【オリジナル】創作短編小説「イストポリスの近衛騎士」

2 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)12:43:25 ID:YK48Lyif9(主) ×

世界的に有名なメガロポリスの中心に神聖不可侵の巨大な森がある。

その森にはその国の最高司祭が住んでいて、国民の安寧と安らぎを祈願している。

司祭は同時に世界最古の王家の末裔であり、世界で唯一の皇帝でもある。

伝説の3つの宝物は『神器』と呼ばれ、それぞれが霊的な古い聖所で固く守られ表にでることはない。

司祭の住む巨大都市そのものもその成立時において、何重にも念入りにある呪術者が守りを固めた人工魔法防御都市である。

空前の規模で、もはやこれほどの術を施された街は術の発祥の国にさえないのだ。

帝国歴2668年5月8日 庶民の第二号掲示板より

3 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)12:44:46 ID:YK48Lyif9(主) ×

この世界とは違う、魔法のある世界。

魔法技術が生活の隅々にまで行きわたり、だれもがその恩恵を受けている世界。

世界最大の大陸であるエジアロパ大陸の東端にある魔法技術立国サンルート帝国。

ここに記すは帝都イストポリスのある青年新米騎士の物語。

4 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)12:46:03 ID:YK48Lyif9(主) ×

帝国歴2675年3月

もうすぐ大学四年生となるブライト=ファウンテンヘッドは大学の寄宿舎の自室で机に伏し、落ち込んでいた。

机の上には薄い封筒が何十枚か積み重なっている。

「文学部なんか入るんじゃなかった…」

心の叫びを呟く、と同時に入口の扉がノックされた。

5 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)12:46:56 ID:YK48Lyif9(主) ×

「入るぞ」

同室の友人、法学部生のクラン=ヴァーチュリバーが部屋に入り、ブライトの横に腰かけた。

「これ全部不採用通知か?」

「ああ全部お祈りの文だ、持ち駒全部死んだよ、また最初からだ」

「えーっとこれは、スリーウェル商会 トリランバス商会 リビングフレンド商会… 大手ばっかだな そりゃ落ちるわ」

クランが封筒を手に取り検分する、いわく大手病と言い学生がよく陥る罠らしい。

「クランはどっか決まったのか?」

「いや、僕は高等法学校に行って弁護士を目指すことにした、実家にも了承を貰ったよ」

「弁護士か…やっぱ貴族様はちがうな」

6 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)12:47:53 ID:YK48Lyif9(主) ×

「何度も言うが旧貴族な、貴族制度なんて実質70年前の大戦以来ことごとく崩壊したよ」

「それでもそれなりの広さの荘園領主ではあるんだろ?実家」

「荘園なんて自由貿易体制の敷かれた今の時代はあんまり意味がないよ、でも領民も養わなきゃいけない、そこが辛い所だな」

「そうか…偉いなクランは、民間商会に雇ってもらえない俺なんかもう役人目指すしかないかな…」

「法律学と経済学を学ぶ必要があるな、役人は安定してるので昔から競争率が高い。今から法学部や経済学部の連中に勝てるのか?」

クランが冷静に分析し助言をする 法律も経済も苦手なブライトには耳が痛かった。

7 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)12:48:51 ID:YK48Lyif9(主) ×

「あー聞きたくない聞きたくない もう語学専門の役人とかあればいいのに」

ブライトは語学を専攻し、異国の言語・古代の文章を理解する才能がある。

しかし、外国の優秀な人材をいくらでも雇える昨今、民間商会にはそれだけでは雇われにくい。

大手に入るにはそれに加えてなにかしらの能力が必要なのだ。

「僕の精霊札で調べてみようか?」

「お願いします」

ブライトはクランに向かい両手を合わせ目をつぶった。

8 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)12:49:47 ID:YK48Lyif9(主) ×

クランは手に納まる大きさの透明な札を取り出した。

これは魔法技術の粋を集めた”精霊札”と呼ばれる物で誰でも一つは持っている。

いつでもどこでも遠方の人間と会話できたり、本や公報を見たり、道案内をしてくれたり、文を届けてくれたりと色々してくれる優れ物だ。

「霊紋認証を行います 指先で触れてください」と札に憑いた人工精霊がしゃべる。

クランは指先で札に触れる。

札の上に”認証”の文字が浮かび、クランが札に現れた人工精霊に尋ねる。

「人工精霊、公開情報網に接続して”語学 採用 役人 専門”で検索してくれ」

10 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)12:50:30 ID:YK48Lyif9(主) ×

3秒後

「17100件ありました」

クランは指先で精霊札をなぞり札の上に現れた文字などの表示を移動させる。

「うーん、見た所いくつかあるが…試験に法律と経済がほとんど無いものは3つだな」

「あるのか?なんだ?」

「…体が丈夫な事が条件だがな」

「体力は人並みだが健康には自信がある」

「それならいけるかもな。国防騎士、警察騎士、それから近衛騎士だ、どれも責任は重大だぞ」

「近衛騎士か…」

ブライトの頭の中には子供の頃に絵本で読んだ、お姫様を護る白馬に乗った騎士の姿が浮かんだ。

このときブライトが他の選択をしていたら、その後に続く物語は無かったかもしれない。

11 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)12:51:19 ID:YK48Lyif9(主) ×

それから1年と11ヶ月後 帝国歴2677年初冬

2月11日、第2677回目の建国記念日、祭りの日の朝だった。

ブライト=ファウンテンヘッドは帝国の首都イストポリス中心にあるパレス第二裏門を護る近衛騎士見習いになっていた。

近衛騎士の勤務は4交代制、この日は一日の半分12刻の間、パレスに不審者が入ってこないか槍を持ち、鎧を纏い、直立不動で監視する。

鎧の下に防寒着を着こんでいるとはいえ、この寒空の下、緊張を解かず目を光らせるのはなかなか忍耐力が必要だった。

今日はお祭りだからか街の遠くから庶民の賑やかな雑踏や笛の音が聞こえ初めてきた。夜には花火も上がるはずだ。

正門には帝国議長、首相、最高裁長官といった偉い方々が祝賀の為に馬車で参られているのだろうが、ここ第二裏門は平穏なものだった。

近くにある教会から9の刻を知らせる鐘が鳴った、それはブライトの夜勤が終わったことを意味する。

12 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)12:52:30 ID:YK48Lyif9(主) ×

詰所から交代要員の先輩騎士が出てきた。

「ファウンテンヘッド君、今日は上がっていいぞ、お疲れ様」

「はい、お疲れ様です!」

敬礼をして少し離れた所にある詰所に向かう。

身がすっかり凍えてたブライトは詰所で温かいお茶でも飲もうかと考えていた。

詰所に入り、ケトルに水を入れ、火を使わない魔法熱源でお湯を沸かす。

あまり目立たない所にある門なので今この小さな詰所にいる近衛騎士は自分一人だった。

13 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)12:53:21 ID:YK48Lyif9(主) ×

リンリーン

呼び鈴が鳴った

「すいませーん、誰かいませんかー?」

女性の声がした

「はーい、少々お待ち下さい」

ブライトは答え、詰所の扉を開けた

「すいません、詰所の騎士さんですか?」

外に出て目を見やると18歳くらいの質素なクリーム色のコート着た可愛らしい女の子が一人いた。

いそいで姿勢を整え、背筋を伸ばす。騎士は庶民が相手でも常に礼儀正しくしなくてはならない。

「はい、私はまだ見習いですが。何か御用件ですか?」

女の子はバスケットを持っていた。

14 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)12:53:58 ID:YK48Lyif9(主) ×

「新人さんなんですね。これ、皆様にと思って、クッキーを焼いてきたんです」

バスケットを差し出す女の子。

ブライトは困惑した。

――皇帝陛下への献上品か

皇帝への献上品は、必ず当局を通さねばならない。

ましてや食料品ならなおさらだ、毒や呪いの心配がある為だ。

だが庶民の献上品を突っぱねる訳にもいかない。

それは皇帝の名誉と威信にもかかわるからだ。

15 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)12:54:59 ID:YK48Lyif9(主) ×

「ええと、皇帝陛下への献上品はですね…」

ブライトが言葉を選んでいると、その女の子は

「あ、違います!毎日パレスを護ってくださる騎士の皆様にです」

と言った。

――え、俺らに?

ブライトは嬉しかった、雨の日も風の日も雪の日も立ち仕事を続けてきた事に感謝された事は初めてだった。

「これはご丁寧に、私どもを気にかけて頂いてありがとうございます、仲間達で有難く頂戴いたします」

ブライトはうやうやしくバスケットを受け取った。

16 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)12:55:40 ID:YK48Lyif9(主) ×

「はい、体が温まる様に火の精霊を封じたカイロも入れておきましたんでどうかお役に立ててください」

「有難うございます、貴女のような心優しい帝国民がおられる事に、きっと皇帝陛下も喜んで頂けるかと存じます」

――ちょっと仰々しすぎたかな?

ブライトは目の前にいる女の子が少し驚いたような気がした。

「え?ああ、はい、皇帝陛下に喜んで頂けるなら感激です」

すぐに女の子はこれ以上ない笑顔を見せ、言葉を続けた。

17 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)12:56:09 ID:YK48Lyif9(主) ×

「私はメアリと言います。すいませんがお名前は何と仰るんですか?」

――よくある名前だな

「ブライト=ファウンテンヘッドといいます、今年1月に騎士養成校を出てこちらに配属されました」

「では初めての冬なんですね、辛くないですか?」

「寒いですが辛くは無いです。皇帝陛下を、ひいては帝国を護るやりがいのある仕事です」

メアリはまた微笑んだ、寒さのせいか少し顔が赤らんでいる。

18 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)12:56:40 ID:YK48Lyif9(主) ×

「お体を壊さぬようにしてください。ではお祭りに行かなければいけないのでこれで」

メアリは手を振って心なしか駆け足で詰所から去って行った。

ブライトは手を振った後、慌てて詰所の中に入ってケトルを魔法熱源から降ろした。

――良い娘だったな

ブライトはお湯を沸かしていたことを気にしていた為、注意力を欠いていた。

もし、そのときメアリをもう少し長く見送っていたら、後になってあのように驚かなくても済んだかもしれない。

19 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)12:57:18 ID:YK48Lyif9(主) ×

翌月3月25日給料日の夕方、ブライトは給料21万1887リングスが支給された事を示す書類を近衛騎士隊事務所窓口で受け取った。

源泉徴収で税金と社会保険料等が引かれて18万5000リングスほどが自分の銀行口座に振り込まれていた。

ちなみにそこらへんの定食屋で一食すると700リングスくらいだ。

給与明細を鞄に入れようとしたらもう一枚封筒を渡された。開けると、小さな紙が一枚入っていた。

それには、近衛騎士隊隊長であるノヴァ=テクスティルス少将の署名がされていた。

『 辞令 ブライト=ファウンテンヘッド君を近衛正騎士とす 2677年4月1日付でパレス正門警備を任ず

ついては2677年3月30日10の刻に正騎士授与の儀式を執り行う    近衛騎士団師団長 ノヴァ=テクスティルス中将』

20 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)12:58:37 ID:YK48Lyif9(主) ×

すいませんミスありました最後中将→少将です

21 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)12:59:23 ID:YK48Lyif9(主) ×

中世の昔は皇族が一人一人騎士の地位を下賜したのだが、人口一億を超える帝国には国防・警察・近衛合わせて何十万もの騎士がいる。

この帝国歴2677年の世の中では騎士人事は皇帝に人事権を下賜された責任者が代理して執り行う事になっていた。

それでもブライトは嬉しかった、自分が正騎士として認められたのは感激だった。

――給料も貰ったし祝いがてらクランに飯でも奢ってやろう

そう思い事務所を出て門をくぐったところ

「コシェレク!クラスニーコシェレク!グジャ!?」

おそらく大陸北方のルシャ連邦出身と思われる大柄な中年女性が目つきの鋭い女性騎士相手に叫んでいた。

22 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:00:11 ID:YK48Lyif9(主) ×

「えーとえーと、サンルータ オア ブリタニカ、プリーズ」

気の強そうな女性騎士はルシャ語がわからず困っている様子だった。

――海外の旅行者を助けるのも騎士の務めだな

「財布ですよ、赤い財布を探してるんです」

ブライトは助け船を出した。

23 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:00:47 ID:YK48Lyif9(主) ×

その後、すぐ近くにある番所に尋ねると探し物はあっさり見つかった。

「スパシーバ!」

中年女性は笑顔で番所から去って行った。女性騎士と並んで直立不動で見送る。

「なんて言ったんだ」

「ありがとうって言いました」

女性騎士は顔を正面に向けたまま横目でこちらを見た。

「語学が得意なのだな、感心する」

「一応語学の専門家として入隊試験に受かりましたからね。ただ武術とかはてんで駄目でして」

女性騎士がこちらに体を向ける。階級章を見るに中尉らしい。

24 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:01:22 ID:YK48Lyif9(主) ×

「私は武術で入ったんだ、馬術や魔術はなんとかなるが語学はどうも苦手だ。礼を言うぞ」

笑みを浮かべ細い目を更に細める。人を寄せ付けなさそうな容貌をしているが内面はそうでもないようだ。

「いえいえ、騎士としての務めを果たしたまでです。私は4月からパレス正門に配属されるんですよ、また何かあったら言ってください」

「そうか、借りが一つできたな。私はクレア=タイラー、オータムパレス家の守護をしている、ではまたな」

タイラー中尉は頭に手をかざし敬礼した。

「私はブライト=ファウンテンヘッドです、お疲れ様です」

敬礼を返しタイラー中尉が番所から去っていくのを見送った。

――オータムパレス家って、あの?

25 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:02:03 ID:YK48Lyif9(主) ×

その日の晩

「…で、その人はオータムパレス家の守護騎士だったというわけだ」

街の居酒屋でブライトは帝国伝統のライス酒を飲みながらクランに言う。

普段は礼儀正しいブライトだがこんなにくだけた物言いができるのは家族以外にはクランだけだった。

「クレア=タイラーさんか、お前好みの細目美人と知り合えて良かったじゃないか」

クランが表情を変えずにブライトをからかう。

26 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:03:08 ID:YK48Lyif9(主) ×

「あー確かに美人だった。でも俺より階級がはるかに上だし…中尉でオータムパレス家の守護騎士なんて多分相当有能だぞ」

「僕は皇族については詳しくないけど、皇帝陛下の皇孫として、唯一の御世継ぎがいるんだろ?確か」

「ああ、皇帝陛下の第二皇子フミ殿下とその妃殿下、御子に三人の皇女様方と末っ子の皇子様がおられるらしい」

「長女のマナさまと次女のカヤさまは有名だな、よく公報に載ってる。しかし下の御二方の名前は知らないな」

「皇族は成年するまで名前も出ないからな、どっかの学校に行っても偽名だし、顔や肉声なんて魔法で記録することすら禁止されている」

「伝統とテロ対策を兼ねてるんだろうな。それよりメアリとかいう女の子の事はもういいのか?」

クランが意地悪っぽく言う。

27 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:04:05 ID:YK48Lyif9(主) ×

「あー、メアリなんてどこにでもある名前だしなー。正門勤務じゃ堂々とクッキーなんか受け取れないしなー。探せないだろなー」

「受け取ったとしたら役人の服務規定におもいっきり引っかかるな、下手したら刑法197条収賄罪で5年以下の懲役だ」

――弁護士志望者らしく攻めてくるなこやつめ

「職権上の要求も約束もしてないから大丈夫だろ。でもあんなに可愛らしい娘さんの厚意を受け取らない奴は漢じゃない」

法律が苦手なブライトだが大学卒業後に入った9か月間の騎士養成校時代に一通りの知識は身につけた。

騎士養成校では一般教養の他に古典詩文、弓術、茶会などの作法、魔術、武術等を学んだ。

28 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:04:37 ID:YK48Lyif9(主) ×

もちろん騎士の心得や言葉づかい、役人の守るべき法律も叩き込まれた。

「目移りしがちな男は嫌われるぞ、同時に二人に会ったらどうするんだ?」

この時は、笑いながら聞いていた。

ブライトは、まさか一週間後にまさにそのような場面が訪れるとは全く思っていなかった。

29 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:05:06 ID:YK48Lyif9(主) ×

帝国歴2677年4月1日朝 10の刻

サンルート帝国の国花、チェリーブロッサムの木の花が満開であった。

ブライトはパレス正門脇に立ち、近衛正騎士として初日の警備任務に就いていた。

門を挟んだ向こう側には先輩の近衛騎士が居る。このパレス正門は常に多数で警備にあたる決まりだった。

正門は昨日までいた第二裏門とは違い、たびたび高級そうな黒塗りの馬車が出入りしていた。

パレスは堀でぐるりと取り囲まれており、正門前には広場がある。

広場にはチェリーブロッサムの花びらが舞い落ちていた。

30 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:05:39 ID:YK48Lyif9(主) ×

「皇帝陛下がお出ましになられる!総員整列!」

正門広場に弩号が飛ぶ。ブライトは慌てて正門から伸びる道路の脇に仲間の騎士達と共に整列して敬礼の姿勢をとる。

正門が開き、帝国の紋章であるクリセンツェメンの花紋をあしらったひときわ豪華な黒塗りの馬車がパレスから出てきた。

馬に乗った十何人もの騎士が馬車の周囲を警護している。

正門が閉められ皇帝陛下が乗られてたであろう馬車が見えなくなる。

「総員持ち場に戻れ!」

との命令が下った。

ブライトは敬礼を解き持ち場に戻る。

31 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:07:05 ID:YK48Lyif9(主) ×

するとパレス正門脇の小門前に思いがけない人物が二人いた。

メアリとクレア=タイラー中尉だった。

「え、ブライトさん!?」

メアリは驚き、タイラー中尉の後ろに隠れてしまった。

タイラー中尉は大きめのバスケットを持っていた。

「あれ、メアリさん!?お久しぶりです。それにタイラー中尉も。おはようございます」

「ああ、確かファウンテンヘッド君か、おはよう。パレス内に入りたいのだ、入場認証を頼む」

タイラー中尉は名前の書かれた通行証を提示する。

32 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:07:41 ID:YK48Lyif9(主) ×

ブライトは自分の持ってる支給品の精霊札を差し出す。

タイラー中尉が指先でブライトの精霊札に軽く触れる。精霊札に”認証”の文字が出る。

「認証いたしました、ええと、そちらのメアリさんとはお知合いなんですか?」

「ああ、実はな――」

「メアリ=マーロウといいます。オータムパレス家のメイドなんです」

メアリがタイラー中尉の言葉を遮り、通行証をちらりと見せる。一瞬であったが確かに”メアリ”と書いていた。

そしてタイラー中尉の肩の向こうから腕を伸ばし指先でブライトの持つ精霊札に軽く触れる。精霊札に”認証”の文字が出る。

33 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:08:17 ID:YK48Lyif9(主) ×

「そうなんですか?この前は優しいお心遣いを有難うございました」

『――パレスを護ってくださる皆様に――』

ブライトは、まるでメアリのパレス側の者であるかのような言動に違和感を感じてたが、その違和感が解消された。

「少し買い物がありまして、裏門から出て花見がてらパレスを半周してきたんです」

メアリが微笑み話す。タイラー中尉はブライトに背を向けメアリに向かい、耳打ちする。

メアリもタイラー中尉に耳打ちし、なにか小声で話てたたがブライトには聞こえなかった。

34 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:08:55 ID:YK48Lyif9(主) ×

タイラー中尉がこちらに向き直った。

「うむ、私も少し必要なものがあったのでな、フミ殿下に許可を頂いてメアリ殿と御一緒したのだ」

タイラー中尉はどことなく顔が引きつっているがブライトは気付かなかった。

「ブライトさんは今はこの正門にいるんですか?」

「はい、本日4月1日付でこの正門に正式配属されました」

ブライトはそう言うと”2名入場 認証”と表示された精霊札を小門にかざし、人工精霊の制御する自動鍵を開け、門を開いた。

精霊認証が無ければパレスの門は開かない。

精霊に認証されたという事はその者が間違いなくパレスに入る資格を持つという事だ。

35 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:09:36 ID:YK48Lyif9(主) ×

「そうですか、警備がんばってください、それではごきげんよう」

メアリが笑顔で会釈する

「…ごきげんよう」

タイラー中尉もそれに続く

「ごきげんよう」

ブライトが敬礼し挨拶を返すとメアリとタイラー中尉は小門からパレス内に入って行った。

――タイラー中尉がジト目でこちらを睨んでいたように見えたがきっと気のせいだろう。

36 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:10:24 ID:YK48Lyif9(主) ×

同日夕方 18の刻

勤務が終わり、ブライトは本部近くの詰所で私服に着替え帰ろうとしていた。

ここは本部近くだけあって前いた詰所とは違い賑やかであった。

男子更衣室を出、事務所の直属上司の机に行き、挨拶する。

「本日はこの新人に御指導有難うございました、これからも御鞭撻のほど宜しくお願い致します。それではお先に失礼します」

ブライトが敬礼をして帰ろうとすると上司に呼びとめられた。

「今日は新人の歓迎会だ、もう少し待ちたまえ」

ブライトはそう言われ、待つことにした。

37 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:10:54 ID:YK48Lyif9(主) ×

しばらく待っていると詰所に

「新人のブライト=ファウンテンヘッド君はいるか!」

という聞き覚えのある女性騎士の声が聞こえた。

「こちらにおりますが」

詰所に入ってきた私服に着替えたタイラー中尉にブライトが答える。

「ああ、そこか。ファウンテンヘッド君、少しつきあえ」

タイラー中尉がブライトの近くに来る。周囲からどよめきが湧く。

「え?もう勤務時間は終わっておりますが、それに私これから歓迎会に出るんですが…」

38 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:11:28 ID:YK48Lyif9(主) ×

「任務ではない、私事だ。重要な話なので歓迎会は断れ」

――まさかフラグ立ってる?

「なんだ、そういうことか。若者の恋路を邪魔する訳にはいかんな。ファウンテンヘッド君は欠席にしとくよ」

上司がにこやかに言う。

――悪乗りしないでください

「では連れて行きます、お疲れ様です」

タイラー中尉は手を引っ張り、ブライトを連れて詰所を出て行った。

39 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:13:15 ID:YK48Lyif9(主) ×

クランとよく来る居酒屋で、タイラー中尉は顔を赤くしていた。

ただし慕情の念ではない、純粋に酒の力だった。

「何度も聞いたと思うが、騎士がメイドに手を出したら懲戒免職だからな」

タイラー中尉は小さな酒杯を持ち、何度もうなずく。

「で、釘を刺しに来たというわけですか」

――ちょっと期待したぶん残念

「いいや、あまつさえメアリ殿を万が一傷つけようもんなら貴様の首を取って自害してやるからな、あ、シシアモ魚追加」

勧告を行うタイラー中尉の目前でブライトはライス酒をやりながらマクレル魚の煮付けをつつく。

40 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:14:01 ID:YK48Lyif9(主) ×

「あんな優しいお嬢さんを傷つける訳ないでしょう、騎士の心得の基本です。あとセサミトーフもお願いします」

「本当か?言葉使いがわざとらしい奴はどうも信用ならん。それに今日は確か万愚節だ」

4月1日は万愚節といい、嘘を吐いてもいい日となっている。

「こんな信用にかかわる嘘を言う訳ないですよ、この煮付け美味しいですから食べて落ち着いてください」

「ああすまん、モグモグ 美味しいな。ファウンテンヘッド君」

「ブライトでいいです、貴女の方が階級が上なんですから。それにいまは私事でしょう?」

「へいおまち!」

シシアモ魚とセサミトーフを乗せた小皿が目の前に置かれる。

41 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:14:46 ID:YK48Lyif9(主) ×

「それなら私もクレアでいいぞ、勤務時間以外なら」

「了解しました、クレアさん。これから同僚として仲良く致しましょう」

「わかった、歓迎会を潰してしまって悪かったな。今日は私がブライト君を歓迎しよう」

クレアが酒杯を掲げる。ブライトもにっこり笑ってそれに答える。

「乾杯」

「ええ、乾杯」

杯を交わす。

「ではとことんまで飲むとするか、言っておくが私は強いぞ」

このときクレアの顔の赤さは酒の力だけのものでは無かったかも知れない。

42 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:15:12 ID:YK48Lyif9(主) ×

2677年4月6日 17の刻半ば

パレス正門前、チェリーブロッサムの花はすっかり散り、木々は緑の若葉を飾っていた。

教会の半鐘がなり、ブライトの本日の勤務が終わったことを知らせる。

先輩の騎士が来て交代の合図を伝える。

「お疲れ様です。失礼いたします」

ブライトが敬礼する。

「お疲れ様、それから今日も彼女さんが来てるぞ」

交替の先輩騎士がブライトに伝える。

43 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:15:46 ID:YK48Lyif9(主) ×

「彼女じゃないですよ、ちょっと知り合っただけです」

詰所に広まった誤解は解けてないようだった。

――あれから毎日来てるんだからしょうがないけど

詰所に行くと、クレアが居た。

「来たな、早く着替えろ。急げ」

「了解しました」

ブライトは男子更衣室に行き、急いで鎧を脱ぎ私服に着替える。

更衣室から出てクレアと一緒に詰所から出る。

44 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:16:40 ID:YK48Lyif9(主) ×

――これじゃ勘違いされるよな

近衛騎士団本部はパレス前広場北側にあるベルフラワー門のすぐ内側にある。

ブライトとクレアはベルフラワー門を出て広場を堀沿いに歩き、近くにあるピースフィールドハウス噴水公園まで歩く。

日の沈もうかという夕方、噴水の音が鳴り響いていた。

二人は並んでベンチに座った。

「ほれ、メアリ殿のしたためた手紙だ」

ブライトはここ5日間、メアリと手紙を交換していた。

「ありがたく頂戴いたします」

「なんでこのような事をせねばならんのだ、第一私は舎人じゃなくて騎士だ」

ブライトは苦笑いしながらメアリからの手紙を受け取った。

45 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:17:18 ID:YK48Lyif9(主) ×

「まぁまぁ、メアリさんもパレス勤めのメイドとして色々思うところもあるんでしょう。下心はありませんよ」

封筒を開け、便箋を広げ、文章を読む。

「ふん、どうだか。なんて書いてあるんだ」

「えーと…料理の腕前が上達してマナさまとカヤさまに褒めてもらったと書いてます」

「他には何かあるのか」

「あとは…明後日の生誕祭の為…明日昼の13の刻から買い物に付き合ってほしいと」

「なんだと!それは許さん。断じて許さんぞ」

「メイドさんだし必要なんじゃないですか?甘茶買うくらい付き合いますよ。明日非番ですし」

明後日4月8日は帝国民に信仰されている教えを広めた、救世主シダルタ=ムニの誕生日であり、かの像に甘茶をかける神聖な儀式がある。

46 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:17:59 ID:YK48Lyif9(主) ×

「そういう問題ではない!私も付き合うぞ!…後輩がパレスの者に手を出さんか見張ってやる!」

「明日非番なので?」

「…有給をとる!」

――生誕祭前夜の日に有給休暇とは度胸ありますね

「じゃあシルバーギルド街にお茶を扱ういい店を知ってるんです。そこに行きましょう」

クレアがジト目でブライトを見る。

47 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:18:20 ID:YK48Lyif9(主) ×

「…私はお前にもう借りを返してるんだぞ。それを忘れるな」

何か意味深な事を言うとクレアは立ち上がった。

「では明日13の刻に、この場所で」

ブライトも立ち上がり、敬礼した。

クレアは軽く敬礼し、何も言わずに、その場を去って行った。

48 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:18:56 ID:YK48Lyif9(主) ×

2677年4月7日 13の刻 ピースフィールドハウス噴水公園

「ブライトさん、こんにちは!」

「こんにちは、御二方さま。今日は晴れて良かったですね」

「…御苦労」

三人とも目立たない私服を着ていた

「もう御両様とも御昼食は召し上がりましたか?」

ブライトが尋ねる。

「もぅ、堅苦しいですよ。もっと気を抜いてください」

メアリが照れながら言う。

49 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:20:00 ID:YK48Lyif9(主) ×

「そうですか、では騎士ではなく一介の男子としてお話しします」

ブライトが肩の力を抜く。

「はい!今日はどこに行くんですか?私パレスからあまり出たことないから一度地下列車って乗ってみたかったんです」

「いえ、シルバーギルド街ですからね。歩いてすぐですよ」

「歩くのか?馬車を使え馬車を!」

クレアが口をはさむ。

「シルバーギルド街ですか!昔カヤさまとお忍びで言ったことがあるんですよ」

「はい、では行きましょうか、お嬢様方」

「ブライト、聞け!」

クレアが叫ぶと、メアリがクレアをきっと見つめた。

50 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:20:59 ID:YK48Lyif9(主) ×

「クレアさん。殿方のもてなしを受けるというのは、淑女の務めですよ?」

メアリが口調を変えてクレアに言う。

「も…申し訳ありません」

――どうやらメアリさんの方が立場が上らしいな

「メアリさんはクレアさんより長くオータムパレス家におられるんですか?」

「はい、私はずっと小さいころからオータムパレス家にいました。クレアさんはまだ2年目でしたっけ?」

「はい、騎士としては5年目ですが」

――ってことは26くらいか。尉官ってことは高級官僚試験通過組だな。

メアリが澄ました顔から元気な顔に戻る。

「じゃあ行きましょうか!お話いろいろ訊かせて下さい!」

51 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:22:22 ID:YK48Lyif9(主) ×

春の陽射しの中、三人はパレス前広場を南下していた。

「…というわけで、受けた面接全部落ちてしまいましてね」

「世間はいろいろ大変なんですね」

「で、親友に勧められたのが騎士だったんです。私は昔から空想科学小説が好きで」

「科学って、昔話や童話によく出てくる不思議な現象を操る術のことですよね?」

「科学なんかが好きとは意外と子供っぽいのだな」

クレアはメアリを挟んでブライトの反対側を歩いていた。

「まぁ科学自体は迷信ですけどね、この魔法万能の世の中では」

52 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:23:04 ID:YK48Lyif9(主) ×

「そんなこと無いですよ!不思議な術を使う科学者さんがいたとすればワクワクします!」

「そういう小説に出てくる白馬の騎士に憧れた、というのが動機です」

「へー、だから難しい言葉を沢山知ってるんですね」

「まぁ語学だけですがね、得意なのは」

そんなことを言いながらパレス前の広場を三人は歩いていた、昼下がり、広場には多くの観光客がいた。

「あっ、あれカンファツリー侯爵像ですよね!すごい、あんなに大きかったんだ」

メアリが指さした先には681年前に皇帝に忠義を尽くし命を絶った、馬にまたがったカンファツリー侯爵の銅像があった。

53 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:24:42 ID:YK48Lyif9(主) ×

まわりには芝生があり、大勢が休んでいた。

「記念に真影撮りましょうよ、真影!ほら、最新式の霊子真影器持ってきたんです!」

真影とは光の精霊を操り見たままの姿を写し記録する魔法技術である。

「ちょっとメアリ殿、いいかげんにしてください!」

クレアが止める。

――止めた方がいいのかな?

「すいません、このボタン押してくださいね?」

メアリはにこやかにそう言うとクレアに真影器を渡し、侯爵像を背面に立つ。

54 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:25:22 ID:YK48Lyif9(主) ×

「ほらほら、ブライトさんも来て下さい!」

ブライトも侯爵像に背面を向け、メアリと並ぶ。

クレアはしぶしぶ真影器を構えた。

「では撮りますよー、ひーふーみー」

ピピッ

盗撮防止用の霊子音が鳴る。

「撮りました」

クレアが言う。

「ありがとう、クレアさん。では今度は貴女とブライトさんでどうぞ。私が撮ります」

「え!?いえいえ、そんな訳には」

クレアが驚く。

55 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:25:53 ID:YK48Lyif9(主) ×

「私が撮りますよ、御二方はそこに並んでください」

ブライトは気を使ったつもりでそう言ったが

「それは許さん、もう一枚撮るぞ」

クレアに一蹴された。

「撮りますよー、もっと笑ってください。ひーふーみー」

ピピッ

――クレアさん、なんかノってるな

クレアは今度は若干下から見上げ、プライトと侯爵像が全体に納まるよう撮影した。

56 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:26:32 ID:YK48Lyif9(主) ×

パレスから歩いて少し

シルバーギルド街は人や馬車が行きかい、賑わっていた。

三人は近世の裁判所跡に建てられた、大きな百貨店の中にいた。

「ここです」

ブライトがなじみの店を紹介する。百貨店の一角を間借りしている茶葉屋であった。

「えーっと、ヴァーチュリバー家直営店。ですか」

「はい、先ほどお話した親友はヴァーチュリバー家の者なんです」

「知ってるぞ、お茶処で有名なサイレントヒル県の旧貴族だな」

「それでよろしければこちらを御贔屓にしていただければと…」

――あいつも苦労してるしな、メアリさんを通じて皇室御用達にでもなれば万々歳だ

57 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:27:08 ID:YK48Lyif9(主) ×

「わかりました!案内してください」

メアリは答える。店の中に嬉しそうに駆け込んだ。

「クレアさんもどうぞ」

「…それは友人を思ってのことか」

「それもありますが、ここのお茶は本当に美味しいんですよ、パレスの中で働いている皆様にも美味しいお茶を頂いて欲しいんです」

「…それなら良いが」

「クレアさんも早く来て下さいよー!いろんな物がありますよー!」

本日、生誕祭前日、茶葉屋では甘茶の販促を行っていた。

58 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:27:45 ID:YK48Lyif9(主) ×

メアリは、陶器でできた茶器、ティーポットやカップなどの陳列品に興味を注いでいた。

「あら、お坊ちゃまのお友達のファウンテンヘッドさん。賑やかな事で」

店の女性がブライトに声をかける。

「お久しぶりです、女将さん。こちらは私の仕事仲間でして」

――メアリさんも同じパレスで働く仲間だし嘘は言ってないよな

「あらあら、前夜祭の日にですか?じゃあそういうことにしておきましょうか」

「本当ですよ。本日は明日の生誕祭に使う甘茶を探しに来たんです」

「わかりました。いいのをお渡しします。そちらの彼女様も今後とも御贔屓に」

「彼女ではない!同僚だ」

59 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:28:22 ID:YK48Lyif9(主) ×

「まぁまぁ、落ち着いてください。女将さん、新茶の季節にはまた寄らせて頂きます」

「茶葉の季節は五月だったな。ということはその甘茶は昨年にとれたものか?」

クレアが質問する。

「え?」

ブライトは固まる。

――あなた官僚ですよね?

「いえ、甘茶はヒドランジアの変種を乾燥させたものです。いわゆる紅茶や緑茶とは違う植物を乾燥させたものです」

女将は慣れた風に説明する。

60 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:28:41 ID:YK48Lyif9(主) ×

クレアは顔を赤くした。

「クレアさん恥ずかしー」

メアリが気にいったティーカップの小箱を持って戻ってきていた。

「これ気に入りました。こちらのティーカップも頂けますか?」

「わかりました、どうぞこちらの茶店で休んでいってください。甘菓子をサービス致します」

女将は隣にある喫茶店に三人を招き入れた。

61 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:29:10 ID:YK48Lyif9(主) ×

「本当においしいですねー!」

三人は喫茶店で茶を飲んでいた。喫茶店には多くの人が居た。

「新茶の季節はもっと美味しいですよ。ぜひお得意様になってください」

「わかりました、よろしければまたエスコートしていただけますか?」

「非番の日であれば何時でも構いませんよ」

ブライトが答える。

クレアは無愛想に甘菓子をつついていた。

62 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:29:40 ID:YK48Lyif9(主) ×

「でも良かったんですか?公務中にティーカップなんか買っちゃって」

「あ、いえ!これは私のお小遣いで買いました!」

「お小遣い?御給金じゃなくて?」

ブライトが訊く。

メアリは少し間を置き

「あ、はい。お恥ずかしながら私、まだお父様からお小遣いをもらっているんです」

と答えた。

――パレスのメイドさんってことはさぞかし由緒正しい家の子なんだろうな

63 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:30:14 ID:YK48Lyif9(主) ×

「あんまり詮索はするな」

クレアが釘を刺す。

「すいません、出過ぎた真似を。あと口にお菓子のかけらがついてますよ」

そう言われたクレアは慌てて手鏡を出した。確かに菓子のかけらがついていた。慌てて置いてあった紙で口元を拭う。

「だめですよー、ブライトさん。デリカシーに欠けます」

メアリは人差し指を立てる。

「重ね重ねすいません。無粋なもので」

「騎士は女性の気持ちを考える義務があるんです」

――女性の気持ちがわかったらそれほど楽な事もないだろうな

64 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:30:34 ID:YK48Lyif9(主) ×

ブライトがそんな事を考えていると

「でも私はすごく楽しかったです!今日は我が侭に付き合っていただいて本当に有難うございました!」

「そう思っていただけたら幸いです」

「この近辺にはいろいろなお店があるんですね!また劇場にでも誘ってください」

――そしたら懲戒免職です

クレアがナイフのような目でブライトを睨んでいた。

65 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:31:15 ID:YK48Lyif9(主) ×

シルバーギルド街からパレスまでの道のりは短いものだ。

前夜祭の日、シルバーギルド街からパレスへと伸びるサニーオーシャン通りは人波でごったがえしていた。

買い物を終え、パレスに向かう三人は街ゆく人とすれ違っていく。カップルが若干多い。

「ゼルコヴァの木々が綺麗ですね、クレアさん、これも真影に撮ってくれませんか?」

メアリはブライトとクレアの間を歩いていた。

ピピッ ピピッ

クレアは真影器を構え、木々を撮る。

ブライトは甘茶とティーカップの入ったバスケットを持っていた。

66 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:31:56 ID:YK48Lyif9(主) ×

――もうすぐ15の刻かな

ブライトがそう思った時、二人の男とすれ違い異国の言葉が聞こえてきた。

「インチィ、バァォダンマ?」

「ミンティアン、シィバァディェンインファ」

――え?

ブライトはそこに立ち止まった。後ろを振り向くと、異国の者達の後姿が離れていくのが見えた。

「すいません、メアリさん。今日はここまでで構いませんか?一人で帰れますよね?」

「えっ、パレスまでは送っていただけないのですか?」

メアリが悲しそうな顔をする。

67 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:32:30 ID:YK48Lyif9(主) ×

「おい、どういうつもりだ」

「すいませんがタイラー中尉、暫くの間でいいんで恋人の振りをして私と腕を組んで歩いてくれませんか?」

「えっ」

メアリが更に悲しみを見せる。しかしクレアは冷静に返す。

「…急を要するのか?」

「はい」

「…わかった。ファウンテンヘッド君」

ブライトがメアリにバスケットを渡す。

「ではこれで、また埋め合せいたしますので」

クレアとブライトは今来た道を引き返した。メアリを残して。

二人がいなくなってからメアリの周りを3人の女性が取り囲んだ。

68 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:33:00 ID:YK48Lyif9(主) ×

サニーオーシャン通りを引き返すブライトは精霊札に触れ、操作していた。

「公開情報網から目的の音を落としました。ではタイラー中尉、説明したようにお願いします」

「ああ、しかしうまくできるかな?なにぶん男性と腕を組んで歩いたことなど無いのでな」

「杞憂であればそれに越したことはありませんがね」

クレアは左腕をブライトの右腕にまわす

すこし早足で歩き、異国の男二人組を追い越す。

ブライトは、自身の精霊札を地面に落とし、そのまま歩く。

69 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:33:37 ID:YK48Lyif9(主) ×

「1、2、3、4、5」

ブライトが数字をカウントする。

ピピッピピッピピッピピッピピッピピッ

異国の者たちの足元で精霊札が鳴る。

男二人は一瞬立ち止まったがすぐに無視して歩きだした。

クレアはブライトと道路脇に寄り、立ち止まる。

男二人が追い越したのを確認すると、ブライトは落とした精霊札を取りに行く。

70 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:34:00 ID:YK48Lyif9(主) ×

ブライトは精霊札を拾い、クレアの近くに戻る。

「うまく撮れましたか?」

ブライトが訊くと

「ああ、バッチリ写っている」

クレアの持った真影器の裏面には、異国の男二人の顔が写っていた。

「では番所に転送して後をつけましょう、見失わない内に」

ブライトとクレアは再び腕を組んで歩きだした。

71 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:34:52 ID:YK48Lyif9(主) ×

異国の男はもう一人の男と別れ、地下道を歩いていた。

周囲に人影は後ろをついていくブライトとクレアのみであった。

――今しかないな

ブライトはクレアから離れ、早足で進み始めた。

脇からブライトが一人になった異国の男を追い越し、少し距離を置いた所で振り返り、騎士証を見せる。

「チン、ウォースゥチィシィ、ドゥイブゥチィ、クゥイィチンマ?」

クルッ ダッ

ブライトがそう言うや否や、男は来た道を引き返し一目散に走り出した。

72 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:35:22 ID:YK48Lyif9(主) ×

「確定です!そいつを捕まえてください!」

逃げた先にはクレアがいる。男は細い地下道の真ん中を歩くクレアに向かい走って行った。

「ビキョ!」

男が叫ぶ。クレアはわずかに身を避ける。しかし次の瞬間。

ブン!

クレアは逃げる男の手を掴んで勢いを利用し、ぶん投げた。

ガシッ ギリッ

クレアは仰向けに横たわった男の腕を持ち背中に回し、動けないよう腕を決める。

73 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:35:56 ID:YK48Lyif9(主) ×

「テゥ!テゥ!」

「ファウンテンヘッド君、今は何刻の何分だ?」

「えーっと、15の刻、18分です」

ブライトは精霊札に表示された時刻を告げる。

「公務執行妨害で現行犯逮捕だな」

クレアは服の中から手錠を取り出し、男の両手にかけた。

「なんでそんなもの持ってるんですか、非番なのに」

「ひょっとしたら使うかと思ってな、備えあれば憂いなしってやつだ。ふふ」

――誰に使うつもりだったんだか、おお、怖い怖い

74 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:36:25 ID:YK48Lyif9(主) ×

ブライトが男の服をまさぐる。万年筆くらいの大きさの杖が出てきた。

「えーっと、やっぱりありました。魔法杖。早まらないで良かったです」

魔法杖とは魔法の火などを出す飛び道具であり、サンルート帝国内で一般人や観光客が所持することは固く禁じられている。

――メアリさんを巻き込まなくて良かった

「わかった、人工精霊、通信を飛ばせ!”もう一人も捕獲せよ。なお相手は魔法杖を持っている。注意しつつ多数で囲め”と伝えてくれ」

クレアが精霊札を通じて指示を飛ばす。

「アイゴー」

男がうめいた。

75 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:37:07 ID:YK48Lyif9(主) ×

「こいつはなんと言ってるんだ」

「私コリョ語はよく分からないのですが…多分悲しんでるんじゃないかと」

コリョとはサンルート帝国の隣の国で、北ヴィヴィド王国と南カーラ民国に分かれている。

「ではこいつはコリョ族か?」

「さっき話していた言葉はミッドランド連邦の言葉でしたからね、北ヴィヴィドの者でしょう」

ミッドランド連邦とは北ヴィヴィド王国の向こうにある大国であり、サンルート帝国とは南方領土をめぐりしばしば領土争いをしていた。

76 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:37:54 ID:YK48Lyif9(主) ×

「なんと言っていたのだ?」

「それで爆弾は?明日の18の刻に、と言ってました」

「…”爆弾”とはなんだ?」

「科学のお話に出てくる架空の兵器です。火焔と衝撃波を放つ、破壊魔法みたいなものと考えてください」

「花火みたいなものか?」

「だいたい合ってます。あれは火と雷の精を封じたものですけど。異国の言葉でテロ活動の予定を暗号で話し合ってたという所でしょう」

地下道の両方向から警察騎士が走ってきた

「あとはあの方たちにお願いしましょうか。クレアさん」

ブライトがにこやかに言った。

77 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:38:34 ID:YK48Lyif9(主) ×

5日後 2677年4月12日 20の刻

いつもの居酒屋で、ブライトとクレアはライス酒を飲んでいた。

クレアが勢いづけて酒杯を机に置く。

「あーれーかーらーメアリ殿の誤解を解くのにどれだけ苦労したと思ってるんだ!よくもあんな作戦考えてくれたな!」

「まぁまぁ、今回のテロを未然に防いだってことで大尉に昇進されるんでしょ?今日は祝いましょう」

「ふん!あれは貴様の考えた作戦だろう。私の功績では無い」

クレアが横を向く、瞳だけはジト目でブライトを見ていた。

78 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:39:29 ID:YK48Lyif9(主) ×

「手錠掛けた人が一番の功労者ですよ、職務上」

「しかしとっさによくあんな作戦考え付いたな」

キャメラの撮影音と同じ音を公開情報網から検索し、精霊札のアラーム音にする。

あとはそれを地面に落として容疑者が注意を向けたすきに腕を組んだ影からこっそり真影を撮る。盗撮防止音はアラーム音で隠れる。

もちろん真影器の正面は後ろを向いている、後ろを振り返らずに顔が写っているかどうか確認する為にはクレアの手鏡を使った。

「あの時点では友達同士でのおふざけ話だったかも知れませんでしたからね、テロリストの情報基盤と照合する為には顔真影がないと」

79 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:40:08 ID:YK48Lyif9(主) ×

ミス

キャメラ→真影器

80 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:40:38 ID:YK48Lyif9(主) ×

「…その可能性の為にメアリ殿にあんなことを言ったのか」

「帝国の治安を護るのが騎士の務めですからね。一刻を争う状況でしたし。それにあれくらい言っておかないと後をつけてきたでしょうし」

「メアリ殿、悲しんでおられたぞ」

「私も心苦しかったんですよ、でも、色恋沙汰より公益を優先しました。クレアさんが私の意図を読んでくれたのは有難かったです」

ブライトがいきなりクレアを苗字で呼んだのはそういう訳であった。クレアも即座に理解し返答した。

「…またメアリ殿と会ってくれないか。お前の言葉で直に説明すべきだ」

「許されるのなら喜んで」

81 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:40:58 ID:YK48Lyif9(主) ×

「…メアリ殿もそれをお望みだ、案ずるな。しかし一つ解せない事がある」

「なんですか」

「…真影を撮った後は腕を組む必要は無かったのでは?」

「このマクレル魚の煮付け美味しいですよ」

「誤魔化すな!」

――生誕祭前夜なんだし、ちょっと魔が差したんです

そんな事は言えなかった。

82 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:41:25 ID:YK48Lyif9(主) ×

同刻 パレス内 オータムパレス邸

「それではお姉さま方、お先に休ませて頂きます」

メアリがリビングにいるマナ内親王とカヤ内親王に告げる。

「お休みなさい」

25歳の長女、マナ内親王はメアリに返す。手にはティーカップを持っていた。

「メアリちゃんもう寝るの?」

同じくティーカップを持った22歳の次女、カヤ内親王がメアリに問いかける。

「カヤさん、メアリさんも大学が始まったばかりで疲れているのよ」

マナ内親王がたしなめる。

83 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:41:58 ID:YK48Lyif9(主) ×

「お休みなさい」

メアリが部屋から出ていき、自分の部屋に戻る。

「なんかメアリちゃん、最近変ね」

カヤ内親王が首を傾げる。

「簡単な事よ、あの子は恋をしてるだけ」

マナ内親王が凛とした切れ長の秀麗な目を細め、そう言う。

「えっ!ホント?あの子もいつの間にかそんな年に?」

カヤ内親王が丸っこい二重の可憐な目を輝かせてそう言う。

「マナお姉ちゃん!詳しく聞かせて!」

カヤ内親王はマナ内親王に詰め寄る。

「それはね――」

84 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:43:07 ID:YK48Lyif9(主) ×

マナ内親王がそう言いかけた時、リビングに二人の、父君であるフミ第二皇子と、弟君のヒサ親王が入ってきた。

二人とも寝間着を着て、頭から湯気が出ている。

「いいお湯でしたよ」

51歳の、口ヒゲを生やした優しそうな父君がそう言った。

「マナお姉さま、今日も歴史の講釈をお願いします」

利発そうな10歳の弟君もそれに続く。

「わかったわヒサ君、では今日はムツ聖大帝の近代化革命まで進むわね」

「えーお姉ちゃん、話はー?」

「それはまた今度ね、カヤさんはお風呂まだでしょ?入ってきなさい」

85 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:43:34 ID:YK48Lyif9(主) ×

「はーい、わかりました」

「?何の話だ?」

フミ殿下が娘であるマナ内親王に問いかける。

「いえ、メアリさんがお父さまそっくりという話ですわ」

メアリと同じ年頃に、フミ殿下は後の妃となるキキに恋をした。

「そりゃメアリは私の娘だ、似るのは当然だろう」

皇帝の次男であるフミ殿下は不思議そうな顔をしていた。

86 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:44:02 ID:YK48Lyif9(主) ×

オータムパレス家の三女、メアリ=オータムパレスは自分の部屋で、思い悩んでいた。

「ブライトさん…」

クレアからもらった侯爵像前の真影をメアリ内親王は見つめていた。

メアリ内親王の顔は両方とも見切れて写っていなかった。

皇族は成年するまで顔も肉声も記録してはならない。クレアの伝統への配慮だった。

甘茶を買いに行ったあの日、実はあの場に三人ほどクレアの部下がいた為に、クレアは安心してメアリをその場に残した。

87 :御嶋六八◆vU0FtqSTPA :2014/03/28(金)13:44:30 ID:YK48Lyif9(主) ×

「今日は満月ね…」

月の光は恋する者を魅了する、どこかであの人も同じ光を見ているという希望から来るのだろうか。

4月1日の万愚節についた嘘は、彼女を苦しめていた。

私はいずれ、身分を明かさなければならない――

でも、そしたらあの方は、どう思うのだろう――

――メアリが公に顔と名前を明かすまで、あと687日。帝国歴2677年4月12日 満月の日の夜であった――

終わり

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