にして大事にするというの? それは、多くの人が許さないことよ?」

生徒会長「分かっています。今のおと……彼女のことが人によっては憚ることだって。でも、私は彼も、そして彼女のことも同じだと思ってますから」

「そんなの傲慢――――いえ、そのことを含めた全てを理解したうえで、それでも茨の道を進むというの?」

生徒会長「はい」

「……迷いがないのね。あなた、素敵な目をしてる。良いわ、それなら行ってくればいい。この絆の迷宮であなた達自身を試してみなさい」

生徒会長「お願いします」

「――――生徒会長。いろんな人があなた達の関係を否定しても、私はあなた達の関係を応援できる気がする。あなたの目を見たせいか、今はそんな気分だわ」

生徒会長「ありがとうございます」

男(僕は今、何を目撃したんだろう……)

188: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 00:01:50.19 ID:Gz0DhWwFo

生徒会長「これが迷路」

男「会長、さっきのやり取りって……」

生徒会長「私達のこと、応援してくれるって。……嬉しい」

男「えっと、会長は単純に僕との関係を話したつもりでしょうけど、あっちはそうとは思ってないような…………まぁいいやもう、誰も不幸になってないし」

生徒会長「?」

男「気にしないでください。えーと、本来は入口でここからどうすればいいか説明されたんでしょうけど、勢いで入れられちゃったからよく分かんないですね。ベニヤ板で作られた通路……そういえば、ベニヤ板を大量に欲しがってたクラスがあったなぁ。ここだったのかな?」

「ようこそ、絆を試す挑戦者達よ!」

男「なんか変な人きた!」

「私は君達を導く絆の案内者、仏の学生!」

男「学生服に大仏のマスク……シュールだ」

189: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 00:02:42.78 ID:Gz0DhWwFo

「君達に今から課せられる試練について教えよう! これからこの右の通路と左の通路に、それぞれ別れて行ってもらう。その先には多くの難題が待ち受けているが、それらを制限時間以内に乗り越えてもらいたい。そして再びまみえた時、今までの君達は終わり、新たな君達が始まるのだ!」

男(流石に二日目だからセリフもすらすらだ……セリフですよね?)

「さぁ行け! 挑戦達よ! その名に恥じぬように挑むのだ!」

男「……」

生徒会長「……」

「……さぁ行け! 挑戦者達よ! その名に」

男「あ、もう説明終わってたのか。じゃあ、会長、僕は右に行くんで後で会いましょう」

生徒会長「うん」

「旅立つ挑戦達に祝福あれ!」

男(仏なのに祝福を授けられるのか……高性能な仏だ)

190: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 00:04:38.67 ID:Gz0DhWwFo

男(急に大音量の音楽が……なんかのゲームの音楽かな? 場に合ってるのか、合ってないのか判断できない……)

「ようこそ、絆を試す者よ。我は汝を試す始まりの壁」

男「今度はジャージに虎のマスクの大きな人……」

男(って、試練って人と会話する形なのか! やばい、会長と別れて行動してる間はなんとか誤魔化さないと……)

「今、声が……」

男「ごほっ、ごほっ、すみません、風邪引いてて喉の調子がおかしいので、なるべく声を出したくないのですが……」

「あ、それは無理をさせてすみません! えっと、試練は基本的に、はい、いいえ、のどちらか聞くだけなので、それだけ答えていただければ大丈夫です。あとの出題者にも伝えておきますね!」

男(素だと普通に良い人っぽい、この先輩)

男「すみません、お願いします」

「いえいえ~。それでは、ごほん……絆を試す者よ、我が問いに答えよ。さすれば道は開かれん」

男(ノリは基本的に西洋ファンタジー風? それなのに何故、大仏に虎のマスク……)

「今、共に試練を受ける汝の片割れは、汝にとって誰よりも心を許せる存在か?」

男(あぁ、二人組でやる迷路ってこういうことか。……これ、迷路っていうのかな?)

「どうした、答えられぬのか?」

男(心を許せるか……仲の良い人で挙げられるのは当然として会長に、後は友と女先輩か。一番付き合いが長いのは友だけど、友はいたずらとかするし、ある意味一番油断ならないからなぁ。女先輩も考えてることが読めない人だし、やっぱり僕の答えは――――)

男「はい」

「なるほど……良いだろう、ならばこちらの道へ進むがよい!」

男「はい」

「さっき言った通り、後もはい、いいえで大丈夫なようにしておくから」

男(本当に良い人だな……)

191: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 00:06:55.65 ID:Gz0DhWwFo

「ふふ、わざわざ贄の方から来るとはな」

男(今度は……魔女? どうしてこの人だけ上から下まで完全装備なんだ……)

「私はやけくその魔女。贄よ、答えなさい」

男「……無理やりやらされてるんですね」

「思い出すから言わないで…………喉のこと聞いてるから、無理に喋らなくていいわよ」

男「はい」

「あなたは贄。しかし、あなたはもう一人の贄と再会するために、何が何でも進まねばならない」

男(もう一人の贄って会長のことかな?)

「なので、譲渡してあげます。あなたにとって大切なものを代わりに置いていけば、あなたのことは見逃しましょう。もう一人の贄と再会するために、大切なものを置いていきなさい」

男(つまり、次に進みたかったら、会長と同じかそれ以上に大切なものを置いていけってことか。……これって結構難しいこと言ってるような?)

「どうですか? それをする覚悟がありますか?」

男(でも、物理的に持ってないとこれはクリアできないような…………覚悟か、もしかして、こういうことかな?)

男「はい」

「大切なものを手に入れるために、別の大切なものを捨てる勇気があるというのですね?」

男「はい」

「……久々に骨のある贄です。いいでしょう、こちらの道へ……先に進みなさい。ふっはははは、あなたの気概に触れて清々しい気分ですので、何も置いていかないで結構です」

男(完全に棒読みっていうね)

「さぁ、行くのです挑戦者よ」

男(思った通りこういう展開だったか。やっぱり全体的にノリは西洋ファンタジー風みたいだ。……これをそうだと言うと怒る人もいるかも知れないけど)

「はぁ……何よ、贄って……」

男(……お疲れ様です)

192: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 00:08:54.04 ID:Gz0DhWwFo

……………………
………………
…………
……

男(特別教室に入ってから音楽がうるさいと思ってたけど、これはもう一人の参加者がなんて答えたか聞こえないようにするためか。その辺は徹底してるのに、どうして手抜きの所はどうしようもないくらい手抜きなんだろう……)

「待っていたぞ、挑戦者よ!」

男「ナース服に……鼻眼鏡……しかも男子……」

「聞いたぞ、調子が悪いんだってな! 俺が適当に薬を煎じて飲ませてやろうか!?」

男「いいえ」

「わっはっはっはっ! 食い気味に即答とは中々のお嬢さんだ! 少し惚れそうだ!」

男(あ、この人面倒くさい)

「とか言ってると、またクラスメイトに怒られてしまうからな! さっさと出題するぞ!」

男「はい」

「問題! 蓮根の古称はな~んだ?」

男「……」

「……」

男「はい?」

「正解! その通り、?だな。他にはハスネなども挙げられるな」

男「えっ」

「正解者はこっちの道へ進め。じゃあな!」

男(聞き返しただけなのに、これでいいんだ。……普通のナゾナゾも混ぜたりするのかな?)

「こらぁぁあああ、お前ってやつはまた勝手に!」

「わっはっはっはっ! はい、いいえしか言えない少女に対しての問題として秀逸だっただろう?」

「誰だよこいつに出題係り任せたやつ! 趣旨を理解してねぇじゃないか!」

男(……そうでもなかったぽい。けどいいや、先に進んじゃえ)

193: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 00:10:53.64 ID:Gz0DhWwFo

……………………
………………
…………
……

男(結構答えたな。次で七つ目の問題だっけ)

「よくぞ辿り着きました挑戦者よ」

男「……」

「ついにこれが最後の試練になり……どうかしましたか?」

男「……いえ」

男(なんで最後が競泳水着の男子生徒…………ゴーグルと水泳用の帽子もちゃんと被ってるし。ここまででダンボールで作ったロボや軍服、スチュワーデスとか出てきてるからもう驚かないけど、この人が一番手抜きな気がする)

「何やら目つきが気になりますが、私は紳士です。いいです、このまま問いましょう」

男「はい」

「あなたは胸を張ってパートナーと付き合えていますか?」

男「ごほん、パートナー?」

「もう一人の挑戦者のことです。私はあなたのパートナーが男性なのか女性なのか知りませんが、どちらでも構いません。この絆の迷宮に挑んだ以上、気心の知れた仲なのでしょう。そんな相手と接する時、果たしてあなたは胸中にわだかまりなく、晴れやかでありますか?」

男(……つまり、関係する上で致命的な隠し事があったり、大きな不満がないかってことかな?)

「制限時間も差し迫ってきているし、こういうことはすぐに思い浮かんだものがあるかないかでしょう。すらりと答えていただきたい」

男(僕は会長に対して、恋人として致命的な隠し事は……ない。不満どころか、満足、というより僕には勿体ないくらいの人だとですら思える。――――なら)

男「はい」

「本当だね?」

男「はい」

「……」

男「……」

「なるほど、真っ直ぐに見つめてくるその瞳に嘘はなさそうだ。よかろう、最後の試練突破だ」

男「ありがとうございます」

「おめでとう、こちらの道へ行くといい。この先は試練を突破した者達の再会の場所だ」

男「はい」

194: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 00:12:52.78 ID:Gz0DhWwFo

「……一つ、助言だ」

男「え?」

「うちのクラスの出し物、絆の迷宮はちょっとした心理テスト、相性占いみたいなものだ。我々は大真面目にこのアトラクションを行っているが、所詮こんなものは学生が考えた遊びの延長でしかない。だから、例え良い結果だろうと……悪い結果だろうと、二人の仲を確定するものではない。それを忘れないで欲しい」

男「海パンさん……」

「その妙なあだ名はやめてくれ。……時間を取らせて悪かった、体調も悪いのに。ちょうど制限時間も来た、試練はこれで完全に終了だ」

男「ごほん、一つだけ聞かせてください。この絆の迷宮に挑戦した人達の踏破率はどれくらいなんですか?」

「九割だ。皆、祭りの遊び程度にしか捉えていないからな。適当に頷いて自分達の仲の良さを暗示的に確認し、満足して帰るのがほとんどさ」

男「……クリアできなかった人達もいるんですね」

「そうなるな。クリアできなかったのは、そうだな……適当に終わらせたかった人、他のイベントの時間が来て出たくなった人、あとはきっと――――真面目で相手に嘘がつけない人だったんだろう」

195: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 00:14:35.15 ID:Gz0DhWwFo

男(この時の僕は海パンさんの言ったことと格好のギャップに少し笑って、実はかっこいい人なんだなと思いながらその場を後にした。彼が急にどうしてそんなことを言ったのか、真面目に語ってくれたのか、その意味を考えずに……)

男(ベニヤ板の狭い通路を抜けた先にあった待合室)

男(そこで待っていたのは、気まずげにぎこちない笑みを浮かべた係りの人だった)

男(右を向いても左を向いても他には誰もいなくて)

男(――――会長の姿は何処にもなかった)

□■□■□■□

196: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 00:15:56.75 ID:Gz0DhWwFo

「うん分かる、分かるわー。やっぱり三角関係である以上、どうしても拭いきれないものがあるわよね。でも、それが茨の道を歩むということなのよ。今回のことで決意が鈍ることがあるかも知れない。けど、忘れないで、私は生徒会長の味方よ。きっとこの先も落ち込んでしまうことがあるかも知れない。でも、その時はあなたが想う二人を……そして私を思い出して! あなたは一人じゃないわ!」

生徒会長「……」

男「……会長」

「そこのあなた」

男「え? あ、はい」

「もう、しゃんとしなさい! 名前知らないけど、生徒会長の恋人ってことでいいのよね? あなたが副会長の子とどう決め合ってるか知らないけど、今ここにはあなたしかいないのよ。恋人ならちゃんと支えてあげなさい!」

男「……っ! は、はい」

「分かったなら行きなさい。ここは今の生徒会長にとって辛い場所だわ。少しでも元気が出るように努力するのよ!」

男「わかりました。……行きましょう」

生徒会長「……うん」

「何かあったら私を頼りなさいね~いいわね~!」

197: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 00:17:22.24 ID:Gz0DhWwFo

男「うわ、パンフレットを見てみたら、さっきの迷路についてどういうものか詳しく書いてあるし……」

男(これを読んどけばこの状況も避けられたのかな。店の場所を全て把握してたのが仇に……あとの祭りか、こんなこと)

生徒会長「……」

男(ほとんど手を繋いで引っ張るように連れてるけど、やばい、どうすればいいのか分からない)

生徒会長「……ふぅ」

男(特別教室を出る直前までは何問目で出たのか、軽い調子で聞こうと思ってけど)

生徒会長「……」

男(……とても軽く聞ける様子じゃないよなぁ。一見、表情はいつも通りに見えるけどもう分かる。間違いなく、かなり気落ちしてる。この様子を見ると会長が真剣に取り組んで、その結果クリアできなかったってことか)

生徒会長「……」

男「会長、小腹空いたりしてませんか?」

生徒会長「……大丈夫」

男「じゃあ、喉渇いてません? 結構話したりとかしませんでした?」

生徒会長「……それも大丈夫」

男「そう、ですか……」

198: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 00:18:57.02 ID:Gz0DhWwFo

男(やばい、会話が途切れる……いや、むしろここは少し黙っていた方がいいのかな? くそ、こういう時にどうすればいいのか分からないのが歯痒い……)

生徒会長「……」

男(会長、何問目で出たんだろう……。海パンさんが言っていたように、問題はどれも相性占いの延長みたいなものばかりだったし……あり得るとしたら、やっぱり最終問題かな?)

生徒会長「……」

男(会長は僕に隠し事がある? それとも不満が……?)

生徒会長「……はぁ」

男(うぐぐ、率直に聞いてしまおうかな……でも、やっぱり少し時間を置いた方がいいのかな? いっそ、ずっと聞かないでおいて時間が解決してくれるのを待った方がいいとか……だあああぁああ! うじうじ考えても仕方ない! ここは――――)

男「会長! あの聞きたいことが――――って、どうしたんですか? なんで驚いた顔して……っと、あんまり引っ張らないで下さい。スカート、履きなれてないんで捲れてても気づきにくいんですから」

生徒会長「……こんにちは」

男「はい、こんにちは。え、なんで急に挨拶を?」

生徒会長「男君、横。あと、私はスカート引っ張ってない」

男「横? 引っ張ってない?」

少女「……」

男「女の子? えっと、どうかしたかな? どうして僕のスカートの裾をわしづかみしてるの?」

少女「……ひ」

男「ひ?」

少女「ひっぐ……」

男「え、そんなに急に顔を歪め……まさか」

少女「ひっぐ、ぇえええええええ」

男「わー! 火がついたように!? ちょ、ちょっと、本当にどうしたのおぉ!?」

199: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 00:22:25.13 ID:Gz0DhWwFo

……………………
………………
…………
……

生徒会長「――――つまり、少女ちゃんは迷子になっちゃったんだ?」

少女「……はい」

男「うちの生徒の妹さんか、一般のお客さんの娘さんですかね。生徒の妹さんであれば、特定もしやすかったかも知れないんですが……」

生徒会長「そうだね……」

男「君、今日はお家の人と一緒に来たんだよね? はぐれた時間と場所とか分かるかな? もしもの時の合流場所とか決めてたりは」

生徒会長「……男君、そんな一度に聞いたらだめ。少女ちゃんは小学校一年生。まだまだ小さい子なんだから」

少女「うぅ……」

男「おっと、すみません。自己紹介が済んだので思わず……ごめんね、ゆっくりでいいから僕達に教えてくれるかな?」

少女「……今日はパパと来た……来ました」

男「そっか、パパと来たんだ。いいねー」

生徒会長「少女ちゃんには兄妹はいるかな?」

少女「いない。……です」

男(となると、一般の方の娘さんか……)

生徒会長「……少女ちゃん、無理に丁寧な話し方しなくていいよ。お友達とお話しするようにしてくれればいいから」

少女「でも……ママが年上の人とお話しする時は、きちんとした話し方をしなさいって」

男(……しっかりとした教育されてる子だな。でも、そのせいで緊張が上乗せになっちゃってる)

生徒会長「……少女ちゃん。私とお友達にならない?」

少女「お友達?」

生徒会長「うん。私、少女ちゃんみたいな可愛い女の子のお友達が欲しかったんだ」

男(……なるほど、上手いな)

少女「可愛い……えへへ」

男「それなら、僕もお願いしてもいいかな? 実は友達百人作るのが目標でさ」

少女「……お、お二人が私のお友達になってくれるの……んですか?」

男「うん、だから普通にお喋りしようよ!」

生徒会長「今日から私達はお友達」

200: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 00:24:18.90 ID:Gz0DhWwFo

少女「……」

男(ん? なんか凄い少女ちゃんが見てくるけど、どうしたんだろう)

少女「……お姉ちゃん」

生徒会長「ん、なにかな?」

少女「こっちの人はお姉ちゃんなの? お兄ちゃんなの?」

男(…………やば、気が動転してたから、ここまで声を誤魔化さずに喋ってた。じっと見てきたのは訝しんでたからか)

生徒会長「……少女ちゃん」

少女「どっち?」

生徒会長「この人はお姉ちゃんなの」

少女「でも、……男の人みたいだよ?」

生徒会長「そう、この人はお兄ちゃんでもあるの」

少女「え? さっきお姉ちゃんだって……」

生徒会長「うん、お姉ちゃんでもあるの」

少女「え? え? え?」

生徒会長「この人はお兄ちゃんで、お姉ちゃんなの」

男(会長……その誤魔化し方は少し荒くはないでしょうか……)

少女「……」

生徒会長「少女ちゃん、世の中にはいろんな人がいるの。みんな少女ちゃんと違って、けど同じ人なんだよ」

少女「同じ人?」

生徒会長「そうなの。同じ人だけど、少し違ってる人だっている。だけど、違うってことを理由に嫌いになることは、悲しいことだとは思わないかな?」

少女「……うん、そう思う。ママも理由もなく人を嫌いになっちゃだめだって言ってた」

生徒会長「……そっか、優しいお母さんだね」

少女「うん! ママは怒ると怖いけど、いつもはすっごく優しいの!」

生徒会長「……それで、改めて少女ちゃんに聞きます。この人は少し他の人とは違うけど、お友達になれるかな?」

少女「……なれる! おにい……おねえ…………おにぇちゃん! 私とお友達になろう?」

男「わ、わーありがとう少女ちゃん! 僕、本当に嬉しいよ!」

少女「えへへへ」

生徒会長「男君」

男「会長……」

生徒会長「よかったね」

男「はい! ……けど、なんでなんですかね。会長は彼女に何か大切なことを教えたはずなのに、釈然としない思いが残るのは」

□■□■□■□

207: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 21:27:03.17 ID:Gz0DhWwFo

少女「わー! すっごーい!」

「あら元気なお嬢ちゃん。PTAのバザーになんて興味があるなんて珍しいね」

少女「おにぇちゃん達と一緒だから!」

「おにぇちゃん? ああ、お姉ちゃんね。一緒でいいわね~」

少女「うん!」

男「あははっ、走ったらだめだよー?」

少女「はーい!」

生徒会長「……そろそろかな?」

男「ですね……あ、ちょうど放送が」

『文化祭実行委員会から迷子のお知らせです。○○市、△△町からお越しの少女ちゃんの保護者の方は、至急お近くの教員か腕章をつけた文化祭実行員会までご連絡をお願いします。繰り返します――――』

生徒会長「ちゃんと放送してくれた」

男「偶然通りがかった実行委員の人、ちゃんと伝えてくれたみたいですね。……本来は職員室か、実行委員会の本部に行った方がいいんでしょうけど――――」

208: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 21:28:44.32 ID:Gz0DhWwFo
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少女『えー! 私、二人と遊びたい!』

男『でも、お家の人と早く会いたくない?』

少女『パパが来たら二人と遊べなくなっちゃうもん!』

生徒会長『……お父さんに迎えに来てもらってから、みんなで遊ぼう?』

少女『だめ、パパが来たらみんなで遊べないんだもん……』

209: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 21:29:25.02 ID:Gz0DhWwFo

男「結局押し切られて、お家の方との待ち合わせ場所をここしたっていう。バザーとして良いんだか悪いんだから分かりませんが、そこまで混んでないので待ち合わせにはちょうどよさそうです」

生徒会長「少女ちゃんも楽しそう」

男「根は明るい子みたいですね。……少女ちゃん、理由を聞いても教えてくれませんでした。厳しいお父さんだとか、何か事情があるんでしょうか……」

210: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 21:29:53.98 ID:Gz0DhWwFo

男『少女ちゃん、お父さんってどんな人?』

少女『パパ? んっとね、普段はすっごい優しいんだけど、怒るととっても怖いの……』

生徒会長『怖い?』

少女『うん……。あとはお掃除が得意でママの代わりにいつも掃除してたり、お休みの日は町のお掃除もしてるって言ってたよ!』

男『お掃除がお仕事の人なんだ?』

少女『ん~? ……わかんない、でも人の役に立つお仕事してるって言ってた!』

211: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 21:30:47.94 ID:Gz0DhWwFo

男「……ここに来る途中聞いた限りだと少し気になる点もありましたけど、夫婦仲も良好な普通のお父さんって感じなんですけどね」

生徒会長「まだ、分からないから暗い方に考えないでおこう。もしかしたら、ただ帰り際にはぐれたから、お家の人が来たら帰えることになるって考えただけかも知れない」

男「……そうですね」

生徒会長「うん」

少女「おにぇちゃん達―! どうしたのー?」

男(ギリギリ、お姉ちゃんを舌足らずに言ってるように聞こえるな。あとはおにぇちゃんとお姉ちゃんを連続で呼んだときに、違和感を覚える人がいないように願うしかないか)

生徒会長「私たちも中に」

男「そうですね」

212: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 21:32:17.86 ID:Gz0DhWwFo

少女「何かあったの?」

男「なんでもないよ。それより、その手に持ってるのはどうしたの?」

少女「おばさんがクッキーくれたの!」

「保護者で暇な人が集まって、手作りの品を少し出してるやつなの。お嬢ちゃん可愛いから一つあげちゃた」

生徒会長「お金払います」

「いいのいいの。そんなに高いものでもないし、儲けようとしてるわけでもないしね」

男「ありがとうございます」

「気にしなくていいのよ~。それより、フリフリのあなた、声が変ね。風邪?」

男「あ、は、はい。そうなんですよ」

男(女装してるので声を誤魔化してるとは言えない……)

「あらやだわ~涼しくなり始める季節だからね~。あ、そうだ。おばちゃん、よく効くのど飴持ってるのよ。えっと、そう、これこれ。どうぞ」

男「あ、ありがとうございます」

「うふふ、ちゃんとお礼の言える子で偉いわね~。うちの子なんてね……」

男(やばい、これはおば様方特有の長話展開……?)

少女「おにぇちゃん、こっちー!」

「あらあら、呼んでるわね。引き留めちゃってごめんね、早く行ってあげて」

男「す、すみません。失礼します」

男(少女ちゃん、正直ナイス……)

213: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 21:34:03.49 ID:Gz0DhWwFo

少女「おにぇちゃん、これこれ!」

男「どれかな? これは……ビーズの指輪?」

少女「すっごく可愛い!」

男(やっぱり、小学生くらいの女の子ってこういうの好きなんだな)

少女「……でも、おこづかいもあんまりないしなぁ。うーん」

男「お、ちゃんと考えて買い物してるんだ。偉いね」

少女「えへへ。でも、いろんなものがあるから迷う」

男「確かに他にもいろいろあるね。……バザーだから使わなくなった物とかが多いけど、保護者の方達の手作り品も置いてあるのか。趣味の公開の場としても活用されてるんだな」

少女「かつよう?」

男「ええっと、いろんな人がそれぞれの楽しみ方で、文化祭を楽しんでくれてるってことだよ。少女ちゃん、文化祭楽しい?」

少女「うん! 私、文化祭……活用してる!」

男「あぁ、間違った日本語の使い方を教えてしまった……」

少女「違うの?」

男「考えようによって意味は通るかもだけど、ちょっと違うかな」

少女「難しい……」

男「僕も難しいや……」

男(子どもってあんまり慣れないからなぁ。その点、会長は面倒見が良いからか自然に接してたな……あれ、そういえば会長どこに?)

214: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 21:36:56.28 ID:Gz0DhWwFo

生徒会長「……」

男「あ、いた。会長、どうし……」

男(何か見てる。あれは、櫛?)

「あら? その櫛とかが気になる?」

生徒会長「え、あ、はい」

「その櫛とかも手作りなのよ~。といっても、元々出来てあるものに色を塗ったり、柄をつけたりしてあるだけなんだけどね~」

生徒会長「そうなんですか。……他の盆とかも素敵ですね」

「ありがとう~、作った人に伝えておくね~」

男(……会長の櫛、お母さんの形見だって話だもんな。やっぱりああいうのが目に入ると気になっちゃうんだろうか)

少女「おにぇちゃん」

男「ん、なにかな?」

少女「しゃがんで~」

男「いいけど、どうかしたの?」

少女「えーっとね、えっとね」

男「え、なになに? 僕の頭に何かついて、いた、痛い、痛いよ!? 何してるの!?」

少女「上手くできない…………あ、できた!」

男「いててて、これは、髪飾り?」

少女「あんまり触ったら取れちゃうよ?」

男「あ、ごめん。……って、これ売り物だよね? 勝手につけたりしたらだめだよ」

生徒会長「可愛い」

男「なんというタイミングでこっちに戻ってきて……」

215: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 21:38:29.33 ID:Gz0DhWwFo

「まあ、よく似合ってるわよ~。うふふ、話題の女子力がアップね!」

男「ワー、ウレシイナァ……じゃなかった、すみません、売り物なのに勝手につけてしまって」

「いいのいいの」

少女「お姉ちゃん、あっち見に行こう?」

生徒会長「わかった」

男「そして少女ちゃんがつけたのに、我関せずで行っちゃうし……。これ、つけちゃたんで買います」

「本当に気にしなくていいんだけどね。でも、似合ってるから是非買ってほしいかな。二百円になりまーす」

男「あとこれとこれ……それと、あれも一つお願いします」

「ありがとう~。うふふっ、女の子だもんね~。やっぱりこういうの持っておくといいわよね」

男「……えっと、そんな感じです」

「これとこれでいいのね? こちらは全部で六百円になりま~す」

男「代金です」

「はい、確かに。ありがとうね~」

216: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 21:39:31.93 ID:Gz0DhWwFo

少女「おにぇちゃん、何か買ったの?」

男「あ、戻ってきたんだ。うん、それでこれ」

少女「あ、ビーズの指輪……」

男「友達になった記念にプレゼント」

少女「いいの!?」

男「気に入ったみたいだったから。そんなに高いものでもないしね」

少女「ありがとう!」

男「会長もどうぞこれ」

生徒会長「私にも?」

男「少女ちゃんと同じやつです。女の子同士でお揃いって、なんか友達っぽいかなって」

生徒会長「……ありがとう」

少女「おにぇちゃんのは?」

男「ん?」

少女「おにぇちゃんのは買ってないの?」

男「いやだって、僕は――」

男(男の子だから。って、今の僕は女の子なのか。…………今の僕は女の子って思う日が来るとは)

男「――髪飾り買ったからさ」

217: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 21:40:40.89 ID:Gz0DhWwFo

少女「……」

男「少女ちゃん? どうしたの、眉根なんて寄せて」

少女「……すみません!」

「はーい、何かしら?」

少女「えっと、このビーズの指輪と同じやつください」

男「え、少女ちゃんさっきお金がないって……」

「分かりました~。これでいいかな?」

少女「はい! お金です!」

「はーい、ちょうどいただきました」

少女「おにぇちゃん」

男「はい」

少女「プレゼントです」

男「……いいの?」

少女「お友達になった記念!」

男「少女ちゃん……うん、もらうね。ありがとう」

少女「えへへ、これでみんな一緒! ね、お姉ちゃん!」

生徒会長「うん、そうだね」

「心温まる話だわ~。おばさん、感動しちゃった。クッキーもう一個あげちゃう!」

少女「いいの!? ありがとう!」

生徒会長「……少女ちゃん、いいこだね」

男「はい、本当に……」

218: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 21:41:51.03 ID:Gz0DhWwFo

生徒会長「……」

男(会長、暖かい微笑みだな。……気まずい雰囲気も少女ちゃんのお蔭で落ち着いてる。けど、それは誤魔化しているだけに過ぎないんだよな)

男(優しく笑ってる会長。それを見て、どうしてか胸が痛い。さっきまで会長に迷路をいつ出たのか軽く聞く、なんて思ってたけど、自分が思っていた以上に僕は落ち込んでいたんだな……)

男(そもそも最後の所でいないかも、なんて考えていなかった。僕は身勝手に思い込んでいた。会長は当たり前にいてくれると……それが、とても心苦しい)

生徒会長「男君?」

男「はい、なんですか?」

生徒会長「……どうかしたの?」

男「どうもしませんよ。急にどうしたんですか?」

生徒会長「でも、今……」

219: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 21:43:02.21 ID:Gz0DhWwFo

?「ぉおおおおおおおおおおお!」

男「うぉ、なんだ!?」

生徒会長「廊下から……?」

?「少女ぉおおおおおおおおお!」

男「少女ちゃんを呼んでる?」

少女「この声……パパだ!」

男「パパ?」

少女父「ここかあああああああああ!」

男「扉が物凄い音を立ててっ!」

少女「パパー!」

少女父「――っ! お、おお、おおおおぉお! 少女、よく無事で……! 怪我はないか? 怖い目にあってないか? 酷いことされてないか?」

男(すごっ、身長が二メートル近くある。服の上からでもわかる筋肉……この人が、少女ちゃんのお父さん……!)

220: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 21:44:20.91 ID:Gz0DhWwFo

生徒会長「少女ちゃんのお父様で間違いありませんか?」

少女父「うぉおううぅ……う? そうだが、君は?」

生徒会長「私は当校の生徒会長を務めている者です。少女ちゃんを保護していました」

少女父「おぉ、そうだったのか! いやぁ、すみません、うちの子がお世話になりました。少女、お姉さんにご迷惑をおかけしなかったか?」

少女「うん! お姉ちゃんとおにぇちゃんに迷惑かけてないよ。お友達にもなったし!」

少女父「お姉ちゃんとおにぇちゃん?」

男「こ、こんにちは」

少女父「……君が娘の言うところのおにぇちゃんさんかな?」

男「は、はい」

少女父「……」

男(なんか目線で穴を開けようとしているかのように見てくる……)

221: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 21:45:20.23 ID:Gz0DhWwFo

少女父「……少女」

少女「なぁに?」

少女父「どうしてこの人はお姉ちゃんでなく、おにぇちゃんと呼んでるのかな?」

少女「えーだって、おにぇちゃんはおにぇちゃんだからだもん」

少女父「もう少し詳しく話してくれないか?」

少女「えっと、だからね。おにぇちゃんはおにい」

男「あだ名です! こっちの会長と呼び方を分けるためにそう呼んでもらってるだけです!」

少女父「そうなのか?」

男「ね! ね! 少女ちゃん、そうだよね!」

少女「う? うーん、そうなの、かな?」

少女父「……本当に本当か?」

男「はい!」

少女父「そうか……いや、はっはは。すまないね、変なことを聞いたりして」

男(と、一度は納得した風だけど、訝しむような目はなくなってない。かなり疑ってるな、勘の強い人みたいだ)

222: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 21:47:33.29 ID:Gz0DhWwFo

少女父「でも良かったよ。少女を保護した人が……少女に近づいた人が女の子だけで」

男「……ちなみに、男子だった場合どうなったんですか?」

少女父「娘をかどわかそうとしてないか、徹底的なお話をしたところだ」

男(こわっ! この人、真顔だよ!)

生徒会長「男君、少女ちゃんがすぐにお家の人と合流するの嫌がったのって……」

男「もしも僕の性別が発覚した場合、お父さんが何するかわからないから……でしょうね。そのことを何故か少女ちゃん忘れてるみたいですが」

生徒会長「それは男君がお花の髪飾りが似合うくらい女の子してるから、少女ちゃんの中で認識が変わったとかじゃないかな」

男「えぇー……」

少女父「何かな?」

男「あっと、すみません。生徒会の仕事のことで少し」

少女父「おぉ、そうだったのか。改めてすまなかったね、文化祭で忙しいだろうに。ほら少女、行こう」

男(少女ちゃんの反応で悪いように想像してたけど、ただの娘が大好き過ぎるお父さんだったみたいだな。……良かった)

少女「えぇ! まだ二人と遊びたい!」

少女父「彼女達を困らせてはいけないよ。ちゃんとお礼を言いなさい」

少女「でもでも……」

男(別れを惜しんでくれるのは嬉しいんだけど、このお父さんと一緒に行動するのはちょっとまずそうなんだよなぁ。せめて最初から性別を隠してないならともかく……この格好で少女ちゃんに近づいたとばれたらどうなることやら)

?「はぁ、はぁっ……やっと着いた」

223: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 21:49:22.17 ID:Gz0DhWwFo

男「あれ、友?」

友「あ、男――」

男「そういえばお父さん、自己紹介が遅れました! ぼ……私は男美と言います!」

少女父「お、おお、そうかい」

友「――美じゃん。なんだ、少女ちゃんを保護したのってお前らだったのか。っていうか、それなら電話出ろよ。協力してもらおうと思って何回かかけたのに」

男「協力? 電話? ……あ、本当だ。友から着信が入ってる」

男(履歴の時間から考えて迷路にいた時か。あそこ音楽がうるさかったから、全然気づかなかった……)

友「SNSの文化祭実行委員のやつを通して、お前が楽しくデートしてることは分かってたけどさ。もうちょい携帯確認しようぜ」

男「あれ友も確認してるんだ」

友「文化祭での情報がいろいろ仕入れられるからな。少女ちゃんに関しての何か手がかりがないか見てたんだよ。それに普通に文化祭を楽しむ上で活用しやすいし」

男「なるほどね」

友「お前と一緒にいるって早めに分かってれば、少女ちゃんを探すのに駆け回らないで済んだんだけど……まぁ、結果論なんだけどさ」

男「なんかごめん」

友「いや、いいんだけどさ。お前悪くないし。愚痴だと思って聞き流してくれ」

少女父「あぁ、友君。すまなかったね、置いて行ってしまって。実行委員の子にここを教えられてから、居ても立ってもいられなくてね」

友「ホント、一目散でした。少女父さん、走るの早すぎです。まぁ、ここの場所は知ってたでしょうから、案内なんて必要なかったのかも知れませんが」

224: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 21:51:59.69 ID:Gz0DhWwFo

男「あれ、二人は知り合いなんだ」

友「ちょっと部活の方で縁があってさ。さっき会った時に話をしてたら、気づいたら少女ちゃんいなくなってて……少女ちゃん、さっきぶり」

少女「あ、友君だ! さっきぶり! いぇーい!」

友「うははっ、そのハイタッチに応えたいところだけど、そんなことしたら後が怖いからさ。ごめんね!」

少女父「友君は信用してるからある程度許しているが……一メートルまで近づくことを容認していることすら、そもそも心が擦り切れるくらい妥協してることを忘れないようにね」

男(過保護ってレベルじゃない……ってか、これで僕の性別ばれたらどうなるんだろうか)

友「それで、何かあったんですか?」

少女父「実は、少女が少しだだをこねてしまってね」

少女「二人とまだ遊んでたい!」

友「ああ、なるほど、そういうことでしたか。……少女ちゃん、この二人は忙しいからさ、俺と一緒に遊ぶってことじゃだめかな?」

少女「友君と?」

友「そ。あと、もう一人お姉さんがいるからさ、その人も交えて遊ばない?」

男「もう一人?」

友「女先輩。たまたま会ってさ、お互い相手がいないなら一緒に回ろうかってなったんだよ。今は違うところで待ってもらってるけど」

男「そっか、去年は友と僕で回ったもんね。女先輩も会長と一緒だったろうし……そういうこと考えてなかったや」

友「全くだぜ、薄情者が。……それで、どうかな少女ちゃん」

225: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 21:53:38.58 ID:Gz0DhWwFo

少女「……お姉ちゃん達は忙しいの?」

男(デートを忙しいと言っていいのかわからないけど……)

少女父「……」

男(僕と友の会話を聞いて、少し首をかしげてる少女ちゃんのお父さんの様子を見ると、ここは別れた方が良さそうだ)

生徒会長「それは……」

男「ごめんね、ちょっと忙しいんだよ」

少女「そう……」

生徒会長「……また今度、時間があるときに遊ぼう?」

少女「また遊んでくれるの?」

生徒会長「もちろん」

少女「……じゃあ、今日は友君で我慢する!」

友「うははっ、そうそう、俺で勘弁して頂戴な」

男「ありがとう。じゃあ、僕達は行くから。またね、少女ちゃん」

少女「うん、またね! おにぇちゃん、お姉ちゃん!」

生徒会長「またね」

少女父「二人とも今回は本当にありがとう。今度是非お礼をさせてくれ」

男「いえ、そんなお気になさらずに。えっと、じゃあ……」

生徒会長「まずは生徒会室」

男「え?」

生徒会長「男美ちゃん、髪がぼさぼさだから」

男(少女ちゃんが髪飾りをつけてくれた時か……。生徒会室なら忙しいってことになってる身としても大丈夫か)

男「そうですね、ではまず生徒会室に」

友「男」

男「どうしたの、急に小声で」

友「人目のない場所で二人きりになるからって羽目を外すなよ」

男「……真面目に何を言ってるのかと思えば。目が笑ってるし」

友「うははははっ、じゃあな、男美ちゃん。その格好、よく似合ってるぜ!」

男「ありがとう友さん、今度覚えてやがれです」

□■□■□■□

226: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 21:57:04.06 ID:Gz0DhWwFo

男「着きましたね。普段ここは静かですけど、流石に今日ばかりは騒がしい音が聞こえてくるんですね」

生徒会長「そうだね。去年も……そう、去年もそうだった」

男「そうなんですか?」

男(なんか一瞬、会長が辛そうな顔をしたような……?)

生徒会長「……じゃあ、男君座って」

男(気のせい、かな?)

男「はい」

生徒会長「これ、取ってもいい?」

男「エクステですか? どうぞ、引っ張れば取れるくらい簡単につけ外しができるやつみたいなんで」

生徒会長「クリップになってるんだ」

男「何種類かあるみたいですね。本格的なやつになると編みこむんだとか」

生徒会長「初めて知った」

男「会長は肩にかかるくらいですが、十分長い方ですからね。無用な人には知らなくていいものなんでしょう」

生徒会長「うん……それじゃあ、始める」

男「お願いします」

227: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 21:58:01.09 ID:Gz0DhWwFo

生徒会長「……」

男「……」

生徒会長「……ふふっ」

男(……っ! くそ、友め。変なこと言うから妙に意識しちゃうじゃないか。会長が僕の髪を弄って楽しそうなのはいつものことなのに、いつも以上にドキドキしてしまう!)

生徒会長「男君」

男「は、はい」

生徒会長「私、実は妹が欲しかった」

男「どうして僕がこんな格好してる状況で、それを教えてくれたんですかね!?」

生徒会長「妹がいれば、お母さんの櫛を使ってあげられたから」

男「あ……」

生徒会長「男君にこうしてできるの楽しくて、嬉しい」

男「……この格好だからですか?」

生徒会長「その格好だと妹がいる気分が味わえるからいい。でも、普段通りでもいい。こうしてできることが嬉しい」

男「そうですか」

生徒会長「うん」

228: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 21:59:22.58 ID:Gz0DhWwFo

男「……」

生徒会長「……ふふっ」

男(楽しそう。なんかもやもやしてたけど、どうでもよくなってきたな。会長が笑ってくれてるなら、それでいいか)

生徒会長「~~~~」

男「歌」

生徒会長「~~。ん?」

男「僕の髪を弄ってる時、いつもその歌を口ずさんでいますよね」

生徒会長「え、そう?」

男「そうですよ。もしかして無意識だったんですか?」

生徒会長「……うん」

男「そのメロディだけの歌……歌って言っていいのか分かりませんけど。好きなんですか?」

生徒会長「好き? …………うん、好きな歌」

男「僕は音楽詳しくないので多分になりますが、最近流行った曲とかじゃないですよね? そんな優しい曲、全然聞いたことがない」

生徒会長「優しい?」

男「はい、なんか落ち着きます」

生徒会長「……男君が聞いたことないのは当然。これはオリジナルだから」

男「オリジナル? え、会長が作ったんですか?」

生徒会長「ううん。私のお母さん」

男「お母さん?」

生徒会長「……お母さんがこの櫛を使って私の髪を梳いてくれてる時、いつも歌ってたの。私が何て曲か聞いたら適当に作ったって言ってた」

229: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:01:24.03 ID:Gz0DhWwFo

男「そうだったんですか。……なんか凄いですね」

生徒会長「凄い?」

男「一子相伝! とはちょっと違うかも知れませんけど。親から子に伝わっているものがあることが、なんか不思議というか、感動というか」

男(そういえば、会長がお母さんとのことでよく思い出すのが、髪を梳いてもらっていた時のことだって、女先輩が教えてくれたっけ。やっぱりこうやって髪を弄ることにいろいろと思い入れがあるのかな?)

生徒会長「お母さんから、私へ伝わったこと……」

男「会長?」

生徒会長「そっか、だから、私……」

男「どうかしましたか? どうして、そんな顔を……」

男(突然すぎて理由が分からない。なんで会長は泣きそうな顔をしてるんだ?)

生徒会長「……分かったの。私がこうしていることが好きな理由」

男「僕の髪を梳いていることが、ですか?」

生徒会長「うん。……いつも不思議だった。こうやってると、とても落ち着けた。穏やかな気持ちになった」

男「……」

生徒会長「昔ね、私が落ち込んでたりすると、お母さんはこの櫛を取り出して梳いてくれた。名前のないメロディを口ずさみながら、理由は聞かないで私が落ち着くまでずっとやってくれたの」

男「……はい」

230: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:03:19.99 ID:Gz0DhWwFo

生徒会長「……ごめん、こんなこと急に言ったりして。意味分からないよね」

男「いいんです。聞かせてください」

生徒会長「……ありがとう。それでね、そういうことはもうないんだって、私はずっと思ってて」

男(会長、お母さんが亡くなってからそういう風に思ってたのか……)

生徒会長「でも、最近はそういう風に思うこともなくなってた。それがどうしてなのか分からなくて疑問に思ってた。……その理由、男君が教えてくれた」

男「僕ですか?」

生徒会長「うん。私、お母さんと自分を重ね合わせてた。――そうやってお母さんのこと思い出してた」

男「会長……」

生徒会長「だから男君、ありがとう。気づかせてくれて」

男「……」

生徒会長「……ごめん、急に変なこと言って。内容ぐちゃぐちゃだった。意味分からなかったと思う」

男「いえ、そんなことないです」

生徒会長「そう?」

男「はい、むしろ教えてくれてよかったです。会長のことがもっと知れたような気がします」

男(……僕は会長のことを知ってるようで、実は知らないことが結構ある。それを認識するいい機会だったな)

生徒会長「そっか。……そう言われると少しこそばゆい」

男「髪、続きお願いしてもいいですか?」

生徒会長「……うん!」

男(この笑顔を守れるようになろう。会長が僕に隠してることや不満があっても乗り越えられるような…………そんな強い自分になろう)

□■□■□■□

231: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:05:05.32 ID:Gz0DhWwFo

生徒会長「完璧」

男「終了ですか?」

生徒会長「自信作」

男「おぉ、ドヤ顔。結構速く終わりましたね」

生徒会長「これでどこに出しても恥ずかしくない女の子」

男「わ、わーい」

生徒会長「これでデートの続きができる」

男「今更ですけど、この状況はデートって言えるんしょうか……」

生徒会長「?」

男「女の子の格好をした僕と一緒に行動してて、会長は楽しいですか?」

生徒会長「ちょーたのしい」

男「ちょーですか。使い慣れない、ちょーが出るほどですか……」

生徒会長「それに」

男「それに?」

生徒会長「好き合ってる二人が一緒に歩いてればデート」

男「好き合ってる……」

生徒会長「違う?」

男「え、ああ、ええ、そうですよね」

生徒会長「なに?」

男「いや、さらっと言われたのでドキッとしたと言いますか」

生徒会長「?」

男「なんでもないです!」

生徒会長「……そう。なら、行こう」

男「はい、あ、携帯と財布机に置きっぱなしでした」

生徒会長「セーフ」

男「出る直前でしたが気づいて良かったです。取ってきます」

生徒会長「うん」

男「まぁ、そんな何歩も歩くわけではないですけどね。えっと……」

生徒会長「ない?」

男「……っと、ありました。無意識に置いたから少し探しちゃいまし――――ん?」

生徒会長「どうかした?」

男「いえ、今誰かが扉の窓から中を覗いていたような……」

232: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:06:21.53 ID:Gz0DhWwFo

生徒会長「え?」

男「――っ! 会長、扉から離れて!」

「どーん!」

「ヘロー、お邪魔しますよっと」

生徒会長「……どちら様ですか?」

男(着崩した服装。にやついた表情。……嫌な感じだ。歳は同じか少し上くらいか? この二人、あんまり素行が良さそうには見えない)

「本当は会長ちゃんが一人になった時が良かったんだけどねぇー」

「仕方がないだろう。ずっと二人で行動してるし、人気がないここに来たのが一番のチャンスだ」

「それはそうなんだろうけどねぇ~」

男(なんだ、この人達…………会長が一人になった時? 会長と僕がずっと一緒にいたことを把握している? ……もしかし、今日何度か感じた視線って)

233: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:07:25.58 ID:Gz0DhWwFo

生徒会長「生徒会に何かご用ですか?」

男「……会長! こっちへ!」

「まぁ、行かせませんってね~」

生徒会長「……離してください」

「……へ~、腕掴まれたのにその程度の反応なんだ」

「おぉ、睨んでる睨んでる。あんまり怖がってるようには見えないな」

男「このっ!」

「はーい、お友達の子ストップ。これ、見える?」

男「なっ……」

「あはは、メイドの子は普通の女の子みたいだね。まぁ、ナイフとか見せられたら普通そういう反応だよね」

「お前、ちらつかせるの早すぎだろ……。そういうのは勿体ぶってだな」

男(この人ら、想像以上に普通じゃない! やばいやばい、どうするっ――)

「でもまぁ、確かに言えてるな。そこのフリフリ少女に引き替え、生徒会長ちゃんは肝が据わってるようだ。睨んだまんまだけど、怖くないの?」

生徒会長「……」

234: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:09:22.35 ID:Gz0DhWwFo

男(――――っ! 僕まで怖がってちゃだめだ! 今、会長を助けられるのは僕しかいないじゃないか! くそ、何とかやるしかない……!)

「あーでも、面倒なことになったねー」

「確かに。用があるのはこっちだけなんだがな」

「どうする? 放っておくわけにはいかないっしょ」

「一緒に来てもらうしかないだろう。緊縛プレイは趣味ではないし、もしもの可能性もある」

「ぎゃはっはっ! ドSのくせによく言うわ~」

男「……」

「あん? ねぇ、メイドさん、ごそごそなにしてるの?」

男「っ!」

「ふーん、携帯電話か。……ふざけたことしてくれるじゃん。よこせ」

男「くっ……」

「おほっ、携帯逆に折り曲げる奴とか初めて見たわ。あーあ、可愛そー」

「知るかよ。……おい、俺ぁ女の子に優しいし、まだ着信中だったから今回は見逃してやる。けど、あんまり勝手なことしてると――――わかるな?」

男(携帯は真っ二つに折られて投げ捨てられた。これで連絡手段はなくなったな。――――このドスの利いた声。脅し慣れてるな)

「あらら、怖くて黙っちゃってるじゃん。流石ドS」

「うるせぇよ。それよか、移動するぞ。万が一ってこともあるし、あの人を待たせるわけにもいかない」

235: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:11:00.67 ID:Gz0DhWwFo

男「あの人……?」

「ん? 気になる? まぁ、今から連れて行くし、教えないでもすぐ分かるよ」

「……おい、このフリフリ、声がちょっと変じゃねぇか?」

男(気づかれた……!?)

「ばっかだねぇー、そういうのをハスキー声って言うんだよ。これだからドSは。女の子の金切り声ばっかり聞いてるからそういう風に思うんだよ」

「うっせ。……ふん、まぁいいさ。行くぞ」

「そだねー。どうやって連れてこうか? ナイフは俺しか持ってないよね?」

「……こうしよう。生徒会長ちゃんにお前と腕を組んで歩かせる。もちろん、上手く突きつけながらだ」

「なるほど。俺は役得だし、メイドちゃんは逃げたらお友達が分かってるよな、ってね」

男「……」

生徒会長「……」

「お前ら、話は聞いていたな? 拒否権はもちろんない」

「ぎゃはっはっ、ほら会長ちゃん早く俺と腕組んでよ。どういう状況か分かってるよね?」

生徒会長「……」

男「……会長、今は」

生徒会長「……」

「おほっ、この極力触りたくありませんって感じ、超ウケる~。まぁ、恋人ごっこがしたいわけじゃないからいいけどねぇー……今は。ぎゃははっ」

「……さっさと行くぞ。おいフリフリ、さっきみたいなことをしたらどうなるか分かってるな? あ、それと生徒会長ちゃんの方は携帯をここに置いていけ。さっきみたいなことは面倒だからな」

男(――――どうしてこうなったんだろう。ついさっきまで会長とデートだって心を弾ませてたのに。いったい、どうして……?)

□■□■□■□

236: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:13:16.84 ID:Gz0DhWwFo

?「あはっ、久しぶりね」

生徒会長「あなたは……そう、そういうこと」

?「相変わらず頭が回るのね。あんたのそんな所がずっと嫌いだったわ。この通り、黒幕は私でしたー。あっさり出てきて驚いた?」

生徒会長「元会長、ちゃん……」

元会長「本当に久しぶりね。あんたのせいで私が学校を辞めて以来よ。私の顔覚えてた?」

男(連れてこられた屋上。常に閉鎖されてるはずなのに鍵は開いてるし、柄の悪そうなのが生徒会室に来たのを含めて十人はいる。しかも、首謀者らしき人物が同い年くらいの女の子で、会長と知り合いらしい。……訳が分からない)

生徒会長「忘れるわけがない」

元会長「でしょうね。なんせ自分が人生を狂わせた相手だものね。私も忘れてないよ。あんたの顔を憎たらしさで毎晩思い出してたからさ。だから、久々だけど懐かしい気はしないわ」

生徒会長「……そう」

元会長「相変わらず愛想のない奴ね。まぁいいわ。ねぇ、そこのメイド服はなんなの?」

「ずっと一緒に行動してたので、仕方ないのでこっちも連れてきました」

元会長「ふーん。あんたら、そういうことは連絡して指示を仰ぎなさいよ」

「……すみません」

元会長「ま、いいけど。なに、お友達? あんた、女ちゃん以外に友達できたんだー。あいつが離れて行動している所を狙ったつもりだったけど、こういうことだったわけ」

男(女先輩のことも知ってる? しかも監視をつけてたみたいなことを言ってる。ってことはやっぱり今日感じてた視線の件も間違いなさそうだな……。この普通そうに見える人が、一体どうして柄の悪い人らを従えてるんだ? それに会長に人生を狂わされたっていうのは一体……)

237: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:14:49.28 ID:Gz0DhWwFo

元会長「不思議そうな顔をしてるわね、メイドさん」

男「っ!」

元会長「あらら、そんなに怯えちゃって。あんたら、何かしたの?」

「それが元会長さん聞いてくださいよー。こいつ、メイドちゃんの携帯叩き折って、空き缶捨てるようにその場にぽいしたんですよ」

「……そうする必要があったから、そうしただけだ」

元会長「乱暴なことをするわね。あ、自己紹介が遅れちゃった。私はこの学校で去年生徒会長をやっていた元会長。そこの子のせいで学校を辞めることになった、可愛そうな女の子よ」

男(去年? 生徒会長をやっていた? ――不正をしていたことを会長が学校に教えたことで、辞めたり転校した役員の一人か……)

元会長「でも女の子が携帯を壊されたっていうのは辛いよねぇ。おーよしよし、お姉さんが慰めてあげるからこっちにおいでー」

男「……」

元会長「あれ、無視するんだ」

男(ここまで連れてきた人らは運よくばれなかったけど、流石に女の子相手に性別がばれない自信はない。僕の性別が誤認されてることだけが、この場で唯一持ててるカードだ。簡単には手放せない)

238: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:16:01.15 ID:Gz0DhWwFo

元会長「だんまりですか。なーんか、そういう態度ってどうかなってお姉さん思うな」

男「っ!」

男(表情は笑ってるのに、目だけは全然笑ってない……! この人が一番やばいのかも知れないっ!)

「元会長さん、こんだけの野郎に囲まれて普通に喋れる女の子って中々いませんてー」

「おい馬鹿、なんで言うんだよ。折角、びくびくしてるメイドってそそるものが見れてたのによ」

「ぎゃはっ、ここにもドSが一匹~」

「この中で一番のへなちょっこが言ってくれるじゃねぇか。まぁ、否定はしないんだけどよ」

「ぶはっ、しねぇのかよ」

元会長「……まぁ、確かにそうか。普通なら、こんな品のない連中に囲まれたら声も出なくなるものよね」

男(……今だけは女の子女の子してる格好で良かったって、本当に思えるな)

「おい、品がないってよ」

「お前のことだよ馬鹿」

「んだとコラ、あ?」

元会長「うるさい黙って」

「……」

「……」

男(一言で黙らせた。……完全に手綱を握ってるな。かなりの影響力を持ってるのか)

239: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:17:23.23 ID:Gz0DhWwFo

元会長「ふぅ、さてと。ねぇ、メイドさん。分かってないみたいだから教えてあげる」

男(なんだ?)

元会長「こっちにおいでっていうのは、物理的な意味だけじゃないのよ。こっちに来れば、もう怖がらなくていいってことなの」

男(どういうことだ……?)

元会長「まだ分からないって顔してるわね。つまり、私達側に来なさいってこと。今、あなたが怖いのは苛められる側にいるから。なら、こっちの苛める側においでってこと」

男「なっ……」

元会長「そうすればもう怖い思いをしないで済むわよ~? 今から会長ちゃんにはいろいろしてもらんだけど、そっちにいるならあなたにも一緒にやってもらうわ。本当はその子の友達だっていうならそうするところだけど、あなた可愛いし気に入っちゃった。だから、こっちに来るなら許してあげる」

男(……なんて綺麗な笑顔だ。今度は目元も優しそうに弧を描いているし、引き込まれそうなくらい魅力的。何もかも許されそうな笑み)

元会長「うーん、どうしたのかな? あ、もしかして疑ってるー?」

男(――――膝が震える。これほど恐ろしいものは初めて見た)

元会長「大丈夫、こっちに来た途端に嘘でしたとかはないよん。だから――」

男(この人は――)

元会長「――早く会長ちゃんを切り捨ててこっちにおいでよ」

男(――笑顔で人と人の関係を壊すんだ)

240: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:20:59.11 ID:Gz0DhWwFo

元会長「どうしたの? あ、もしかして友達が一人いなくなるのが嫌なの? それも大丈夫だよん。だって簡単な計算じゃない。一人減るけど、こっちに来れば私が友達になってあげるから一人増える。ほら、プラスマイナス〇。算数レベルの問題よ」

男(話して分かり合える人だとは思えない。腕っ節に自信はないし、相手の人数が多すぎる。逃げようにも当然出入り口に人はいるし、ほぼ囲まれた状態。……どうするっ!)

生徒会長「……男君」

男「会長?」

生徒会長「……行って」

男「何を」

生徒会長「これは私の問題。男君には関係ない。あなたが酷い目に必要はない」

男「……」

元会長「なになに、秘密の会話? この状況で何か打ち合わせしてもしょうがないと思うけどなー。それに、こそこそ話されるのなんか苛々するんだけど?」

男「……会長」

男(そんな弱々しい笑みなんか浮かべないで下さいよっ……!」

生徒会長「……」

男「……いやです」

生徒会長「え?」

男(一か八かだ……覚悟を、決めろっ……!)

241: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:24:07.40 ID:Gz0DhWwFo

元会長「あらら、無視し続ける上に意味分かんないことするわね。ねぇ、メイドさん。どうしてその子を急に抱きしめて、こっちを睨んでくるの? あんた、状況分かってる?」

男「僕は!」

元会長「は?」

男「僕は会長の恋人です! 何があっても会長の味方です! ですから、この場から動くことはありえません!」

「……あれ? あのメイド声が」

「ハスキー……にしちゃ、ちょっと低くないか?」

男(驚いてる――今だ!)

男「会長、こっちです!」

生徒会長「っ!」

「うおっ!?」

男「うぁああああ!」

「な、てめぇ! やりやがったな!」

「押さえ込め!」

「おい、生徒会長の方が!」

生徒会長「男君!」

男「会長! 行ってください! 僕に構わないで!」

生徒会長「でも!」

男「はやくっ!」

男(僕の本当の性別をいきなりばらすこと、言ったことと違う行動をを即座に起こす。そして突然出口へ走って付近の人へ体当たり。不意をつくことは上手くいった。後は会長が逃げてくれれば……!)

元会長「生徒会長ちゃん、行けばこの男の子の両腕を折るわ」

生徒会長「っ!」

男「くっ! 会長、いいから早くっ!」

「ざ~んね~ん! 一瞬でも足を止めてくれれば十分なんでしたぁ~!」

生徒会長「あ……っう」

「痛い? ごめんね~? でも、逃げたからいけないんだよ。ほら、元の場所に戻ろうね~」

生徒会長「男君、ごめん……」

男「……いえ、いいんです」

男(失敗、か……)

242: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:25:56.87 ID:Gz0DhWwFo

「元会長さん、こいつ女装野郎どうします?」

元会長「……縛っておきなさい」

「わっかりました! おい、お前ベルト貸せ」

「は? なんで?」

「話聞いてなかったのかよ。こいつの腕を縛るんだよ」

「あー、なるほど。ってベルトしてるの俺とお前含めて二人だけなの? お前らどんだけ腰パンなんだよ」

「元会長さん、生徒会長ちゃんの方はどうします?」

元会長「そうね、二人とも腕を縛っておいて」

「わっかりました~」

元会長「はい、みんなご苦労様。あとはまた少し離れて見ててくれればいいわ」

「へーい」

「わかりやした~」

元会長「……さてと、あんた男の子だったんだ」

男「ええ、実はそうだったんですよ」

男(……これでこっちの手札はなくなった。話が通じるとは思えないけど、今は会話を続けるしかない)

元会長「可愛い顔してるから、つい騙されてしまったわ。あ、身体は起こさないでいいから、そのままうつ伏せでいなさい。あんたはちょっと油断ならないわ」

男「……普段はそこそこ男寄りな顔してるんですけどね」

男(手札がなくなった上に警戒もされた、か。……状況は悪くなる一方だな)

元会長「ふーん、あっそ」

男「ぐっ……!」

生徒会長「男君!」

男(っいたぁ……なんだ? 頭を踏みつけられてるのか?)

243: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:27:51.47 ID:Gz0DhWwFo

元会長「ねぇ、今なにを考えてる?」

男「……女装男子の腕を縛って寝転ばせている上に、頭を踏みつけてくるなんて高尚なご趣味だなって」

元会長「あはっ、女装はあんたが勝手にやっていることだけどね。痛い?」

男「そりゃ、そうやってどんどん力を加えてくれば痛いですよ」

元会長「ふーん。私、今スカートでしょう? 上に目を向ければ中身が見える訳だけど、興奮する?」

男「残念ながら僕は会長一筋なので。あと、この状況を喜べる性的な嗜好もありません」

元会長「あっそ、つまんないわね。そっか、あんた恋人なんだっけ。……ねぇ、すぐ横で恋人が頭を踏みつけられているけど、あんた今どういう気分?」

生徒会長「男君から足を退けて」

元会長「睨みつけちゃって。おー怖い怖い。……そっかそっか、あのお面を貼り付けたようなあんたが変わったと思ってたけど、こういうことか」

生徒会長「元会長ちゃん!」

元会長「あはっ、あはははっ! 怒ってるの? あのあんたが? へぇーそうなんだ。へぇー……」

生徒会長「……なにを考えてるの?」

元会長「別に? 今日はあんたを虐めようと思ってきたわけだけど、何してもいい表情してくれなさそうだったからさ。いろいろあの手この手を考えてきたんだけど……その顔見たらとてもいい手を思いついたわ」

生徒会長「……まさか」

244: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:28:43.61 ID:Gz0DhWwFo

元会長「あ、その前にこれだけはやっておかないとね。あんた、櫛出しなさいよ。いつも持ち歩いてるんでしょ?」

生徒会長「!」

男(この人はそれを知ってるのか……! どうするつもりだ!?)

元会長「大事してる櫛なんでしょ? ほら、早く渡してよ」

生徒会長「……」

男(この状況で渡して何も起こらない訳がない! 会長のお母さんの形見だぞ。考えろ、考えろ………)

元会長「迷うの? じゃあ、こうしましょう。あんたが櫛を渡したら、この彼氏君に酷いことするのはやめてあげる」

生徒会長「……それ、は」

男(くそ、早く何とかしないと! 何とか、何とか…………あ)

男「……元会長さん」

元会長「なぁに?」

男「一つお教えしたいことがありまして」

元会長「彼氏君が私に? ……言っとくけど、くだらないこと言ったら分かってるわよね?」

男「いえ、会長が返事に困っているようなので、助け舟を出すだけです」

元会長「助け舟?」

男「はい。実はですね、会長は今櫛を持ってないんですよ」

245: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:30:02.13 ID:Gz0DhWwFo

元会長「持ってない?」

男(これは賭けだ。この人が会長の櫛について詳しく知っていない可能性に全力で賭ける……!)

元会長「でも、おかしいわね。とっても大事なものだから、どんな時もいつも持ち歩いてると聞いたのだけど?」

生徒会長「……」

男「そう言われましても、実際そうなんです。だから会長に櫛を渡せといっても仕方がないんですよ」

元会長「……そうね。あんたが言っていることが本当か、私には分からない」

男「はい」

元会長「だから、こうしましょう。今からあなたの恋人が本当に持っていないか、周りの男達に調べてもらいます」

男「っ!」

246: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:31:42.21 ID:Gz0DhWwFo

「まじですか元会長さん!」

「俺、胸ポッケ探すぅ!」

「俺スカート! 絶対にスカート!」

生徒会長「……」

元会長「彼氏君、見えないだろうから教えてあげるけど、あんたの彼女とてもいい顔しているわよ。怯えてるけどそれを表に出そうとはしてませんって顔。でもこれって、私悪くないわよね? あんたがないって言ったから、それを確かめるために私は調べないといけなくなった。だから、こうなったのってあんたが悪いわよね?」

男「……」

元会長「そこのところどうなのかしら?」

男「……その必要はありません」

元会長「あはっ、声が弱々しいわよぉ? どうして必要がないのかしら?」

男「だって、櫛は僕が持ってるんですから」

元会長「は?」

生徒会長「……ぇ」

男「会長の櫛は僕が持ってるんです。スカートの右ポケットに入ってます」

247: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:32:38.58 ID:Gz0DhWwFo

元会長「……他の誰かが触れるのも嫌うくらい、大事な櫛って聞いていたけど?」

男「僕は恋人ですよ? 当然、会長にとって特別になるに決まってるじゃないですか」

元会長「……」

男「疑ってるんですか? それなら調べればいいじゃないですか。腕縛られてうつ伏せになってるんですから、僕に何かできるわけでもないんですから」

元会長「……ねぇ、ちょっと」

「はい」

男(直接は調べないのか。本当に何かできるわけじゃなかったけど……思っていた以上に警戒しているみたいだな)

「……ありました。たぶん、これですよね?」

元会長「……それ頂戴」

「どうぞ」

元会長「……ふーん、なるほどね」

男「本当だったでしょう?」

元会長「……」

男(賭けに勝った……のかな?)

248: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:34:24.11 ID:Gz0DhWwFo

元会長「……今からゲームをしましょう」

男「ゲーム? 急に何を……」

元会長「ルールは簡単。今から男達の中から一人選ぶわ。彼氏君にはそいつと戦ってもらいます」

男「戦う?」

元会長「そう。それで彼氏君が参ったって言えば負け。簡単でしょう?」

男「……腕を縛っているベルトは?」

元会長「外すと思う?」

男「ですよねー……」

男(つまりは一方的に殴られるサンドバックになれってことか。……どうして急にこんなことを言い出したんだ? 櫛の賭けに失敗した? それとも単純に苦しめるためが理由なのか?)

生徒会長「元会長ちゃん! 私達の問題に男君は関係ない!」

元会長「そうは言ってもねぇ。でも彼氏君自身が言ったのよ? 何があってもあんたの味方だって。それってあんた側に立って、私と敵対するってことよねぇ。それに――」

男「っぅ!」

男(急に踏みつける足の力が増して……!)

元会長「あんたの彼氏君のこと、私とーっても気に入らないんだよねぇ」

249: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:35:39.88 ID:Gz0DhWwFo

生徒会長「そんな理由で……!」

元会長「はいはい、あんたの意見なんてこの場では誰も求めてないから。それより、彼氏君の相手は……そうね、あんたやりなさい。ってか、やりたいでしょ?」

「さっすが元会長さん! わかってるぅ~!」

元会長「この彼氏君が生徒会長ちゃんの恋人って分かった瞬間から、あんた目つき変わってたからね。ずっと好きだったんだもんね、生徒会長ちゃんのこと」

生徒会長「えっ……?」

男(どういう、ことだ……?)

「その反応、やっぱり気づいてなかったんだね、会長ちゃん。生徒会室で会った時に反応なかっから、もしかしてと思ってたけど」

生徒会長「……んな……そんな、あなたは、まさか」

元会長「まぁ、この子も随分と変わったからね。この学校にいた時は何の手入れもしていない髪に、野暮ったい眼鏡をかけたガリ勉もどきだったのに、今じゃ頭の悪そうな金髪のチャラ男だし」

「ひっでぇ~言いようですわー。こっちの世界に引きずりこんだの元会長さんじゃないですか~」

元会長「あんたが勝手についてきただけでしょうに」

生徒会長「……元書記、君……なの?」

250: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:37:48.75 ID:Gz0DhWwFo

元書記「あ~、やっと気づいてくれたんだ、会長さん」

生徒会長「嘘……」

元会長「嘘じゃないわ。彼はあんたが人生を狂わせたもう一人の人間、元書記君。私が停学になって学校をやめたら、どういうわけかついてきてね。お勉強ばかりしていた彼が、今じゃすっかり頭の悪そうな非行少年よ」

元書記「ちょっ、元会長さんひどっ!」

「ぶはっ、頭の悪そうとか、元会長さんの言うとおりだわ!」

「やべぇ、すげぇうける」

元書記「てめぇらうるせぇぞ!」

生徒会長「……」

元会長「顔面蒼白。良いわねぇ、今からその顔が歪んでいくと思うと嬉しいわー」

元書記「ったく、元会長さん、早く足元のそいつをぼこらせて下さいよ! 俺の会長ちゃんと恋人になってるとか、マジ許せねぇんで! っていうか、もう始めていいですか!?」

元会長「別に生徒会長ちゃんはあんたの物じゃないと思うけど。でもそうね、そろそろ始めましょうか。けど、その前に……あんたナイフ持ってたわよね?」

元書記「持ってますけど、なんすか?」

元会長「渡しなさい。あんたすぐに出すからね」

元書記「……まぁ、良いですけど」

元会長「今日つれてきた男達の中で元書記君が一番弱いけど、ここで残念そうな顔をするあんたはこの中じゃ一番危ないのかもね」

251: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:39:34.51 ID:Gz0DhWwFo

元書記「なんでもいいですって! 早くやりましょうよ!」

元会長「……」

元書記「元会長さん?」

元会長「……私が待てって言ってるのに待てないの?」

元書記「ひっ……、ま、待てます」

元会長「……やっぱり元書記君はいい子ね。ナイフを取り上げたのは時間をかけて彼氏君と遊んでもらうためよ。始めてもそのことは頭に置いておきなさいね?」

元書記「……はい」

元会長「さてと、男君ごめんね~、長々と放置しちゃって」

男「いえ、いろいろと知ることができたので良かったですよ」

男(今回のこれは会長に対する報復だったということか。…………逆恨みもいいところだ)

元会長「……ねぇ、彼氏君。今から元書記君と遊んでもらうけど、その前に一つ提案してあげる」

男「提案?」

元会長「ここでごめんなさいをしたら帰っていいことにするわ」

元書記「元会長さん!? 俺それ、納得が――」

元会長「あんたは待ってなさいって言ったよね?」

元書記「……すみません」

252: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:41:41.00 ID:Gz0DhWwFo

元会長「はぁ、元気すぎるのもどうかと思うわ。それで彼氏君、どうする?」

男「……元会長さん」

元会長「なぁに?」

男「こっちの勝利条件はなんですか?」

元会長「勝利条件?」

男「僕が参ったと言えば負けなんですよね? では、勝つためにはどうすればいいんですか?」

元会長「……逃げることなんて眼中になくて、勝つつもりでいるんだ」

男「はい」

元会長「……ふーん、即答なんだ。ねぇ、あんたを虐めるのが目的なのに、勝利条件なんて設けると思う?」

男「……」

元会長「……けど、気が変わったわ」

男「というと?」

元会長「良いでしょう、可能性をあげる。あんたがその状態で元書記君の手を地につけさせたら、勝ちってことにしてあげる」

男「……勝ちっていうのは?」

元会長「疑い深いわね。あんたと生徒会長ちゃんを解放する……これでどう?」

男「……分かりました、ありがとうございます」

元書記「元会長さん?」

元会長「あんたが手をつけなきゃいいだけの話よ。分かってるわよね?」

元書記「……はい」

元会長「はーい、みんな一応屋上の端に広がって囲み作ってねー」

「わっかりましたー」

「俺らは見てるだけか……」

「まぁ、後でお楽しみがあるだろうからいいだろうよ」

「それもそうか!」

元会長「はいはい、そういうのはいいから、あんたはあっち、そんでこっちにも一人きて」

253: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:43:02.96 ID:Gz0DhWwFo

男(……ようやく足を退けてもらえた。今、注意はこっちに向いてないけど……また不意をつくのは無理そうだな。大人しくしてた方が良さそうだ)

生徒会長「……男、君」

男(不安と悲しみでいっぱいの表情を浮かべる会長。……こんな顔、始めてみるな)

生徒会長「ごめん、なさい。私……」

男「大丈夫です」

生徒会長「え?」

男「きっとどうにかなります」

生徒会長「……」

男(表情は一転せず、か。まぁ、どう考えても状況的に強がりを言ってるようにしか聞こえないよなぁ)

男「……会長、一つ約束して下さい」

生徒会長「……約束?」

男「僕はあの元会長さんに会ったばかりですが、彼女のやり方が分かりました。彼女のやり方は人の弱みに付け込むことです。そうしてから人をコントロールするんだと思います」

生徒会長「……うん」

男「恐らく、僕と彼……元書記って人が戦っている時に、元会長さんはきっと会長の心を挫こうとしてくるでしょう。ですので、約束です」

生徒会長「……」

男「僕は負けませんから、会長も負けないで下さい」

生徒会長「男君……」

254: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:45:33.82 ID:Gz0DhWwFo

元会長「ん~? 人が準備をしている間に何をこそこそしてるのかなぁ?」

男「戦いに赴く前に恋人と交わすやり取りなんて決まってるでしょう?」

元会長「……あはっ、彼氏君って本当に面白いね。その立場でよく減らず口が出る。あんたみたいのが生徒会長ちゃん側だってのが勿体ないわ」

男「それはどーも。嬉しくないです」

元会長「……本当に面白い子。さぁ、会長ちゃん。こっちの特等席に来て、愛しの彼氏君の勇ましい姿を一緒に見ようね~」

生徒会長「……元会長ちゃん、私が男君の代わりに――」

元会長「あはっ、何言ってんの? そうやって苦しそうにするあんたを見るために、これからやることをするんじゃない。ほらっ、来なさいよ」

生徒会長「っ! 男君、すぐに参ったって言って!」

男「会長、約束のこと、お願いしますね」

生徒会長「男君っ!」

元会長「はいはーい、悲劇のヒロインごっこはいいからこっちに来ましょうね。じゃあ、彼氏君は中央に行ってね。ごめんね、晴れの舞台がこんな安っぽいリングで」

男「いえいえ、こんなくだらないことに似合った十分なものですよ」

元会長「そう、なら良かったわ。私も生徒会長ちゃんと一緒に応援してるから頑張ってね!」

男「楽しそうな笑顔で言ってますけど、それってナイフ持った私が会長の傍にいるんだから下手なことするなよ、ってことですよね?」

元会長「ちゃんと理解しててくれて助かるわ。勝負自体のことなら何しても良いけど、叫んで助けを呼ぼうとかしないでね? このお祭り騒ぎだから、ここで少し騒いだくらいじゃ大丈夫だと思うけど……一応、ね?」

男(言ってるとおり、校庭にステージがある関係で常に音楽が鳴り響いてるような状況なのに…………とことん抜かりのない人だな)

男「……分かりました」

生徒会長「男君!」

男「じゃ、会長、ちょっと行って来ます」

255: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:47:06.98 ID:Gz0DhWwFo

元書記「おせぇよ」

男「すみません、愛しの人との会話が長引いて」

元書記「……うぜぇ、てめぇ本当にうぜぇ。こんな状況でも自分は余裕ですよってか? あ?」

男「そんなわけないじゃないですか。心底びびってますし、この場から一刻も早く逃げ出したいです」

元書記「じゃあ、何なんだよその態度はよぉ!?」

男(……会長の笑顔を守るって決めたから。あの人の前だけでも良い、強い自分になると決めたから)

元書記「無視してんじゃねぇよ!」

男「あなたにはどうでも良いじゃないですか。会長のことが好きだったけど、僕に取られちゃった負け犬さん?」

元書記「……」

男「どうしたんですか、負け犬さん? あっ、すみません……ご傷心の最中なのにこんなことを言って。負け犬さん、本当にごめんなさい」

元書記「……ろす」

男「え、聞こえないですよ負け犬さん。可愛い会長の恋人の僕はそんなに耳が良くないんですよ」

元書記「殺す殺す殺す、絶対にてめぇはぶっ殺してやるよぉおおおおおお!

男「やっぱり負け犬さんってきゃんきゃん吠えるものなんですね!」

元書記「あぁああああああぁあ!」

男(慣れないから上手くいくか心配だったけど、第一段階は成功。あとは……根性論かぁ……)

256: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:49:46.20 ID:Gz0DhWwFo

…………………………
……………………
………………
…………
……

元書記「おらぁあああああぁ!」

男「――――っ!」

元書記「くっそぉおお! ちょこまか動いてんじゃねぇよ!」

元会長「おー、また避けた。あんたの彼氏君、結構頑張るわね」

生徒会長「……」

元会長「最初に挑発したのはああして激情させて、動きを単調にさせるためか。よく考えてるわね。私が話を持ちかけてすぐに作戦を考えてたのかな?」

生徒会長「……」

元会長「――でも」

男「あぐっ! っぁ……」

生徒会長「男君!」

元会長「格闘技の経験はないみたいね。動きも慌しいし、もう何発も貰ってる。時間と状態を考えたら驚くくらい粘ったと思うけど、そろそろ限界かな?」

元書記「っはーっ! はーっ! はっ、ぎゃは、てめぇの気に食わねぇ面にまたぶち当ててやったぜぇ!」

「元書記―! 動きが鈍ってんぞー!」

「てか、どんだけ時間かかってんだよ。お前やっぱりよえーわ」

「そろそろ本気出してもいいんだぞー?」

元書記「っせぇな! はーっ、はーっ! 外野は黙ってろよ!」

男「はぁっ……はぁっ……、可愛い顔でしょう? 会長はこの可愛い感じが好きらしいですよ。元書記さんの負け犬面と比べたら、やっぱり僕の方が好みってことみたいですね?」

元書記「……っめぇえええええ! じゃあ、その青あざと血で汚れた顔をもっとぐしゃぐしゃにしてやるよぉおおおお!」

257: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:51:20.65 ID:Gz0DhWwFo

元会長「……けど、挑発は止めない、か。ああやって顔を狙うように仕向けてるのも計算してやってるのかな? 一方的に殴られたり蹴られたりしてるのに、よく精神が持つよね。私が今まで揺さぶりをかけてきた中じゃ、精神的な強さは一番かも」

生徒会長「……」

元会長「勝利条件を作ったのは希望を持たせることで、なるべく長く遊ぶためだったけど……これは余計なことをしてしまったかな?」

生徒会長「……元会長ちゃん、どうしてこんなことをするの?」

元会長「こんなこと? それはどれのこと? あんたの彼氏君が今の状況に置かれてること? あんたに仕返しに来ていること? それとも元書記君をあんな風にしたこと? 他にもいろいろと思い浮かぶから、どれのことか分からないんだけど」

生徒会長「……」

元会長「そこで黙られても困るわよ。そうね、彼氏君の件はあんたを効果的に苦しめるためよ。仕返しに来たのは他にやることが思い浮かばなかったからかな。元書記君は本当に勝手についてきて、私の周りにいた人達の影響を勝手に受けただけなんだけどね」

生徒会長「……ずっと、気になってた」

元会長「何が?」

生徒会長「どうして、あんなことをしたの?」

元会長「あんなこと?」

生徒会長「……あなた達がやめることになった切っ掛けのこと」

元会長「あぁ、横領のことか。長い目で見れば小金に過ぎなかったけど、学生にとってはかなりの大金だったからね。ちょっと目が眩んじゃったのよ」

258: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:53:59.86 ID:Gz0DhWwFo

生徒会長「それは嘘」

元会長「は?」

生徒会長「あなたはお金なんかに目が眩むような人じゃない」

元会長「……あんたには……いえ、あんただけにはお見通しか」

生徒会長「だからこそ、不思議だった」

元会長「そうねぇ…………事件を起こす前は私がカリスマ会長だなんて言われてたの覚えてる?」

生徒会長「……うん」

元会長「あんたみたいに容姿が特別優れてるわけじゃないのに、私は当時一年せいのくせに会長をやっていた。それはどうしてだと思う?」

生徒会長「……人と話すのが上手だったから」

元会長「流石、生徒会長ちゃんね。そう、私は会話が上手で……自分で言うのも何だけど人身掌握が優れてる。人の心に入り込むのが得意なのよ」

生徒会長「……」

元会長「でも、私は自分でまだその力が未熟だと思ってたから、日々いろいろな方法を考えては実験を繰り返していたわ」

生徒会長「人の心を実験……!?」

元会長「怒ってるの? まぁ、あんたは真面目だからね。でも、心理学の実験みたいなものよ。人の心を学ぶために必要なことだわ」

生徒会長「……それは心理学を学ぶ人達に対しての冒涜」

元会長「そうでしょうね。私も別に人助けをするために行っていたわけじゃないし、目的は人を操る術を学ぶことだったし。今思えば、女ちゃんが私のことを好きじゃなかったのは、何をしてるとは分からなくても、何かしてると勘付いていたからなんでしょうね」

259: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:56:25.72 ID:Gz0DhWwFo

生徒会長「……」

元会長「睨んじゃって、可愛いー。あ、話が逸れたわね。えっと、それで実験を繰り返していたわけだけど、私は……そうね、丁度去年の文化祭前くらいだったかな? あることに気づいた」

生徒会長「あること?」

元会長「それは人を短期間でコントロールするには、心に隙ができた時に入り込むことが効果的だってこと。そして、その隙を作るには悪意を引きずり出すことが一番簡単だってこと」

生徒会長「……なに、を」

元会長「ねぇ、生徒会長ちゃん。話は少し変わるけど、あんたは悪人ってどんな人がなるか知ってる?」

生徒会長「……知らない」

元会長「そうでしょうね。でも、それは当然よ。だって、悪人になる人の条件ってないんだもの。人はみんな等しく悪人になる可能性を秘めているわ」

生徒会長「……」

元会長「今日連れてきている彼らもそうだし、例えるなら、元書記君が良い例よね。あの子は学校をやめる前はいかにも勉強しか知りませんって感じで、悪いことなんかしそうになかった。けど、ちょっとあなたのことで心を突いたら、ずるりと道を踏み外して今では見ての通りよ」

260: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:57:12.41 ID:Gz0DhWwFo

生徒会長「元書記君……」

元会長「モテる女は辛いわねぇ。……ま、それは置いておいておきましょう。都合が良いから去年の役員達のことでこのまま話すけど、みんな誰しも悩みの一つ二つは抱えているものよ。横領の件は実の所、それぞれの悪意を膨れ上がらせるためのスパイスにしようとしただけ。お金ってそういう面でもかなりの力を持つものだから」

生徒会長「……」

元会長「上手くいってたんだけどなぁー。私にとってはあんただけが本当にイレギュラーだった。私が出会った時、あんたは母親を亡くしたばかりだったから、ある意味生徒会役員達の中では一番簡単に崩せると思ってたんだけどね。そのあんたにやられちゃったんだから、私も少し調子に乗りすぎてたってことよねー」

261: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:58:03.16 ID:Gz0DhWwFo

生徒会長「……そんな風に、思ってたの?」

元会長「は? なにが?」

生徒会長「私に近づいてきたくれた時……友達になろうって言ってくれた時、そんな風に思ってたの?」

元会長「……」

生徒会長「元会長ちゃん……」

元会長「……そうよ、当たり前じゃない」

生徒会長「…………そう、なんだ」

元会長「……これでも泣かないんだ」

生徒会長「え……?」

元会長「母親を亡くしたあんたにどんな優しい言葉を投げかけてやっても、あんたは泣きやしなかった。あの時、友達……だってことになってた私を学校から追い出す時もそう、あんたは涙一つ見せなかった」

生徒会長「元会長、ちゃん?」

元会長「だから私は……!」

生徒会長「……」

元会長「……」

262: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 22:59:30.94 ID:Gz0DhWwFo

生徒会長「……男君は私に約束した」

元会長「は?」

生徒会長「自分は負けないから、私も負けないでって」

元会長「……」

生徒会長「私はそれに応えなきゃいけない。だから、元会長ちゃんの言葉に負けない。……それに、約束がなくても、元会長ちゃんの言うことに負けたくない」

元会長「それはどういう、意味?」

生徒会長「私は、あなたと過ごした時間が全部嘘だったとは思わない。去年の文化祭前まで、たった半年と少しだったけど、私達は確かに友達だった。そう、信じたい」

元会長「……私の話聞いてた? それなら、どうして友達の私が学校をやめるはめになることをあんたはしたのよ?」

生徒会長「友達が悪いことをしていたら、止めるのが友達の役目。私はあの時、何度もあなたにやめるように言った」

元会長「それは……」

生徒会長「でも、あなたは止まらなかった。……私は、自分の力だけで止めることができなかった。だから、学校に伝えた」

元会長「……」

生徒会長「あの件で元会長ちゃんが私を恨んで、友達じゃないって言うのは分かる。けど、私はそれでもあなたのことをまだ……」

263: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:00:20.79 ID:Gz0DhWwFo

元会長「……」

生徒会長「……」

元会長「……なーんてね。さっきみたいに情へ訴えかけても、あんたには意味がないんだったわね。なに真面目に語っちゃってるのよ。馬鹿みたいよあんた」

生徒会長「……」

元会長「……見なさい。あんたの愛しい彼氏君もそろそろ限界みたいよ?」

生徒会長「……っ! 男君!」

元会長「……」

264: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:01:15.23 ID:Gz0DhWwFo

男「がはっ……ごほっ、う、はぁっ……」

男(お腹に……いいの貰っちゃった、な。顔にばかり集中して……る、と思ってたから、油断、した……)

元書記「はーっ! はーっ! はーっ! はーっ!」

「メイド男子ダウーン! さぁ、再び立ち上がることはできるのかぁ!?」

「おいおい、元書記の方が息切れ激しいじゃねぇか。あれじゃ、折角相手が倒れてるのに追い討ちできねぇじゃん」

「あいつは俺らと違って喧嘩慣れしてるわけじゃないしな。特に武道やってたわけじゃないし」

「あーあー、見ろよあいつの拳。皮がずり剥けて血だらけになってんぞ。これじゃあ、女装野郎の顔面が赤いのどっちの血かわかんねぇよな」

元書記「はーっ! はーっ! っるぇせーよ……てめぇら……」

「ぶはっ、言い返す元気もなくなってんじゃねーか」

「あいつ、相手が腕縛られてなかったら普通に負けてるんじゃね?」

元書記「っせぇー……はーっ……うるっせぇ、はーっ……よ」

265: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:02:33.58 ID:Gz0DhWwFo

男(……始まって、から……どれくらい時間が経った? ……一時間? 三時間? もしかして、まだ五分?)

元書記「はーっ……はーっ……」

男(僕は……何でこんなことを、している? どうすれば、この苦しさは終わる?)

元書記「……この、女装野郎……とっとと参ったっていえよ、……くそ」

男(参った? ……あぁ、そうか。そう言ってしまえば、この苦しみが終わるんだっけ?)

元書記「はーっ……はーっ、はーっ……はーっ」

男(元書記って人、かなり消耗してる。……腕を縛られた状態で、これだけ追い込んだんだ。僕、凄い、頑張ったよね? ……これだけやったんだ、元会長さんも、認めてくれるんじゃないか? ……参ったって、言っても良いんじゃないか?)

男「……」

男(参った。一言そう言えばいいだけで全部終わる)

元書記「はーっ……はーっ……」

男「……ごほっ! ぐ、はぁ、はぁ……」

男(――なのに、なんでだ? なんで僕の口は動かないんだろう)

266: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:03:19.38 ID:Gz0DhWwFo

元書記「はーっ……はーっ……ちっ……」

男(会長も、ずっと見てたんだ……きっと、許してくれる……)

生徒会長「男君!」

男(会長の、声だ……どんな顔、してるかな? やっぱり、悲しい顔かな? 下手したら、泣いてたり……)

生徒会長「男君!」

男(ちゃんと見えない……瞼が腫れてるのかな? 会長、一体どんな表情を――――っ!)

生徒会長「男君! 私、負けない!」

男「会長……」

男(――――あぁ、これは目が覚める。さっきまでの濁った思考が嘘みたいだ)

生徒会長「だから……だから、男君」

男(悲しい顔? 泣いてるかも? とんでもないな)

生徒会長「男君も……負けないでっ!」

男「なんとまぁ…………凛とした顔なことで」

元書記「はーっ、はーっ……てめ、なにを、呟いてんだ……?」

267: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:05:05.08 ID:Gz0DhWwFo

「うはー、あの子、可愛い顔してとんでもねぇな」

「普通、こんなボロボロな彼氏を見てあんなこと言わねぇよなぁ? 死体に鞭打つってこのことじゃね?」

「お前それ、正確には死者に鞭打つだし、女装君は死んでもないから」

「愛の力ってか? 漫画の読みすぎなんじゃねの?」

「……いや、そうでもないみたいだぞ?」

元書記「……おい、てめ、どういう、つもりだ!?」

男(僕も僕で単純だな。空っぽになったと思ってたけど、まだ搾り出す体力はあったみたいだ)

元書記「なに、起きやがろうと、してやがる……!」

男(身体中は痛いし、両腕が縛られていることに代わりはないけど――――やれることは、まだある)

元書記「なめ、やがって……!」

男(チャンスは一度だけ)

元書記「らぁあ!」

男「ぐぅっ!」

男(蹴り飛ばして来るのは、腕と肩で受ける。どうせ使えない両腕だ、これからやることに必要ない)

元書記「はーっ! はーっ! ……まだ、立とうってのか? あぁ!?」

男(耐えろ、耐えろ)

元書記「おらぁ! あぁあ!」

男(耐えろ、耐えろ……!)

268: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:06:53.47 ID:Gz0DhWwFo

元書記「くそぉおおおお! はーっ! はーっ! どうして、てめぇは参ったって言わねぇ!? くそくそくそ! 何でそうやって立とうとしてるっ!」

男(力を溜めろ、搾り出せる力の全てを一瞬に注ぎ込め!)

元書記「なら、お望み通り立たせてやるよぉお!」

「あー、あいつ髪掴んじゃったよ」

「え、駄目なの?」

「あれは暗黙の了解で禁止だろ」

「痛いんだよなぁ、あれ。髪掴まれると何もできなくんだよ」

「しかしすげぇ図だな。女装した野郎の髪掴んで膝立ちさせるとか。どんなプレイだよ」

「ふはっ、お前、笑わせんなよ」

元書記「どうだよこら? あぁ!?」

男「――」

元書記「はーっ、はーっ……いてぇか? 声もでねぇか?」

男「……元書記さん」

元書記「あぁ? もう謝ったって許さねぇからな!?」

男「あなた、僕達をここまで連れてくる時、会長と腕を組みましたよね?」

元書記「……はぁ?」

男「僕、まだ会長と腕組んだことないんですよ」

元書記「……はっ、頭殴られすぎて、おかしくなっちま、ったのか? それが、どーかしたか、よ?」

男「会長、凄い嫌がってたじゃないですか。それに――」

元書記「だからどうしたんだよ! もういい! てめぇの髪をまとめて引き抜いて、それからまたサンドバックにしてや――――るぅ?」

269: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:07:32.35 ID:Gz0DhWwFo

男「――見てて非常に不愉快でした」

270: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:08:45.27 ID:Gz0DhWwFo

元会長「髪の毛が……!?」

元書記「なっ、え!?」

男「ぁあああっ!」

元書記「ぐぎゃっ!?」

271: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:10:08.10 ID:Gz0DhWwFo

元会長「……嘘でしょ?」

「マジか……勝ちやがった……」

「あの髪、千切れたのかと思ってびびったけど……そうか、エクステつけたのか」

「……顎をかち割るかのような頭突き」

「おい、元書記のやつ白目剥いてるぞ!?」

「一発でかよ。情けな……」

「でもあれは仕方がないと思うぜ? 体力なくなってたところにあれは誰でもきついだろう」

生徒会長「男君!」

男「会長……あ、そんなくっついたら、制服……汚れちゃいますよ……」

生徒会長「そんなことどうでもいい!」

男「会長……」

272: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:11:36.13 ID:Gz0DhWwFo

元会長「……」

男「元会長、さん……」

元会長「……まさか、その状態で勝つとはね。心の底から驚いたわ。少し、反則だった気もするけど」

男「……反則? 戦いの前に元会長さん、言いましたよね? ……勝負自体のことなら、何しても良いけどって」

元会長「それは……まぁ、確かに言ったかも知れないわね」

男「かも、じゃなくて言ったんですよ。……元書記さん、手をついてますよね」

元会長「……そうね、手をつくどころか完全に倒れ伏せてるわね」

男「なら、僕の勝ちで僕らは解放ってことになりますよね?」

元会長「そうなるわね」

男「なら……」

元会長「でも、それって私がちゃんと約束を守るって前提が成り立てば、よね?」

男「……」

生徒会長「そんな……!」

元会長「驚くこと? 何処に私が約束を守るって保障があったの? 今回のことを企てた私が、律儀に約束を守る必要があるとでも?」

生徒会長「元会長ちゃん……」

元会長「……生徒会長ちゃん、そんな目をしても無駄よ。だって、私はあなたに――」

「……あの、元会長さん。もういいんじゃないですか?」

273: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:12:43.90 ID:Gz0DhWwFo

元会長「……は?」

「えっと、なんつーか、その女装野郎……いや、男ってやつ、それなりに頑張ったって言うか……」

元会長「何を言い出すのあなたは……私に意見するの?」

「あ、そ、その、そういうわけじゃ……!」

「……元会長さん、俺もこいつと同じ意見です」

元会長「あなたまで……?」

「その野郎は女みてぇ顔してるけど、すげぇ漢らしいと思ったっていうか……。そいつの熱さは同じ野郎の一人としては感動したっていうか……」

「はぁ? お前、何言ってんだよ。漫画ばっか読んでるからそんな風に思うんだよ」

「……いや、俺もそう思った」

「……俺も」

「うざ、今まで不良ぶってたやつらが何を言い出してるんだか」

「だけどよぉ」

「乙女みてぇなこと言ってんじゃねぇぞ?」

「はぁ? 喧嘩売ってんのか?」

元会長「……何この展開、意味分かんない」

「……元会長さん、どうしますか? 少ない人数でもあっちにつくやつが出るなら、逃げるには十分な時間を稼がれますよ?」

274: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:14:19.36 ID:Gz0DhWwFo

元会長「……」

生徒会長「……元会長ちゃん」

元会長「……」

男「……元会長さん、今何時ですか?」

元会長「……十七時前だけど、それがどうかした?」

男「そうですか。いやぁ、ここに来てから随分時間が経ったなぁと」

元会長「……あんた、何を待ってるの?」

男「はい? なんで時間を聞いただけでそうなるんですか?」

元会長「今になって思えば、あんたが私の言うことに対して、素直に乗ってきたことがそもそもおかしい。あんたなら私が約束を反故にすることも予想してたんじゃない? それならなるべく体力を温存できるやり方に、話を持っていこうとしたはず」

男「いくらなんでも買いかぶり過ぎですよ。元会長さんが言ってることは結果論です。それに僕の勝ち方を見てましたよね? ああいう反則手があったから、ちゃんと勝率があると踏んでの行動だったわけで……」

元会長「けど、やりようは他にもあったはず。それなのにこんなやり方を受け入れたのは……」

男「元会長さんは僕が勝負に勝ってしまったから、そういう風に思うだけですよそれに――――」

?「男! 待たせた!」

275: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:15:21.93 ID:Gz0DhWwFo

生徒会長「えっ?」

男「――とまぁ、ここまでいろいろ否定しましたが、元会長さんの思っている通りなのでした」

元会長「……意見をがらりと変えるのね。やっぱり、あんたの目的は最初から時間稼ぎだったか」

男「その通りです。……友、時間かかり過ぎ」

友「あほ、俺が気づいたこと自体が奇跡みたいなもんだっての。…………しばらく見ない間に随分と男前になったな」

男「死ぬかと思ったよ」

友「冗談抜きでそうみたいだな。大丈夫か?」

男「正直きつい。……ごめん、後のこと任せていい?」

友「おう。お前は安心して寝てろ」

男「うん、ありが、と……」

生徒会長「男君!?」

友「気が抜けたみたいですね。会長さん、そのまま見といてやって下さい。あ、一応気道の確保だけは気をつけて」

生徒会長「……うん」

276: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:17:14.61 ID:Gz0DhWwFo

友「さてはて……はじめまして、悪い人」

元会長「女の子の私がどうしてこの中の代表だと思ったのかな?」

友「全体の目の動き。指示を求める目がみんなあなたに集まってましたよ」

元会長「……なるほどね。確かにあんたは彼氏君の友人って感じだわ。その一筋縄じゃいかなそうなところが凄い似てる」

友「そりゃ、男の師匠は俺みたいなところがあるって言うか、友達同士って似てきちゃうよねっていうか?」

元会長「……みんながあんたの登場に呆気に取られてたから誰も止めなかったけど、ここまで来ちゃって良かったの? 今、あんたの周りにはいるのは、日頃から喧嘩慣れしてる男達なんだけど?」

友「屋上に続く階段のところに見張りを立ててましたよね? それなのに俺がここにいることが答えだと思いませんか?」

元会長「腕に覚えありってこと? 部活で鍛えてるとか?」

友「ふっ……会長さん、俺が所属する部活を言ってあげてください!」

生徒会長「……あ、私、友君が入ってる部活知らない」

友「……」

生徒会長「……」

元会長「……」

友「会長さん、そんな申し訳なさそうな顔しないで下さい。かっこつけた俺が悪かったんです……」

生徒会長「ごめんなさい」

友「いいでしょう、なら自分の口で言います。俺が所属する部は――――」

元会長「……」

「素手と考えると、空手や柔道とかか?」

「ボクシングもありえるな」

「けど、こいつの身体そこまで鍛えられてるようには……」

友「――ボランティア部です」

277: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:18:30.27 ID:Gz0DhWwFo

元会長「……」

生徒会長「……」

元会長「……とてもじゃないけど、強くなれそうな部活だとは思えないけど?」

「……元会長さん、こいつどうします?」

「取り押さえますか?」

元会長「そうね……でも見張り役がいたのにここへ来ているのは確かだから、慎重に……」

友「ボランティアは人と人との間で行われます」

元会長「……なに?」

友「そしてボランティア活動によって人と人は触れ合い、繋がりができて、人の輪が作られます」

元会長「……」

友「ボランティアって人と人がお互いを支えあう精神でできているんです。そうやって困っている人がいたら助けて、自分が困っていたら助けを求める。それがボランティアの基礎的な部分です」

元会長「まさか……」

友「男の困りごとは親友である俺の困りごと。だから俺も今回は助けてもらいました」

278: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:19:38.68 ID:Gz0DhWwFo

?「そろそろ良いかな? 友君」

友「はい、二人の安全を確保できる位置につけました。すみませんがお願いします……少女父さん」

少女父「任せなさい」

「でかっ!」

「二メートルはあるんじゃないか!?」

「マッチョってレベルじゃねぇぞ!?」

元会長「……なるほどね。あの人があんたの持つ強さってこと」

友「はい、出し惜しみせずに最初からジョーカーを出させてもらいます。自分の力は誰かの力、誰かの力は自分の力。これがボランティアの力ですよん」

元会長「ただの虎の威を借る狐じゃない……」

「お、おい、どうする?」

「やべぇんじゃねぇのか?」

元会長「みんな、慌てない。いくらあの人が強そうでも所詮は一人。こっちの狐を合わせても人数はこちらに分があるわ」

「そ、そうだな! 別に一人ずつ戦う義理はねぇんだ! いくらでかくても囲っちまえば……!」

279: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:21:39.21 ID:Gz0DhWwFo

友「あくまで親切心で伝えるけど、彼は少女父さんですよ。本校卒業生である、あの少女父さんです」

元会長「だからどうしたって……」

「この高校の少女父?」

「お、おい、俺、嫌な予感を覚えてるんだけど」

「き、奇遇だな。俺もとある人のことが思い浮かんでる……」

「身長二メートルほどの偉丈夫……鬼と見紛う筋肉の身体……この高校の卒業生…………嘘だろ?」

元会長「みんな、一体何を怯えて……」

「も、もしかして、あんた……いや、あなたはその昔この一帯周辺をしめて悪鬼羅刹と呼ばれた……少女父、さん?」

少女父「悪鬼羅刹……懐かしい呼び名だ。苦々しさと共に思い出すそれが、若い世代にまで浸透しているとは恥ずかしい限りだよ」

「本物……」

「む、無理だぁ! 勝てるわけがないぃ!」

「あ、俺死んだんじゃねこれ」

元会長「ち、ちょっと、みんなどうしたのよ!? たった一人を相手に……! 全員で行けば勝てるわよ!」

「無茶言わないで下さいよ元会長さん!」

「少女父さんはうるさいからっていう理由だけで、百人いた暴走族を一人で潰したことがある人なんですよ!?」

「煙草の吸殻をポイ捨てした他校の生徒を叱るために、その生徒がいる学校に単身で乗り込んで制圧しちゃたこともあるとか!?」

「三日三晩一睡もせずに喧嘩し続けたとか……」

「最強の座を奪おうとして喧嘩ふっかけたやつが、翌日には頭を丸めて不良やめたとか!」

「数々の逸話のある伝説の人なんです! ホント、この人だけは手を出したらやばいですって!」

友「そのどれもが尾ひれはひれついてるかもだけど、大よそ事実で、実はどれもが今の奥さんのためだったというのはあまりにも有名!」

「ひぃいいいい!?」

「にげ……たら余計やばいのか?」

「あ、てめぇ! そうやって一番に土下座すれば許されると思って!」

「すいませんしたぁあああ!」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」

280: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:26:37.11 ID:Gz0DhWwFo

元会長「……」

生徒会長「……元会長ちゃん」

元会長「……彼氏君に味方しようとするのが出てきて、その上この状況か。……駄目押しね」

生徒会長「元会長ちゃん、もう……」

元会長「分かってるわ。この状況が手詰まりなことくらい。それに――――」

「あ、番町! こちらでしたか! あ、もしもし、そうそうやっぱり屋上だったみたいだ。参加してるの全員集めてくれ」

「番町! ついに伝説が復活するんですか!? 年甲斐もなく、はしゃいじゃうんですけど!」

少女父「番町はやめろといつも言ってるだろう」

「野球部とサッカー部連合だぁ!」

「世話になった副会長のためなら喧嘩ばかりの俺達も今回ばかりは協力し合って戦うぜ!」

「おー友君、ここであってたのかな?」

「あのー、なんか生徒会長と副会長君がピンチって噂を聞いてきたんですけどー……大丈夫ですかー?」

「わっはっはっはっ! 緊急の人探しだからとはいえ、海パン姿で校内を歩き回るのはどうかと思うぞ!」

「……鼻眼鏡ナース姿の君に言われたくはないよ」

「やっぱりね、うん分かってわ。禁断の関係はやっぱり障害を与えたのよ。きっとそれは過酷な試練に違いないけれど、それを乗り越えることによって真の愛が芽生えるというものであって、それで――」

「制服を着た天使のピンチと聞いて!」

「可愛い女の子は愛でるものだって決まってんだろうがこらぁああっ!」

「あ、人が集まってるー。ねね、会長さんと副会長君がピンチって本当?」

281: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:28:06.11 ID:Gz0DhWwFo

元会長「――友って子の仕業か、どんどん人が集まり始めてるしね。あってないようなものだったけど、数の利も失われた。お手上げよ」

生徒会長「元会長ちゃん、私は……」

元会長「生徒会長ちゃん、あなたを屈服させることができなくて残念だったわ」

生徒会長「……」

元会長「……さようなら。もう会うこともないでしょう」

友「白旗、ってことでいいんですね?」

元会長「ええ、そうよ。こちら側は縛ったりする必要は……なさそうね」

「おい、土下座より犬の服従のポーズ取った方がいいんじゃね!?」

「それだ!」

「落ち着け! 死にたくなかったら本当に落ち着け!」

「そういうお前が一番落ち着けよ! なんで腕立て伏せ始める三秒前みたな格好してんだよ!」

友「……そうみたいですね。あそこにうちの教師がいるんで行ってください。今回のことを大まかにですが把握しています」

元会長「わかったわ。……ねぇ、一つ聞きたいんだけど、あんたは彼氏君から連絡を受けてここに来たの?」

友「はい、そうです」

元会長「そう……なら、最初から彼の掌で踊らされていたってことになるのかしらね、私は」

友「……」

元会長「彼によろしく。あと、そうね。櫛は記念にもらっておくって伝えておいて。それじゃ……」

生徒会長「…………私は」

□■□■□■□

282: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:29:11.87 ID:Gz0DhWwFo

男「……ん」

生徒会長「男君……?」

男「あれ、会長? なんで顔が上下逆さま?」

友「お前なに寝ぼけてんだよ」

男「友? ……あれ、なにこの幸せな感覚」

女先輩「君は今膝枕をされてるんだよ、男」

男「女先輩? 膝枕? あー……僕、また生徒会の仕事の最中に寝ちゃったんですか……」

友「おい、男……大丈夫か?」

女先輩「……もしかして文化祭前まで記憶が逆行してるのか? 確か、何度も顔を殴られたと聞いたが……」

生徒会長「男君、私のこと、わかる?」

男「分かるも何も会長は会長って、いだっ! いだだだ! なんか体中がいだい……って! そうか、僕ら、文化祭の最中に元会長さんがだだだだ、いたっ、いったぁ~!」

生徒会長「……男君」

男「っ冷たぁ! 今度はなんですか!?」

女先輩「落ち着け、身体を起こそうとするな。腫れた患部を冷やしているだけだよ」

男「は? え? あ、会長、会長大丈夫ですか!?」

生徒会長「……私は大丈夫。男君が守ってくれたから」

283: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:37:02.50 ID:Gz0DhWwFo

男「……」

友「男?」

男「……良かったぁ~」

女先輩「混乱して暴れだすのかと思ったが、今度はへろへろと脱力とは忙しいやつだ」

男「いやもう、会長が無事なら何でも良いですよ」

生徒会長「……良くない」

男「へ?」

生徒会長「男君、こんなになって……私のせいで……」

男「……あー、それはその……」

女先輩「男、身体の各所を一箇所ずつ、ゆっくり動かしてみろ。激しい痛みがあったり、吐き気があったりはしないか?」

男「えっーと…………さっきは起きてすぐ痛みが来たので大げさに騒ぎましたが、すぐに病院へ行く必要のある怪我はなさそうです」

女先輩「そうか。なら、少女父さんの見立てどおりか。本人が起きた時に確認が取れたら、大丈夫だと少女父さんも言っていたし、とりあえずは問題なしだな。けど、後から少しでも違和感を覚えたら病院へ行くようにな?」

友「お前、どういうわけか頭、というか顔ばかり狙われてたみたいだな。怪我が集中してるのは顔、次いで肩から腕にかけてだってさ。少女父さんが医者だからその見立てを信じてこの場に残ってたけど、本来なら救急車呼んでるところだったんだぜ?」

男「……場合によっては自分がいかに不味い状況だったのかは理解した。だけど、少女父さんがお医者さんだったことの驚きが強過ぎる」

284: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:41:00.72 ID:Gz0DhWwFo

友「あの人、少女ちゃんが注射嫌いから転じて医者嫌いになってるせいで、少女ちゃんの前では特に職業隠したがるから。まぁ、その日会ったやつに職業話す義務があるわけでもないし、知らなくても当然かもな」

男「そっか、それで少女ちゃんお父さんの仕事が、人の役に立つ仕事だってことしか知らなかったのか。そして友と繋がりがあるってことを加味して考えると、休みの日にやってる掃除ってのは……」

友「地域清掃という名のボランティアだな。少女ちゃんが住む環境を少しでも良くするために参加してるんだってさ」

男「あの人、本当に娘スキーなパパさんなのね……」

友「そんな少女父さんから男へ伝言。今度是非、会長さんと一緒に遊びに来て、娘の相手をしてやって下さいだってさ」

男「へ? って、あ! やばい、少女父さんに僕、性別を偽ってたんだけど……ばれたよね?」

友「診てもらったんだから当然ばれてる。もうそりゃ、激怒だろうな。娘に近づいた男ってやつはお前かぁあ! って感じで」

男「うわぁ、気が重い……」

285: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:42:33.54 ID:Gz0DhWwFo

友「けど、あの人は娘に野郎が近づくのに過敏だけど、近づいたのが自分の伴侶一筋な奴だと分かれば、全然気にしない人なんだよ。お前の性別知って遊びに来いって言ったってことは、お前は少女父さんに認められたってことだ。これって凄いんだぜ? 例え奥さんがいても、本当に心から愛してることが分からなければ認めない人だからさ」

男「それは……なんというか。ちょっとくすぐったい気分だ」

友「うはは、お前は身を以って証明したわけだからな。胸を張れよ」

男「今度謝罪も兼ねて少女ちゃんのところへ遊びに行こうかな」

友「そうしておけ」

男「うん、そうする」

286: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:43:32.09 ID:Gz0DhWwFo

友「……あと、元会長って人とその取り巻きのことだけど」

男「……うん」

友「流石に警察行きになったよ。学生の喧嘩にしては度が過ぎたからな。後日、お前にも聴取とか面倒があると思う。本当はすぐにでもって感じだったけど、少女父さんにも協力してもらって今日のところはなしにしてもらってる」

男「……そっか。わかった」

友「おう」

男「……友」

友「なんだ?」

男「ありがとう、来てくれて」

友「……おう」

男「やっぱり友は頼りになるね」

友「よせやい、照れる」

287: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:46:04.02 ID:Gz0DhWwFo

生徒会長「……気になってたんだけど、どうして友君は私達のことが分かったの?」

男「それは僕も気になる」

友「って、おい、男も分かってないのかよ。お前が救難信号出しといて」

男「確かに助けは呼んだけど、それをどう解釈したかまでは分からないから」

女先輩「どういうことなんだ?」

男「僕がやったのは友に連絡をすること、そして普通じゃない事態が起こっていることを伝えることだけなんです」

生徒会長「連絡、事態を伝える……? あ、もしかして」

男「多分会長が思っている通りですよ。友は生徒会室にあった僕の壊れた携帯を見て動いてくれたんだよね?」

友「少女ちゃん迷子騒動の後、生徒会室にお前らが行ったのは知ってたからな。デート中のはずのお前からワンコールだけの連絡。だから、気になったんだ」

女先輩「でも、普通は何かの間違いだと思って済ませるところじゃないのかい?」

友「俺も最初はそう思ったんですけどね。けど、文化祭実行委員が登録してるSNSの方で気になる情報があったんで」

生徒会長「SNS? 囁くやつ?」

友「それです。そこに俺達の百合カップルがチャラ男と歩いてる! だとか、会長さんが男以外のやつと腕を組んでるらしい話があったんで、違和感を覚えたんですよ」

女先輩「俺達の百合カップルって……君ら有名人だな」

男「大変不本意なことでしたが、今回はそれが良い方向に繋がったみたいですね……」

友「んで、生徒会室に言ってみれば男の携帯は真っ二つだわ、会長さんの携帯は置いてあるわで、何か起こってると気づいたわけですよ。ここへ来るのが遅れたのは事件発生に気づくのが遅れたのと、いろんな情報が飛び交ってたので足取りを辿るのが難しく、情報をまとめるところから入ったからですね」

生徒会長「そういうことだったんだ……」

288: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:48:18.19 ID:Gz0DhWwFo

友「今回ちょっとした騒ぎになったのは、そのSNS上で訳を話して情報を求めたからですね。緊急時なので後のことは考えずに使わせてもらいましたよ」

男「僕が言うのもなんだけど、よく信じてもらえたね」

友「そりゃ、最初は信じてもらえなかったさ。でも、男と会長さんに対して恩があると思っているやつがこの学校に多かったことと、俺もそこそこ顔が広いこともあったからな。最終的には騙されてでもいいから動いておこう、って思ってくれた人達がたくさん出てきてくれたんだよ」

男「……そっか。なら、今日はいろんな人に助けられたことになるんだなぁ」

女先輩「友に話を聞いて情報収集を手伝ったが、こうして話を聞いてみると本当によく気づいたな、友は。男もよくこれで友に通じると思ったな」

男「いやもう全く、友様様ですよ」

友「おう、もっと崇めよ称えよ!」

男「ははー」

生徒会長「友君、本当にありがとう……友君が来てくれなかったら、男君がどうなってたことか……」

友「いえいえ、男に今度何か奢ってもらいますからお気になさらず」

男「……普段なら文句を言うノリのところだけど、今回ばかりは焼肉に連れて行っても足りない気がするよ」

友「うはは、まぁそこら辺はぼちぼちな!」

289: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:49:37.58 ID:Gz0DhWwFo

生徒会長「……」

女先輩「……さてと、男が目を覚まして無事を確認したし、私と友は退散するよ」

男「え? あ、はい。ってそういえば、今学校はどういう状況なんですかね?」

女先輩「文化祭最終日で時間が終わり間近だったことで、中止にはならなかったよ。教師陣はその判断にかなり頭を悩ませたみたいだ。……もう時間的には後夜祭が始まってて、一般のお客さんにはお帰りいただいてる感じかな」

男「そうですか……」

女先輩「うん。男、会長ちゃん。何かあったら連絡してくれ。すぐにまた来るから」

友「同じく。男、今日はもう無理なんかするなよ。会長さん、男のことよろしくお願いします」

生徒会長「二人とも、今日は本当にありがとう」

男「友、今度本当に何かお礼させてね。女先輩もありがとうございました」

女先輩「男」

男「はい?」

女先輩「……よく、私の大事な友人を守ってくれた。感謝する」

男「……彼氏ですから!」

女先輩「くははっ、そうかい。じゃ、またね」

男「……」

生徒会長「……」

男「二人、行っちゃいましたね」

生徒会長「うん」

男「何かお話ですか?」

生徒会長「どうして、分かったの……?」

男「彼氏ですから」

生徒会長「……そう」

男「聞きます」

生徒会長「うん、あのね」

男「……」

生徒会長「――――私達、別れよう?」

□■□■□■□

290: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:50:39.35 ID:Gz0DhWwFo

女先輩「友、今日の君は本当によくやったよ。私は嘘偽りのない気持ちでそう思う」

友「おぉ、なんですか急に? もしかして好感度が上がった系ですか!? それなら――」

女先輩「だから、自分を責めるのはやめて欲しい」

友「……」

女先輩「君は最善を尽くした。誰もが君の手際を褒める。今日のことは間違いなくそういうものだった」

友「唐突に、何を言ってんすか……? 俺は別に自分を責めてなんか……」

女先輩「なら、その自分の爪を食い込ませた手はなんだ?」

友「……ばれてましたか」

女先輩「……」

友「こういことって本当にやっちゃうものなんですね。自分でびっくりですよ」

女先輩「手を出して」

友「何故ですか……って、ハンカチ汚れちゃいますから良いですって」

女先輩「いいから」

友「ってああ、躊躇なく裂いちゃうし……。高そうなハンカチなのに、すみません。今度弁償します」

女先輩「そこまで傷は深くないみたいだね。これならこれを巻きつけておくだけでいいか」

291: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:52:30.26 ID:Gz0DhWwFo

友「……」

女先輩「……」

友「男の顔、見ましたか? あんなに痣だらけで、いろんなところが腫れあがってて」

女先輩「ああ」

友「……男のやつ、両腕を縛られた状態で殴られ続けてたんですよ」

女先輩「っ! ……そう、だったのか」

友「人が集まってきたところで縛っていたものを外したので、それを知ってるのは当事者達と俺、あとは少女父さんだけですからね」

女先輩「……惨いな」

友「……はい。だからこそ、俺は元会長って人が心の底から憎らしい」

女先輩「……」

友「他人事のように冷静な態度で彼女と対話したり、さっきみたく事後報告しましたけど、あれはそうでもしないと気がどうかしてしまいそうだからなんです。元会長と取り巻きの奴らには男のやつと同じ目、いや、それ以上の目に合わせてやりたい。そんなドロドロとした感情があるんです……っ!」

292: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:54:58.92 ID:Gz0DhWwFo

女先輩「それは……」

友「分かってます。そんなの男も会長さんも望んでないことを。結局の所、俺には元会長をどうこうしようと考える権利がない。――そして、だからこそ自分が腹立たしい」

女先輩「友……」

友「もっと早く気づいていれば、もっと上手く情報を集めていれば。……煮えたぎる感情に振り回されるように、そう考えてしまうんです」

女先輩「……」

友「男のやつは俺が来ることに全てを賭けてたという風に言っていたけど、そんなことはない。あいつは最終的には自分一人で全てを切り抜けようとしていたはずです。俺のことは来てくれれば運が良い程度にしか思っていなかった」

女先輩「そんな風に言うものじゃないよ」

友「……別に、男のことを責めるつもりはないんです。ただただ、もっと早く助けてやりたかった――それだけの話です。すみません、変なこと言っちゃって」

293: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:56:26.48 ID:Gz0DhWwFo

女先輩「……」

友「……」

女先輩「……ん、これでよし。しっかりと巻けたと思うんだけど、どうかな?」

友「ありがとうございます。……って」

女先輩「……」

友「……あの、もう手当ては終わりましたよね? どうして手を持ったままなんですか?」

女先輩「友」

友「はい?」

女先輩「私も、悔しいんだ」

友「……女先輩」

294: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:58:17.21 ID:Gz0DhWwFo

女先輩「君はさっき、もっと上手く情報を集めていれば、と言ったがそれは私にも言えることだ。それに大切な友人達が危ない目にあっているのに、私はその場に向かうこともできなかった」

友「それは、少女父さんが少女ちゃんを信頼できる人に預けないと動けなかったからで……」

女先輩「でも、私が戦力として足手まといになることを加味した上での判断だった。それは事実だろう?」

友「……」

女先輩「私と君はきっと今日のことを達成感ではなく後悔と共に思い出す。……ならば、忘れないようにしよう。後悔があったことを。――次へ活かすために」

友「次へ活かす……」

女先輩「いいじゃないか、後悔。今日は最低だったが最悪ではなかった。なら、次はそれよりも良い結果を目指せばいい。後ろにあるものを振り返り見ることのないように、頭に焼き付けて前へ進んでいこう。そうすれば、きっと次は良い結果が得られる。友、君はそれができる人だと私は信じてるよ」

友「……」

女先輩「……」

友「……全部を呑み込むはできませんが、少し救われた気がします。ありがとうございます」

女先輩「そうか……良かった」

295: ◆U5RjLhlixE 2013/06/25(火) 23:59:25.00 ID:Gz0DhWwFo

友「っ!」

女先輩「友、どうしたんだ? 呆けた顔して」

友「い、いえ、何でもないです」

女先輩「そうか?」

友(女先輩が普段浮かべる笑みとは違った、優しげな笑みに見蕩れたんです。……なんて言えるか!)

女先輩「友?」

友「ほ、本当になんでもないんです! それより、手を、繋いだ、ままなんですが……」

女先輩「ああ、そうだったね……」

友(と言いつつも手を離さないどころか、繋いだ手を凝視とは一体……!)

女先輩「友、後夜祭では校庭でキャンプファイヤーをやってるよね?」

友「は、はい。そうでね」

女先輩「私、あれをやったことないんだ」

友「そ、そっすか」

女先輩「あれはうちの学校では異性とやるのが前提だろう? 今まで相手がいなくてできなくてね」

友「さ、さようで」

女先輩「異性の友達がいなかったんだが、ここには現在手を繋いでいる君がいる。つまりだ」

友「つ、つまり?」

女先輩「やってみたいから、一緒に行ってくれないか?」

友「やっぱりそういう流れでしたか!」

女先輩「……嫌かな?」

友「滅相もない! さぁ行きましょう、すぐ行きましょう、とっと行きましょう!」

女先輩「くははっ、ありがとう」

友(例え、女先輩が気落ちする俺を励ますために誘ってくれただけだとしても、今は深く考えずに喜んでおこう)

女先輩「……なんて、考えてそうだね」

友「え?」

女先輩「なんでもないよ。さ、行こうか」

□■□■□■□

296: ◆U5RjLhlixE 2013/06/26(水) 00:01:05.23 ID:dhF3zCRXo

男(校庭から音楽が聞こえる。楽しさを含んだ喧騒が聞こえてくるけど、屋上にいるとどうも空々しいものに聞こえてしまうのは何故だろう)

生徒会長「……」

男(校舎内の電気はほとんど消されて、校庭ではキャンプファイヤーがぼんやりと辺りを照らしている。けど、当然ここまで十分な光が届くわけもない。……薄暗い中に僕達だけが放り出されたかのような、奇妙な感覚だ)

生徒会長「ごめんなさい」

男「何故、謝るんですか? それに、別れようってどういうことですか?」

生徒会長「私のせいで、男君は酷い目にあった」

男「別に今回のことは……」

生徒会長「私のせい」

男「……」

生徒会長「私が恋人失格だったから、だから男君は酷い目にあった」

男「恋人失格って、元会長さんのあれは完全な逆恨みじゃないですか」

生徒会長「違うの」

男「違う?」

生徒会長「……お昼ご飯を食べた後に行った迷路のこと、覚えてる?」

男「え? ……あぁ、そういえば」

男(その後にいろいろあり過ぎてすっかり忘れてた。そういえば、あれの件で気まずくなってたりしてたっけ)

生徒会長「男君は気になってたと思う。どうして、私が最後まで行けずに途中で抜けてしまったのか」

男「それは……そうですね、気にはしてました」

297: ◆U5RjLhlixE 2013/06/26(水) 00:02:46.00 ID:dhF3zCRXo

生徒会長「……あれね、私、二問目で止まっちゃたの」

男「二問目?」

男(思ってたより大分早い段階だったのか……。なんて問題だっけ……確か、魔女服の人が出した問題で――)

生徒会長「男君と引き換えに自分の大切なものを差し出せってやつ」

男「そんな問題でしたね。会長の大切なもの…………あぁ、なるほど、そういうことでしたか」

生徒会長「うん。……私、お母さんの櫛と男君をどっちか選ぶことできなかった」

男(会長だったらそう考えるか。あれは最終的に差し出す必要はないのに、真面目な人だから真剣に考えちゃったんだな……)

生徒会長「……ううん、結論から言えば時間切れになって失格になっちゃったんだから、私は男君じゃなくてお母さんの櫛を取ったことに代わりはないよね」

男「そんなこと……あれはたかが文化祭の催し物じゃないですか」

生徒会長「それだけじゃ、ないの……」

男「どういうことですか?」

生徒会長「私、一度元会長ちゃんに聞かれたよね? 櫛を差し出せば男君を見逃してあげるって。私は男君の彼女なのに、すぐに差し出すべきだったのに……躊躇してしまった」

男「……素直に渡したところで元会長さんが、本当に見逃したか何て分からないじゃないですか」

生徒会長「でも私が躊躇したことで男君が気を回して、そのせいで男君はあんな目にあった」

男「だから、恋人失格だって言うんですか?」

生徒会長「うん……私の身勝手が男君をこんな風にした。私と一緒にいれば、あなたはもっと傷つく事になるかもしれない。だから、私達……」

298: ◆U5RjLhlixE 2013/06/26(水) 00:04:27.92 ID:dhF3zCRXo

男「はい、ストップ」

生徒会長「え?」

男「それ以上先は言わないで下さい。言ったら多分……僕、泣きます。しこたま暴力を振るわれても泣かなかったのに泣きます」

生徒会長「でも……」

男「……会長、僕達はきっとこれからたくさんのことを経験します。時には言い合うこともあるでしょうし、そっぽを向き合うこともあるでしょう」

生徒会長「……うん」

男「でもそれって、自分達にとって必要だから行うんだと思います。僕はこう思うんです。喧嘩は極力しない方がいいに決まっているけど、前へ進むのに不可欠ならするべきだって。……会長はこれについてどう思います?」

生徒会長「……男君の言うとおりだと思う」

男「そうですか。では、何かある度に別れることを考えていたら、喧嘩なんてできると思いますか?」

生徒会長「それは……」

男「僕達が思っている以上に恋人って関係は、いろいろなことがあるものみたいです。楽しいこともあれば、今日みたいに苦しいこともあるんじゃないでしょうか。僕は今日のことでそう思いました」

生徒会長「……そうだね、私もそう思った」

男「はい。何かあることが当然で、普通なんです。だから、問題が起こったから……別れるという話をするのはやめましょう。問題が起こって感情に変化が起こったら、考えればいいんだと思います」

299: ◆U5RjLhlixE 2013/06/26(水) 00:05:43.53 ID:dhF3zCRXo

生徒会長「男君は、私がお母さんの櫛とあなたとで迷ったことを何とも思わないの?」

男「何も思わないわけではないです」

生徒会長「なら……」

男「けど、会長の気持ちを考えれば、それも仕方がないと思いました」

生徒会長「え?」

男「大切なお母さんが亡くなってから、長いこと形見の櫛とそれにまつわる思い出を心の支えにしてたんですよね?」

生徒会長「……うん」

男「それを捨てろって言われて、はいわかりましたと簡単に頷けるものじゃないこと、理解しているつもりです」

生徒会長「……男君はそれでいいの?」

男「今日たくさんのことがありましたけど、それでも会長を好きだって気持ちは揺らぎませんでした。今日の僕の行動の全ては会長のことが好きだってこと、ただそれだけに支えられてました」

生徒会長「……」

男「……」

300: ◆U5RjLhlixE 2013/06/26(水) 00:07:39.22 ID:dhF3zCRXo

生徒会長「……どうして、男君はそこまでしてくれるの?」

男「さっきも言いましたが、会長のことが好きだからです」

生徒会長「私なんかの何処をそんなに……」

男「全部です」

生徒会長「え?」

男「会長の全部を僕は好きになりました。容姿はもちろん、性格も」

生徒会長「……」

男「納得いきませんか? なら、具体的に言いますけど――普段は感情をあまり表に出さないのに、お腹が鳴ったら顔を真っ赤にするところ。欠伸をしたのを隠してるつもりけどばればれなところ。大きな功績を褒められたら謙遜するのに、些細なことに関してはドヤ顔するところ。パソコンをおっかなびっくり触るところ。僕の髪をいじってるだけなのに楽しそうにするところ。可愛いものを見ると顔を綻ばせるところ。女先輩と――」

生徒会長「……わかった、止まって」

男「ん? あれ、照れてるんですか?」

生徒会長「……男君って、意識してキザなこと言おうとすると噛むのに、どうしてこういう時は噛まないの?」

男「え、僕キザなこと言いました?」

生徒会長「知らない」

男「激レアな拗ねてる先輩可愛い。そういうところも好きです」

生徒会長「もう……」

301: ◆U5RjLhlixE 2013/06/26(水) 00:09:35.00 ID:dhF3zCRXo

男「あははっ、もう引かれるくらい僕が会長のこと好きだってこと、分かってもらえましたか?」

生徒会長「……本当にいいの?」

男「僕からすれば、お母さんの櫛を大事にしてるってことも、会長を好きになる所の一つでしかないんです」

生徒会長「……」

男「……」

生徒会長「……男君」

男「はい」

生徒会長「ありがとう……別れようだなんて言って、ごめんなさい」

男「ん、いいんです。まぁ、今回は事が事でしたからね」

生徒会長「……男君、何度も殴られてた」

男「たはは、もっとスマートに動ければ格好良かったんですけどね」

生徒会長「見てて、凄く怖かった」

男「僕が言うのも何ですけど、相手は完全な素人ですからね。動きもぐちゃぐちゃでしたし、受けた回数を考えたらダメージは意外に少ないと思いますよ?」

生徒会長「男君まで、いなくなっちゃうのかと思った」

男(あれ、会長……震えて?)

生徒会長「……矛盾してるよね。男君がいなくなることは絶対に嫌なのに、でもお母さんの櫛と比べて迷って、ぐずぐずしている間に男君は傷ついて」

男「……話を蒸し返すようですみませんが、別れるのはいいんですか?」

生徒会長「それでも、本当の意味で、いなくなっちゃうよりは……まし」

男(……お母さんのことを思い出したり、ぐるぐると考えが巡ってるんだろうか)

生徒会長「……私、変だね」

男(みんなに完璧だって言われて、何でもできるって思われてる会長だけど…………矛盾した考えを抱えて、普通に悩んでいる。分かっていたことだけど、やっぱりこの人は何処にでもいる女の子と代わりないんだ)

302: ◆U5RjLhlixE 2013/06/26(水) 00:10:43.04 ID:dhF3zCRXo

男「――会長、お願いがあるんですが」

生徒会長「……なに?」

男「櫛を、貸していただけませんか?」

生徒会長「え?」

男「よければ、でいいんです」

生徒会長「……はい」

男「あ……。……ありがとうございます。ちょっと、失礼しますね」

生徒会長「起き上がって平気なの?」

男「痛みはありますが、動けないほどではないので」

生徒会長「そう……。なんで後ろに回りこむの?」

男「こうするためです」

生徒会長「あ……」

男「……元会長に渡した櫛。お気づきだと思いますけど、あれはこうして会長の髪を梳いてあげられるように、PTAのバザーにあったのを買ったやつだったんですよ」

生徒会長「ん……、言えばこうして貸した」

男「会長はこの櫛を他の人に触らせたくもないって聞いていたので……」

生徒会長「男君は特別。当然のこと」

男「……ありがとうございます」

男(櫛を買った時は、迷路の件でもやもやしてたからなぁ。……今となっちゃ遠い記憶のよう、かな?)

303: ◆U5RjLhlixE 2013/06/26(水) 00:12:21.97 ID:dhF3zCRXo

生徒会長「……」

男「……」

生徒会長「……」

男「……」

生徒会長「……元会長ちゃんと私は友達だった」

男「! そう、だったんですか……いや、同じ学年で一緒に生徒会の仕事をしていた時期があるんですもんね。そう考えれば普通か」

生徒会長「うん。……男君は今日元会長ちゃんが来たのは、私のせいで学校をやめることになったこと、その報復だと思ってるよね?」

男「……違うんですか?」

生徒会長「確証はないけれど、私は違うと思ってる」

男「何故です?」

生徒会長「具体的な言葉にはできない。でも、今日少しだけだったけど話していて、そう思った」

男「……」

生徒会長「……元会長ちゃんね、お母さんの櫛を見たことあるの」

男「えっ!」

生徒会長「でも、男君が違う櫛を出しても、何も言わなかった。違う物を出したことに対して、いろいろ言うこともできたのに」

男(元会長さんが急にゲームとか言い出したのは、偽物だと知っていたからだったのか……?)

304: ◆U5RjLhlixE 2013/06/26(水) 00:14:29.78 ID:dhF3zCRXo

生徒会長「だから、今日来たのは私を責めたりするつもりだったけど、本当に酷いことをするつもりは元会長ちゃんにはなかったんじゃないかって。仮にお母さんの櫛を渡しても最終的には返してくれたんじゃないかって思った」

男「それは……いくらなんでも好意的に見すぎだと思います」

生徒会長「分かってる。けど……」

男「けど?」

生徒会長「……いつか、もう一度元会長ちゃんとお話したいと思う」

男「……もう係わり合いにならない方が良いと思うんですが」

生徒会長「男君を酷い目に合わせたのは許せない。けど、ごめん。思い違いで更に傷つくことになっても、それでも私は……」

男「友達だと思ってる、ですか?」

生徒会長「……うん」

男「……甘い人ですね」

生徒会長「うん」

男「激甘で、懲りない人です」

生徒会長「うん」

男「でも、そういう優し過ぎるところも好きです」

生徒会長「え?」

男「もしも会うようなことになれば、お供します」

生徒会長「嫌じゃ、ないの?」

男「嫌ですよ。だけど、会長がそうと決めたなら協力します。僕は副会長で彼氏ですからね」

生徒会長「……」

男「あの人は激烈な方です。だから、一人で会うってのはなしです」

生徒会長「でも、これ以上迷惑をかけるのは……」

男「いいじゃないですか、迷惑をかけたって。僕達は恋人同士なんです。お互いに迷惑をかけあって、助け合っていきましょう。その代わりと言ってはなんですが、僕が迷惑をかけることもあると思うので、その時はよろしくお願いします」

305: ◆U5RjLhlixE 2013/06/26(水) 00:16:28.20 ID:dhF3zCRXo

生徒会長「……」

男「強がりとかじゃないです。心からそう思ってます」

生徒会長「……わかった。迷惑、かけます」

男「はい」

生徒会長「……」

男「……」

生徒会長「……」

男(黙々と会長の髪を梳くこの状況。どうしてだろう、沈黙が心地よく感じられるのは。校庭の方から聞こえる喧騒が、何処か遠い世界のものであるかのような気がしてくる)

生徒会長「夕暮れの生徒会室」

男「え?」

生徒会長「前に女ちゃんが話してくれたの。夕暮れの生徒会室は綺麗だけど一人でいれば寂しいって」

男「……」

生徒会長「誰かと一緒にいるから、綺麗だと思えるものがあるんだって教えてくれた」

男「……はい」

生徒会長「ここは、本当は少し寂しい場所なんだと思う。みんなが校庭に集まっているのに、ここにいればまるで仲間はずれになっているみたいで。……でも、男君と一緒にいると、全部が違って思える。遠くに聞こえるみんなの声も、薄暗さが辺りを包んでいても、それはあなたの存在を感じるためだと思えて…………私は、今この瞬間がとても愛おしい」

男「……」

生徒会長「……」

男「……」

生徒会長「変なこと、言った?」

男「え? い、いえ、そんなことないです」

生徒会長「でも黙った……」

男「違うんです! その、会長ほど綺麗な言葉ではありませんけど、僕も同じようなことを考えてて……」

生徒会長「……そう。なら、良かった」

男「はい……」

306: ◆U5RjLhlixE 2013/06/26(水) 00:17:05.89 ID:dhF3zCRXo

生徒会長「……」

男「……」

生徒会長「ありがとう」

男「何がです?」

生徒会長「髪を梳いてくれてること。急に言い出したのは、お母さんにこうされて私が落ち着いたって話したからだよね?」

男「……ばれてましたか。会長のお母さんと同じようにできるとは思いませんけど、少しでも何かできればと思いまして」

生徒会長「凄く、嬉しい。本当に……本当に……」

男「……はい」

307: ◆U5RjLhlixE 2013/06/26(水) 00:18:35.47 ID:dhF3zCRXo

生徒会長「……」

男「……」

生徒会長「……」

男「……会長」

生徒会長「なに?」

男「ちょっとこっち向いてくれますか?」

生徒会長「ん? ――――っ!」

男「……」

生徒会長「……」

男「……もう顔、前に戻して大丈夫です」

生徒会長「……うん」

男「……」

生徒会長「……不意打ち」

男「すみません、我慢できませんでした」

生徒会長「……ファーストキス、奪われた」

男「奪ってしまいました」

生徒会長「表情に困る」

男「耳まで真っ赤ですね。非常に覗き見たいところですが、僕も今どんな顔をすればいいのか分からないので、大丈夫です。僕、なんか変な汗が出てきましたが大丈夫です。真顔になってますが、大丈夫です。何が大丈夫なのか自分で分かりませんが、大丈夫です」

生徒会長「……男君は、少し反省するべき」

男「すみません」

生徒会長「誠意を見せるべき」

男「……どうすればいいでしょうか?」

生徒会長「……男君」

男「はい」

生徒会長「私、もう一度振り向きたい」

男「……はい!」

□■□■□■□

308: ◆U5RjLhlixE 2013/06/26(水) 00:19:42.68 ID:dhF3zCRXo

「友っちの嘘つきぃいいいいいい! 仕事はちょっと多いくらいだって言ったじゃん!? なのにこの仕事量じゃないかああぁ!」

友「うはは、ニュー書記よ安心しろ! 意外に慣れるものだから! お前が慣れるまでしっかり付き合ってやるから、気張っていこうぜ!」

「あ、あのあの、女先輩! 女先輩の役職ってなんなんですか?」

女先輩「私? 私は手伝っているだけだから、会計ちゃんが仕事を覚えるまでいるだけだよ」

「そ、そんな~……女先輩と禁断の愛を育むために生徒会に入ったのに~」

女先輩「……私は別に同姓と恋愛をするつもりはないんだけどね」

「や、やっぱりそうなんですか!? 後夜祭で友君と踊ってましたし、女先輩ってもしかして……」

女先輩「おっと、その先は言わせないよ」

309: ◆U5RjLhlixE 2013/06/26(水) 00:21:34.88 ID:dhF3zCRXo

男「……文化祭が終わったら、なんだか急に騒がしくなりましたね」

生徒会長「男君と友君が一緒にいる時とそう変わらない」

男「傍から見たらこんな感じなのか……」

生徒会長「……新しい役員さん、入ってくれたね」

男「友の部活の友人である書記君と、女先輩に憧れて? 入ってくれた会計さんの二人ですから、友と女先輩のおかげ感はありますけどね」

生徒会長「それでも、これでようやく普通の生徒会になった」

男「……はい」

生徒会長「今すぐには無理だろうけど、入ってきてくれた二人のおかげで私達は時間を取れるようになる」

男「今まで我慢していたこと、やりましょう」

生徒会長「元会長ちゃんのことに、男君とのデート……他にもたくさんある」

男「ゆっくりでもいいです。全部やりましょう」

生徒会長「男君……」

男「二人で、です。これから様々なことを経験することになるでしょうけど、僕達ならきっと全てを乗り越えられる」

生徒会長「……うん」

男「これからのことを思えば不安もありますが……」

生徒会長「……楽しみでもある」

男「――はい」

生徒会長「ふふっ、すっかり男君の影響を受けた」

男「俺色に染めてやるぜ! ってやつです」

生徒会長「嬉しい」

男「……そう言われて僕も嬉しいです」

友「おい男! 手が空いてるなら仕事教えるの手伝え……って、なに会長さんと手を繋いでいちゃいちゃしてんだよ! ブーブー!」

書記「ブーブー!」

会計「ブーブー!」

女先輩「君達、息ぴったりだな……」

男「あははっ」

生徒会長「ふふっ」

310: ◆U5RjLhlixE 2013/06/26(水) 00:23:30.25 ID:dhF3zCRXo

男(僕達は分かち合う)

男(それは時に不幸なことを呼び込むこともあるかも知れない)

男(人と強い結びつきを作るというのは難しいことで、相手のことで傷つくこともたくさんある。怒りや哀しみは無差別に牙を剥くことがあるからだ)

生徒会長「男君」

男(でも、僕は知ってしまった。彼女と共にいる喜びと楽しさを)

生徒会長「私……」

男(もう彼女なしの世界は考えられない。まるで呪いのような強い感情が僕を支配する)

生徒会長「あなたのことが――――」

男(そんな風に考えてしまう自分は、心底彼女に惚れ込んでしまっている証拠だろう)

生徒会長「――――大好き」

男(僕にだけ見せてくれるこの笑顔)

男(これだけで何でもできるような気がしてしまう自分は何処か安っぽくて――――)

311: ◆U5RjLhlixE 2013/06/26(水) 00:24:02.39 ID:dhF3zCRXo

友「男、早く来いよ!」

女先輩「会長ちゃん、この案なんだけど……」

「おい会計、これ手伝えよ」

「なんであたしが書記の仕事を手伝わなきゃいけないのよ!」

生徒会長「行こう、男君」

男「はい、行きましょう!」

312: ◆U5RjLhlixE 2013/06/26(水) 00:24:42.49 ID:dhF3zCRXo

男(――――でも、嫌いじゃない)

313: ◆U5RjLhlixE 2013/06/26(水) 00:25:58.21 ID:dhF3zCRXo

アフターストーリー・文化祭

おしまい

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